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    Works 3,356
  • 盗まれた短剣

    2016/12/08

    ひどい話

    神殿が荒らされ、秘宝の短剣が盗まれた。

     

    それを手にする者 

    人を刺さずにいられなくなる、という。

     

    もし身近に誰もいなければ 

    己の胸さえ刺す、という。

     

    奪われるまで、力尽きるまで 

    それこそ死ぬまで刺し続ける、という。

     

    まさに呪われた短剣。

    おちおち血糊も拭けやしない。

     

    ただし揃いの鞘の内に短剣あれば 

    その呪いが外へ及ぶことはない、という。  

     

    ところが残念ながら 

     

    宝石で飾られた美しい鞘は 

    神殿の床に落ちていた。

     

    しかも修復できそうもないほど無残に 

    折れて割れ、粉々に砕け散って。

     

    それゆえか神殿の門から外へ累々と 

    血と屍の列が続く、続く。

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  • 緑色の家

    その緑色の家は葉っぱに覆われていた。

     

    こういう家を見た経験は二度目だったので

    最初の家の時よりは冷静でいられた。

     

    しかし、その玄関らしき暗い穴から 

    人が出てくるのを見た瞬間、さすがに驚いた。

     

    廃屋ではなかったのだ。

    ちゃんと人が住んでいたのだ。

     

    しかも、お嬢さんと呼びたくなるような 

    色白で清楚な感じの若い女性だった。

     

    どうも信じられない。

    この家の中はどうなっているのだ。

     

    ナメクジとかダンゴ虫とかアリとかゲジゲジとか 

    ウジャウジャ這いまわっていそうな気がする。

     

    案外、たまたま不動産の売買とかの件で 

    関係者が下調べしていただけ、とか。

     

    まあ、もっとも、自家用車に寝泊まりするような 

    隠れホームレスのOLだっているそうだから 

    それに比べれば大したことではないのかもね。

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  • 人魚姫の夢

    2016/12/06

    変な話

    寒くも暖かくもない穏やかな昼下がり。

     

    黙って浜辺に腰おろし 

    ぼんやり遠い水平線を眺めていた。

     

    低く浮かぶ麦わら帽子そっくりの雲。

    または雲そっくりの麦わら帽子。

     

    打ち寄せる波の手招き。

    幾千もの白い手がおいでおいでする。

     

    僕のかたわらには人魚姫。

    無防備にも裸のまま安らかに眠る。

     

    きれいな爪先、かわいらしい膝に 

    なまめかしくも美しい下半身。

     

    その上半身はウロコに覆われ 

    背ビレ、胸ビレ、エラのある醜い魚。

     

    まぶたのないどんより濁ったその眼まなこで 

    どんな夢を見るのやら。

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  • ユウタ

    2016/12/05

    変な話

    「おれ、やったよ」

    ユウタが立ち上がりながら言う。

     

    「えっ? ほんと?」

    僕はベンチに座ったまま驚く。

     

    「うん。やった」

    ユウタは前の方を向いている。

     

    あんな見飽きた風景に興味あるわけないから 

    きっと僕と目を合わせたくないのだ。

     

    「いつ?」

    「昨日、みんなと別れてから」

     

    続けて「どこで?」とは尋ねない。

    その先はユウタが自分から言うべきなのだ。

     

    僕は考え込んでしまう。

    あんなこと、僕にできるだろうか。

     

    いや、無理だ。

    どう考えても、できそうもない。

     

    「でも、もう二度としたくないね」

    「・・・・そうなんだ」

     

    斜め後ろから見上げるユウタの横顔は 

    なんだか見知らぬ少年のそれのように見えた。

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  • 人格調査

    2016/12/04

    ひどい話

    人格調査は、地球上に住むすべての人と世帯を対象とする 

    この惑星の最も重要な統計調査です。

     

    地球人の人格や意識の実態を明らかにするため 

    人格法という法律に基づき、5年に一度実施されます。

     

    人格調査の結果は福祉施策や生活環境整備、災害対策など 

    地球の未来をつくるために欠かせない 

    様々な施策の計画策定などに利用されます。

     

     

     1 世帯員の数

     

     2 人格の種類

     

     3 氏名および善悪の別

     

