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2017/01/31
あれには まったく腹が立つ。
あんなのがまかり通るようでは
お話にならない。
「やってられるか」である。
明らかに おかしいでしょ。
まちがってるでしょ。
法律がなんですか。
そんな法律こそ おかしいでしょ。
横暴ですよ。
筋が通りませんよ。
帰ってください。
もう来ないでください。
しつこいな。
ふざけているのは どっちです。
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2017/01/30
あなたに 呼びかけています
今 これを読んでいらっしゃる
あなたに
あなたは ひょっとしたら
空を飛べるかもしれませんよ
だって ほら これは
夢なんですから
じつは今 あなたは眠っていて
夢を見ているのですよ
これを読んでいる夢です
信じられないでしょうけど
気づきにくいんですよ
夢の中にいると
なかなか どうしてもね
ものは試し ちょっとだけ
飛ぼうとしてごらんなさい
とりあえず ジャンプしてみるとか
高いところから 落ちてみるとか
夢なんだから その気になれば
空を飛べるかもしれませんよ
きっと楽しいはずです
でも もし落ちてしまったら
どうも ごめんなさいね
こんな夢みたいなこと
書いてしまって
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2017/01/07
貧しい探偵、しがない家業。
怪盗なんぞ見たことない。
うだるような夏の暑い日に
こっそり野良犬をば尾行する。
細長い尻尾が左右に揺れる。
汚らしい肛門が見え隠れする。
依頼主は上流階級の貴婦人。
報酬は宝石、輝く猫目石。
なにを企んでおるのやら。
もう憂げな午後の暇つぶしかも。
野良犬のナワバリを踏んだ。
ふくらはぎに歯形がついた。
めまいがして倒れそう。
空腹と疲労と暑さ、虚しさ。
あまり多くは望まない。
せめて雌犬だったなら、と思う。
陽炎が揺れている。
路面が熔けている。
犬革の靴がすうっと糸を引いた。
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2017/01/04
あっ、ごめん。
それ、興味ないんだ。
うん。ちっともない。
これっぽっちも関心ないよ。
いや、無理だって。
そもそも好奇心の問題じゃないし。
興味ないことに興味あること関連づけたって
好奇心とか不純になるばかりだよ。
ひねくれるだけさ。
偉そうに見せたくて知ったかぶりするみたいにね。
第一、それに興味を持てないのには
ちゃんと理由があるんだよ。
わかるかい。
本当に興味あることに比べたら、それが
いかにもつまらなそうに見えるからさ。
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2016/12/12
この問題は、明らかに問題である。
ある大男が巨大なノコギリを挽いて
一軒の家を屋根の中央から床下まで切断した。
中には親子四人の家族が住んでいたが
家もろとも全員が切断されてしまった。
折れたり重なったりしていたので
死体の数は全部で十五個になった。
さて、どのように大男は切り分けたのであろうか。
あらゆる死体の組み合わせを列挙せよ。
なお、片腕が切断された場合、その片腕は死体とするが
まだ生きている残りの部分は死体とはみなさないものとする。
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2016/12/09
「ただいま」
「おかえりなさい」
ぼくは、この遊びをやめたいのだ。
「腹へったな」
「すぐ夕飯にしますね」
最初は、そこそこ面白かった。
「お風呂も沸いてますよ」
「うん。あとで入る」
でも、こんなこと毎日やらされてはたまらない。
「ああ、疲れたよ」
「毎日、ごくろうさま」
さすがに、もう限界のような気がする。
「あのさ、そろそろ別の遊び、しない?」
「あら? ちっとも遊んでなんかいなくてよ」
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2016/12/08
神殿が荒らされ、秘宝の短剣が盗まれた。
それを手にする者
人を刺さずにいられなくなる、という。
もし身近に誰もいなければ
己の胸さえ刺す、という。
奪われるまで、力尽きるまで
それこそ死ぬまで刺し続ける、という。
まさに呪われた短剣。
おちおち血糊も拭けやしない。
ただし揃いの鞘の内に短剣あれば
その呪いが外へ及ぶことはない、という。
ところが残念ながら
宝石で飾られた美しい鞘は
神殿の床に落ちていた。
しかも修復できそうもないほど無残に
折れて割れ、粉々に砕け散って。
それゆえか神殿の門から外へ累々と
血と屍の列が続く、続く。
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2016/12/04
人格調査は、地球上に住むすべての人と世帯を対象とする
この惑星の最も重要な統計調査です。
地球人の人格や意識の実態を明らかにするため
人格法という法律に基づき、5年に一度実施されます。
人格調査の結果は福祉施策や生活環境整備、災害対策など
地球の未来をつくるために欠かせない
様々な施策の計画策定などに利用されます。
1 世帯員の数
2 人格の種類
3 氏名および善悪の別
4 世帯主との政治的なつながり
5 最初の人格が確立した年月
6 思想的な同志の有無
7 宗教または信念
8 現在の思想を持つようになってからの期間
9 5年前には何を考えていましたか
10 9月24日から30日までの1週間に何を考えましたか
11 巡礼地または潜伏地
12 受け売りか自説かの別
13 政治結社・宗教団体などの名称および活動の内容
14 本人の意識の内容
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2016/11/20
主人公は異星人との混血児。
とても勇敢な少年。
かわいらしくて賢い妹
にくたらしくて力持ちの弟を従え
世界の平和を守るという伝説の
竜の炎を求め、冒険の旅に出かけた。
孤児の三人を引き止める者はいなかった。
父親は辺境の地で戦死した。
勇敢な最期だったという。
それぞれ母親は異なり
皆、出産と同時に亡くなった。
どれも悲惨な最期だったという。
怪物を退治したり、囚われの姫を救ったり
大活躍の末、ついに三人は手に入れた。
永遠の平和を世界にもたらすであろうはずの竜の炎を。
ところが、持ち帰ろうとした途端
その炎が消えてしまった。
まさに伝説。
もともと永遠の世界平和など
人知のおよぶところではなかったのだ。
これにより世界平和の根拠は消滅し
三人による凄惨な世界分割戦争が勃発した。
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2016/11/17
食べ物が床に落ちている。
料理の途中で落ちたのか
食事の途中で落ちたのか
どちらなのか どちらでもないのか
さっぱり心当たりがない。
それらは大小いくつかあって
色も形も様々。
しかも、よくよく観察すれば
ごくかすかながら もぞもぞと動いている。
まだ生きているのだ。
正直なところ 不気味である。
目を背け、すっかり忘れてしまいたいくらいだ。
しかし、それが食べ物である以上
どうしても食べなければいけないような気がする。
食べずに捨てるのはもったいない。
いや、申しわけない気持ちさえする。
ここは勇気を出すのだ。
ひとつ 白っぽい豆腐のような
比較的小さなそれを 箸で拾い上げる。
そのまま口にするのはためらわれるので
水道の水で軽く洗う。
唇や口蓋に触れないよう
そっと前歯の先だけで噛んでみる。
たとえるなら イカを噛むような歯ごたえ。
決意して飲み込む。
まるで味なんかわからない。
喉に抵抗らしきものもなかったが
なんともいとわしい気分が全身にひろがる。
いやだ。
もうたくさんだ。
いくら食べ物だからって
こんなに我慢してまで食べたくない。
許されようが 許されまいが
残りは捨てるしかない。
それで飢えるなら 仕方ない。
そもそも 食べ物を落としたりしては
いけなかったのだ。
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