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Tome館長

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    Works 3,356
  • 悩ましい声

    どこか知らないところへ一緒に行こうと 

    友人と約束のようなものをしたらしい。

     

    そのため、どこか知らない場所で待っているが 

    彼の姿はなかなか現れない。

     

    ところで、にぎやかな建物が目の前にある。

    不必要なまでに窓や電飾が明るいのだ。

     

    何気なく中に入ってみると、彼がいて 

    見覚えのない女の子とデートの最中であった。

     

    こちらとの約束はすっかり忘れているようである。

    少なくとも、そのように感じられる。

     

    中央ホールのような印象を与えるフロアには 

    たくさんの裸の男女が入り乱れている。 

     

    抱き上げたり、組み合ったり、振りまわしたり 

    恥知らずと言うか、目を覆うばかりである。

     

    すると、ここは公衆欲場のような特別な場所なのか。

    それとも、なにかのまちがいなのか。

     

    ・・・・いくら考えてもわからない。

     

    「今この目の前にある不具合を修正しない限り

     将来の輝ける進展は見込めないのだぞ」

     

    さような声なき声も聞こえてくるが、いかんせん 

    女の子たちの悩ましい声まで聞こえてくる。

     

    「今この目の前にある世界を楽しまない限り

     永遠に楽しむことなんてできないのよ」

     

    それはもう信じられないほどの悩ましさである。

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  • いけないこと

    ねえ、いいかしら。

    お姉さんといけないことしましょうよ。

     

    うん、そうよ。

    やってはいけないことをするの。

     

    ほら、こんなことするのはいけないことよね。

    でも、やっちゃうわけ。

     

    楽しいでしょ。

     

    うふふ、そうよ。

    だって、いけないことができるんだもんね。

     

    もともと、いけなくなんかないのよ。

    いけないと決めつけるからいけないのよ。

     

    たとえばジャンケンでね 

    グーでもチョキでもパーでもない 

    なんか変な形の手を出すようなもんかしら。

     

    つまり、やってはいけないことを許すわけ。

    それだけで世界が変わるわ。

     

    まず自由になる。

    なにより気楽になれる。

     

    ただし、やましいことはしちゃダメよ。

    やましいことをすると、気が重くなるわ。

     

    することが不自然になるし 

    できることが自由にできなくなる。

     

    あっ、こらっ。

    そんなことしちゃダメだってば。

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  • 洗い髪

    真夜中 濡れた髪がまとわりつく。

     

     

    ぬらぬら胸を撫で わき腹を這い 

    両腕をねじりあげ 後ろ手に縛られる。

     

    両脚は みじめな形に 拡げられている。

     

    口は塞がれ 首はきつく絞められ 

    声は出せず 息もできない。

     

    曲げられた背骨の きしむ音。

    深く侵入する感触の股間。

     

    このまま死ぬ予感。

    そして 闇。

     

     

    翌朝 すっかり髪は乾いている。

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  • 抜き打ち検査

    みんな、席について。

    これより持ち物検査を行います。

     

    そう、抜き打ちよ。

     

    お黙りなさい! 

    さあ、私に中身を見せるのよ。

     

    そうそう、いい子たちね。

     

    さてさて、どれどれ。

    ふむふむ、なるほど。

     

    こんなものよね。

    色々あるけど、どれも問題なさそうだわ。

     

    あら? ちょっと待って。

    これは、なにかしら? 

     

    凶器発見! 

    まあ、なんて大きくて立派な・・・・ 

     

    いいえ。

    あんた、なんて危険なものを持ってるの。

     

    信じられないわ。

    まだ子どものくせに。

     

    許しません! 

    こんな物騒なもの、先生が没収します。

     

    ああ、もう我慢できないわ。

    あんた、すぐに保健室へ来なさい!

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  • 痴漢対策

    朝の通勤電車で痴漢しようとしていたら 

    逆にOLに痴漢されてしまった。

     

    「あ、あの、それは、ちょっと」

    「ふん。攻撃は最大の防御よ」

     

    よく見たら、見覚えがある。

    三日ほど前に痴漢した女だった。

     

    「ま、まさか。あっ、そこは」

    「どう? される者の気持ちがわかったでしょ」

     

    今のところ、まだよくわからないのだが 

    彼女の気持ちはわかった。

     

    どうやら正当防衛のつもりらしい。

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  • 歯医者さんごっこ

    「はい。お口を大きく開けて」

    「あーん」

     

    「おやおや。虫歯が多いね」

    「あああ」

     

    「甘い夢ばっかり見てるからだよ」

    「んあああ?」

     

    「ええと、この奥歯は抜かなきゃいけないな」

    「ああ?」

     

