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2017/02/03
(冗談じゃねーぞ、まったく)
ラマはいつも不機嫌なのだった。
(なんでまた、おれ様ともあろうものが
こんな狭っ苦しいとこにおらにゃいかんのだ)
動物園の柵の中でにらみを利かす。
(どいつもこいつも、なーんもわかっておらん)
いつも高い位置から入園者を見下す。
(おめーら、自分のわかる範囲でしかわかろうとせん)
不用意に近寄るとツバを吐く。
「ペッ」
だから、あまり人気はない。
(おらおら、見せもんじゃねーぞ)
やがて、みんな遠ざかる。
(ケッ)
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2017/01/19
今朝は変な夢を見た。
若い頃に勤めていた会社のオフィス。
仕事中だが、どうも電話がつながらない。
役員や上司や同僚が次々と現れ
対応できそうもない指示や依頼をする。
何時から会議するから準備してくれ。
これからすぐ山に登ってくれ。
このアルバムを見よ。
すでに故人だったり、とっくに退職した人とか
タイトル戦に敗れたプロ棋士まで出てくる。
そもそも会社そのものが倒産して現存しない。
まあ、いかにも夢らしい夢ではある。
しかし、つくづく思ってしまった。
なんにもならない仕事をしてきたものだな、と。
給料をもらう言い訳みたいな、その場しのぎの
仕事とも呼べないような時間つぶしの数々。
結局、なんにもならなかった。
利益は出ず、受注にもつながらなかった。
なんとか成立した仕事にしても
さして社会の役に立ったとは思えない。
なくてもかまわないような会社だった。
そんなだから倒産したんだよな。
しかしまあ、どうせそのうち
この地球だってなくなっちゃうんだよな。
「無駄じゃ無駄じゃ、まったく無駄じゃよ」
そう呟きたくもなる。
などと思いながらも、こんな
なんにもならなそうな駄文とか書いてるし。
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2016/12/27
北向きの窓の端っこに観覧車が見える。
(あれっ? あんなとこに遊園地、あったっけ?)
いやいや、あるはずがない。
窓に近寄る。
すると、観覧車のように見えた巨大なそれは
地面から離れ、空を飛んでいることがわかった。
西から東へ向かって放り投げられたように弧を描いている。
(台風にでも吹き飛ばされたのかな?)
やがて、それは旅客機のように地面に墜落した。
遠くて音は聞こえないが、大惨事だ。
あの辺りには、たしか同級生の女の子の家があったはず。
自宅の庭にも四角なコタツの板みたいなのが
やはり西から飛ばされて転がってきた。
わけがわからないながらも
とにかく急いで避難しなければならない気がする。
しかし、その前に謎を解明するため
あのコタツ板みたいなのを拾い上げなくては。
窓を開け、庭に降り立つ。
そして、そのまま立ち尽くす。
あの観覧車みたいなのがまっすぐこっちへ向かって
大迫力で転がってくるのが見えた。
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2016/12/24
私は あなたの熱烈なファンですが
以前 あなたの芸を見て
寒気を感じたことがあります。
それは さびしがりやの人が
さびしさのあまり つい自分の尻を撫でて
そのため もっとさびしくなる
みたいな芸でした。
それから もうひとつ。
自分の手のひらに あなたが
カラーのサインペンで 文字や絵を書いて
それがいかにも媚を売るような内容なんですけど
それを自慢げに 観客へ向かって見せる
みたいな そんな感じの芸でした。
なんなんですかね。
ことさらおもしろくもないのに
なぜか印象に残っているのですよね。
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2016/12/19
梅雨の長雨が続いて、今年は冷夏か。
と思ったら一転、記録的な猛暑の夏となった。
ところが、お盆過ぎから台風の影響か、豪雨となり
ついに避難勧告、さらに特別警報が発令された。
我が家は高台に建つが、一夜明けて見下ろすと
住み慣れた町の様子がすっかり変わっていた。
この高台に建つほんの数軒の家を残して
どうやら町全体が大水に流されてしまったらしい。
眼下には隣町なのか、さらにまたその隣町なのか
とにかく見慣れぬ町並みが広がっていた。
変わったのは建物や道路だけではない。
町内会の決め事やゴミの出し方なども
新しい町のルールに従わねばならなくなった。
どうも勝手が違う。
やりにくいったらありゃしない。
老妻が嘆く。
「ここも一緒に流されたらよかったのにね」
「馬鹿なこと言うな!」
わしは老妻を叱る。
しかしながら、じつは内心
同じことを考えていた己自身を叱ったのである。