     4 世帯主との政治的なつながり

     

     5 最初の人格が確立した年月

     

     6 思想的な同志の有無

     

     7 宗教または信念

     

     8 現在の思想を持つようになってからの期間

     

     9 5年前には何を考えていましたか

     

     10 9月24日から30日までの1週間に何を考えましたか

     

     11 巡礼地または潜伏地

     

     12 受け売りか自説かの別

     

     13 政治結社・宗教団体などの名称および活動の内容

     

     14 本人の意識の内容

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  • 秘密の通路

    2016/12/03

    愉快な話

    「ここからあたしんちへ行くにはね

     この通路を抜けるのが近道なんだよ」

     

    下校途中、あかねちゃんが言う。

     

    「えっ? それっておかしいよ。だって

     あかねちゃんち、この道をまっすぐのところじゃん」

     

    ぼくは算数の図形の話をしたくなる。

     

    「そう思うでしょ? でも違うんだな、これが」

    あかねちゃん、その狭い隙間から中に入ってしまった。

     

    しょうがないので、ぼくも続く。

     

    「ここ、よそんちの庭じゃないの?」

    「そうよ」

     

    「見つかったら怒られるよ」

    「平気だって。当然って顔してれば、大丈夫」

     

    それから小川を飛び越え、線路下のトンネルをくぐると 

    見覚えのある場所に出た。

     

    「あれ? ここって・・・・」

    「そうよ。あれがあたしんち」

     

    本当に近道なのだった。

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  • 防災対策

    2016/12/02

    論 説

    失敗や事故や災害、放っておいたら起こって当然。

    可能性ある限り、未然に防ぐ絶対の手段はあるまい。

     

    自分たちの判断が正しいかどうか 

    その判断を下すのも自分たちの判断だから。

     

    それゆえ安全性の確保には限界がある。

     

    最善の防災対策は、起こる可能性を減らすこと。

    できれば消し去ること。

     

    家の中にいれば、まず交通事故には遭わない。

    道路からクルマを締め出せば、なおさら。

     

    欲出さば災いあり。

    とかく余計なものが多すぎる。

     

    ないで済むなら、ないに越したことない。

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  • 玄米食

    2016/12/01

    論 説

    自炊のご飯は玄米と決めている。

     

    そう。

    栄養あれど、白米ほどおいしくない。

     

    そのため 

    あまり食欲がわかない。

     

    しかしながら 

    それだからこそ良いのである。

     

    おいしくて、つい食べ過ぎてしまう 

    という心配がない。

     

    今すべき事柄に集中できる。

     

    そして、少しだけ食べる分には 

    十分においしいのである。

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  • つまんないこと

    2016/11/30

    空しい詩

    そんなつまんないこと、やりたくないな。

     

    上手下手とか関係ないよ。

    第一、面白くもなんともないじゃん。

     

    そうまでして達成したいの? 

    勝つ以外に楽しみないの? 

     

    相手が必要なのかな。 

    ひとりじゃ、途方に暮れるとか。 

     

    ああ、そうか。

     

    反応が欲しいんだ。

    歓声や拍手を聞きたいんだ。

     

    相手いなきゃ、やる気になれなくて 

    観客いなきゃ、張り合いないんだ。

     

    ふーん。

    そうなんだ。

     

    でも、そういうの、慰めにはなるけど 

    慰めにしかならないよ。

     

    それでいいの? 

    ただ慰めて欲しいだけ? 

     

    ふーん。

    そうなんだ。

     

    君、まだまだ子どもなんだね。

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  • 大事なもの

    2016/11/29

    暗い詩

    あれは 

    とても大事なものだった 

     

    今ならわかる

     

    捨ててしまっては 

    いけないものだったのだ 

     

     

    あんな大事なもの 

    なぜ捨てることができたんだろう 

     

    わからない 

     

    あの時の僕の気持ちが 

    今の僕には どうしてもわからない 

     

     

    あれは もう 

    二度と手に入らないだろう 

     

    そんな気がする 

     

    この世界から 

    永遠に失われてしまったのだ 

     

     

    だから 

    あれは とても貴い 

     

    ある意味 

    命より大事なものだった 

     

    少なくとも 今ここに残る 

    僕の命なんかよりは ずっと

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