    「痛くないよ。麻酔注射するからね」

    「んあんあ」

     

    「治療中、これを右手でつかんでいてもらおうかな」

    「んあ?」

     

    「もし痛かったら握って教えるんだよ」

    「ああん」

     

    「どれどれ。ちょいちょい、と」

    「んあっ!」

     

    「痛い。つ、強く握り過ぎだって」

    「んああっあ」

     

    「やさしく治療するから、やさしく握り返すんだよ」

    「んああんあ」

     

    「ほら。そっと、なでなで」

    「あああん」

     

    「うううん」

    「あー。もう、やだ。歯医者さんごっこなんか」

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  • 蝶の香水

    女の匂いが変わった。

    それは鼻の悪い男にもわかるほどに。

     

    「香水を変えたの」

    微笑む女。「蝶の香水よ」

     

    男は蝶の性フェロモンを連想する。

    「花の蜜でも調合したのかい?」

     

    「さあ、どうかしら」

    女は翅をひろげる。「ねえ、ご存じ?」

     

    困ったように男は首を横に振る。

     

    「蝶のメスは匂わないそうよ。

     蛾と違って、匂うのはオスばかりなんですって」

     

    女が背を向けると 

    男が覆いかぶさってきた。

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  • 壁から太もも

    寝室の壁から太ももが生えてきた。

    と言うか、若い女性であろう片脚が突き出てきたのだ。

     

    生モノである証拠のようにクネクネ動いている。

     

    壁に穴があいていて、そこに愚かな女の子が脚を突っ込んだ 

    というわけではなさそうだ。

     

    その壁の向こう側は廊下であり 

    誰かいるべき場所には誰もいないのだから。

     

    そもそも、おれは孤独を愛する独身者である。

    この家に同居者はいない。

     

    最初こそ驚いたものの、おれは冷静に脚を観察した。

     

    いわゆる生脚にハイヒール。

    なかなかの脚線美である。

     

    生えてきた理由は知らないが 

    このままここにあり続けるかどうかも不明。

     

    恐る恐る人差し指で太ももに触れてみた。

    すると、ピクリと動き、壁の向こうへ引っこもうとする。

     

    おれはあわてて足首をつかんだ。

    引き戻そうとすると、脚は暴れ、壁を上下左右に動きまわる。

     

    やはり壁の固有の穴ではなかったわけだ。

     

    しかし、いくら強く引っ張っても 

    どうやら太ももの付け根までが限界のようだ。

     

    おれはズボンのベルトを片手で外すと 

    苦労して足首に巻き、さらにベッドの端に縛り付けた。

     

    さて、どうしようか。

     

    おれは油性ペンで太ももに文字を書いた。

    「あなた 誰?」

     

    それから、ベルトの長さを調節。

    すると、太もも部分が壁の向こうへ隠れた。

     

    しばらくすると、再び太もも部分が現れた。

     

    返事の文字が書かれてあった。

    「てめえこそ 誰だよ?」

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  • 袋小路

    ネズミ捕りを連想させる袋小路 

    「逃げられないわ」

     

    縦に裂けたふるえる唇 

    「けだもの」

     

    毒々しい色のねじれた舌 

    「近寄らないで」

     

    くるぶしに垂れる液体 

    「お互いのためよ」

     

    むせかえるばかりの臭気 

    「欲しいのね」

     

    重なり交じり合う肉と肉 

    「殺したくないのに」

     

    関節のはずれる音 

    「おびえないで」

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  • あえがせたくて

    ここをこうして こうやって 

     

    それから おっと 

    こんなことまでやらかして 

     

    さらには 

     

    あれ それはいくらなんでもごむたいな 

    みたいなことまでやってしまって 

     

    いやいや まだまだ 

    このていどではすむまいぞ 

     

    とかいいながら 

     

    あんなところを あんなふうにして 

    あまつさえ あんなものまでもちだして 

     

    とんでもない 

    あきれはてたるしょぎょうのかずかず 

     

    なになに まだまだ これからよ 

    ほれ そのしょうこに 

     

    みよ これでもしらをきるか 

    どうじゃ どうじゃ かんねんせよ 

     

    なりませぬ なりませぬ 

    ごしょうでございます ひどすぎます 

     

    いくらがたらこでも あんまりで 

    もはや にんげんのすることではあるまじろ 

     

    やけのやんぱち ばんちゃもでばな 

    しじゅはっても えいけいびい 

     

    さきがしれる たかがしれる

    おさともしれる しりわれる

     

    これこれ なにをなさっておられまするか 

    あなた ごぞんじでござりまするか 

     

    なんと するめがいかでした 

     

    むくつけきこと せんもなし 

    これまでか

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