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Tome館長

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    Works 3,356
  • 風見鶏

    2017/01/09

    空しい詩

    朝になって陽が昇り 

    夕べになれば陽が沈む。

     

    そういうふうに決まっているなら 

    そりゃ仕方ないよ。

     

    でも、はっきり決まってないこと 

    少なくないはず。

     

    西へ行くか、東へ行くか。

    それとも南か、はたまた北か。

     

    ぐるぐる ぐるぐる 

    巡り巡って逆戻り。

     

    つまり、そういうこと。

     

    どうなるかわからないうちに 

    先のことを決めつけないことさ。

     

    明日は明日の風が吹く。

     

    吹く前に決めつけてどうする 

    てね。

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  • 呪われた故郷

    2017/01/08

    怖い話

    たどり着いたら故郷は廃墟。

    土地は荒れ、建物は崩れ、人影はない。

     

    懐かしの生家は熔けかけていた。

    醜く変容したオブジェさながら。

     

    壁は指で押すだけで苦もなくへこむ。

    窓はすべて塞がれ、玄関は失われていた。

     

    裏口へまわり、歪んだドアから侵入した。

    屋内もひどいありさま。

     

    天井まで続くねじれた廊下。

    カーテンは糸を引き、椅子は腰砕け。

     

    前屈みの鏡台、酔いつぶれた浴槽。

    押入れには象牙らしきものまで生えている。

     

    服と靴が粘土のように重く感じられた。

    めまいがした。吐き気まで。

     

    懐かしすぎる場所にいるからだろう。

    ここから一刻も早く脱出しなければ。

     

    裏口まで戻るがドアは閉ざされていた。

    いくら力んでもノブはまわらない。

     

    ねじれて曲がったのは腕の方だった。

     

    「なにをしたって無駄よ。

     もうここから帰しはしないからね」

     

    忘れようもない声がした。

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  • 野良犬の尾行

    2017/01/07

    ひどい話

    貧しい探偵、しがない家業。

    怪盗なんぞ見たことない。

     

    うだるような夏の暑い日に

    こっそり野良犬をば尾行する。

     

    細長い尻尾が左右に揺れる。

    汚らしい肛門が見え隠れする。

     

    依頼主は上流階級の貴婦人。

    報酬は宝石、輝く猫目石。

     

    なにを企んでおるのやら。

    もう憂げな午後の暇つぶしかも。

     

    野良犬のナワバリを踏んだ。

    ふくらはぎに歯形がついた。

     

    めまいがして倒れそう。

    空腹と疲労と暑さ、虚しさ。

     

    あまり多くは望まない。

    せめて雌犬だったなら、と思う。

     

    陽炎が揺れている。

    路面が熔けている。

     

    犬革の靴がすうっと糸を引いた。

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  • 灰色の庭

    色がない。色彩がない。

    黒くもなければ白くもない。

     

    灰色の空の下に灰色の庭。

    灰色の土、灰色の草、灰色の塀。

     

    灰色の庭に誰かが立っている。

    見覚えのない灰色の笑顔を浮かべてる。

     

    灰色の帽子を持ち上げて挨拶すると 

    灰色の腕が手首から折れる。

     

    折れたところから砂になる。

    さらさらさらさら砂になる。

     

    肩も胸も次々と砂になる。

    砂になっては地面にこぼれる。

     

    やがて灰色の笑顔も砂になる。

    壊れた砂時計みたいに砂になる。

     

    みんなみんな砂になる。

    静か過ぎる午後。灰色の庭。

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  • それで E

    2017/01/05

    空しい詩

    E E 

    こうすりゃ E 

     

    E E 

    ああすりゃ E 

     

    健康に E 

    美容に E 

     

    受験に 就職に E E E 

    But 

     

    そうすりゃ Eに 決まっているが 

    無責任にも 程が R 

     

    あっちに Eは 

    こっちに Bad 

     

    「善は急げ」

    「急いては事を仕損じる」

     

    意味 反対 

    ことわざなんざ そんなもん 

     

    故事成語 

    「塞翁が馬」って 知ってるか 

     

    O O 知ってる Z 

    O O 知ってりゃ E 

     

    E E それで E 

    E E どうでも E

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  • 興味ない

    2017/01/04

    ひどい話

    あっ、ごめん。

    それ、興味ないんだ。

     

    うん。ちっともない。

    これっぽっちも関心ないよ。

     

    いや、無理だって。

    そもそも好奇心の問題じゃないし。

     

    興味ないことに興味あること関連づけたって 

    好奇心とか不純になるばかりだよ。

     

    ひねくれるだけさ。

    偉そうに見せたくて知ったかぶりするみたいにね。

     

    第一、それに興味を持てないのには 

    ちゃんと理由があるんだよ。

     

    わかるかい。

     

    本当に興味あることに比べたら、それが 

    いかにもつまらなそうに見えるからさ。

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  • 憧憬

    2017/01/03

    愛しい詩

    蝶よ 美しく舞え

     鳥よ 高く飛べ 

     

    散るな 花よ

     消えるな 虹よ

     

       儚き夢 届かぬ夢

        見果てぬ夢よ 憧れよ

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  • 月のウインク

    2017/01/02

    愛しい詩

    片目の月が

    ウインクしてる

     

     

    はち切れんばかり 見開いて

    ゆっくり ゆっくり 細めては

     

    しっかり つむって

    ふたたび 開く

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  • カマキレナイ

    2016/12/30

    愉快な話

    オカマのカマキリがカマを研いでいました。

     

    カマキリがカマを研ぐなんて 

    まず滅多にあることではありません。

     

    でも、オカマのカマキリはキレやすいので 

    ついカマを乱暴に扱ってしまうのです。

     

    「オカマのカマキリ、キレジかな」

    そんなふうに子どもにからかわれたくらいで 

     

    「キーッ! 許さないわよ」

    カマをブンブン振りまわしてしまい 

     

    「パキン!」

    カマの先が石に当たって刃こぼれしたのです。

     

    「あら、いやだ」

     

    子どもたちは大喜び。

    「オカマのカマキリ、カマキレナイ」

     

     

    そういうわけなので 

     

    今はキレないけど、あとでいっぱいキルつもりで 

    こうしてオカマのカマキリがカマを研いでいるのです。

     

    「オカマのカマキリ、カマキレナイ。

     ググッとこらえてカマを研ぐ」

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  • 金魚姫

    2016/12/29

    愉快な話

    彼女は美人でもなんでもない。

     

    いや。むしろ、その逆。

    目が大きいので「出目金」と呼ばれたりする。

     

    しかも彼女、よせばいいのに 

    派手なヒラヒラの赤い服を好んで着る。

     

    なので、なおさら金魚らしく見えてしまう。

     

    さらに彼女、茶色のプードルを飼っている。

    呆れたことに、名前が「フン」。 

     

    そう。彼女に引かれて散歩する姿は 

    まさに「金魚のフン」そのものである。

     

    本人は洒落た冗談のつもりらしいが 

    はた目にゃ、まわりくどい自虐にしか見えない。

     

    いわゆる変な女である。

    ただし彼女、声はじつに美しい。

     

    いっぱしのアナウンサーとして

    そこそこ有名なラジオ局に勤めている。

     

    太っているせいもあろうけれども 

    癒される声として、なかなか評判である。

     

    ガラス張りのスタジオの中で 

    今日も一日、しなやかに彼女は泳ぐ。

     

    「はーい。皆さん、こんばんわー。

     お元気ですか? 金魚鉢の中の金魚姫でーす」

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