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2016/12/18
ひとり会社を出て、どこかで昼飯を食べるつもり。
幼なじみの女性が通りの向こうからこちらにやってくる。
大人になった彼女はとても魅力的に見える。
視線が合いそうだが、どうも自然に話せそうもない。
彼女は僕のすぐ後方を歩いていた知人に話しかける。
「○○へ行くつもりなの。あそこの○○、おいしいのよ」
それを耳にして、僕は方向転換をする。
その時、僕は独り言のように何かつぶやく。
すぐ後方を歩いていた女性が、それを聞いて笑う。
好きでも何でもない女性なので気楽に話しかけられる。
「君も○○へ行くの?」
彼女は微笑む。
「そうよ。○○は駅ビルの中にあって
あの駅ビルは○○の店主が建てたものなのよ。
だから私、なかなか彼は偉いと思うわ」
さらに駅ビルが見えると
「この3階部分を増築したのが店主の息子さんで
そろそろ電車が発車する時刻だから、ではこのへんで」
彼女は走り出す。
なんだか僕も遅れてはならないような気がしてくる。
彼女を追うように走り出し、駅ビルの階段を上り
今まさに発車せんばかりの電車に飛び乗る。
ホッとするが、チラリと見えた行先表示の地名に見覚えがない。
どうやら逆方向の電車に乗ってしまった気配。
もう昼飯どころではない。
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2016/12/17
あなたはカニを積み上げようとしている。
それも生きているカニである。
一番下に一番大きなカニ。
その上に二番目に大きなカニ。
さらにその上に・・・・
ザワザワ動くので
なかなか積み上がらない。
石やレンガならともかく
なぜ生きたままのカニなのか。
あの鎧で固めたクモみたいなブキミな姿
見ているだけでも気色悪い。
それを手でつかんで持ち上げるなんて
まったくもって気が知れない。
あなた自身、よくわかっていない。
よくわからないままカニを積む。
来る日も来る日もカニを積む。
積み上がりそうもないカニを積む。
逃げるカニを追いながら
あなたは他にすること、浮かばない。
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2016/12/06
寒くも暖かくもない穏やかな昼下がり。
黙って浜辺に腰おろし
ぼんやり遠い水平線を眺めていた。
低く浮かぶ麦わら帽子そっくりの雲。
または雲そっくりの麦わら帽子。
打ち寄せる波の手招き。
幾千もの白い手がおいでおいでする。
僕のかたわらには人魚姫。
無防備にも裸のまま安らかに眠る。
きれいな爪先、かわいらしい膝に
なまめかしくも美しい下半身。
その上半身はウロコに覆われ
背ビレ、胸ビレ、エラのある醜い魚。
まぶたのないどんより濁ったその眼まなこで
どんな夢を見るのやら。
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2016/12/05
「おれ、やったよ」
ユウタが立ち上がりながら言う。
「えっ? ほんと?」
僕はベンチに座ったまま驚く。
「うん。やった」
ユウタは前の方を向いている。
あんな見飽きた風景に興味あるわけないから
きっと僕と目を合わせたくないのだ。
「いつ?」
「昨日、みんなと別れてから」
続けて「どこで?」とは尋ねない。
その先はユウタが自分から言うべきなのだ。
僕は考え込んでしまう。
あんなこと、僕にできるだろうか。
いや、無理だ。
どう考えても、できそうもない。
「でも、もう二度としたくないね」
「・・・・そうなんだ」
斜め後ろから見上げるユウタの横顔は
なんだか見知らぬ少年のそれのように見えた。
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2016/11/25
知人の男とラーメン屋に入り
注文した品が出てくるのを待っている。
ここの店主の娘であるか、または店員であるか
どちらか不明だが、その子に知人はご執心なのだ。
テーブル席で待つ間に知人と店主が口論となる。
いわゆるラーメン論争である。
ひとりカウンター席に避難してメニューを眺めていると
はしっこに「ぶたちちラーメン」と書かれてある。
ぶたちち? 豚の父親? 豚の母乳?
それとも豚のオッパイの肉?
これはぜひ食してみたいものだ。
などと思っているうちに、すでに食べてるし。
わあ、どうしたことだ。
前の注文を取り消さねばならない。
ところが、あわててテーブル席に戻ると、すでに
その上にレバニラ炒めらしき皿が載っている。
こんなもん注文したっけ?
そもそも看板娘はどこにいるのだ?
すっかり頭が混乱してしまい、せっかくの
ぶたちちラーメンの味、ちっとも思い出せない。
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