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    Works 3,356
  • ハーレム

     
    世界中から集めた美女が千人。


    姿かたちが美しいの、表情が豊かなの、
    愛嬌があるの、気品があるの、麗しいの、

    賢いの、愚かしいの、アートなの、
    幼いの、純情なの、生意気なの、

    年増なの、艶かしいの、変態なの、
    悪女なの、どうにも手がつけられないの、

    歌手なの、女優なの、ダンサーなの、
    女学生なの、ナースなの、女教師なの、

    巫女なの、尼なの、未亡人なの、
    酔ってるの、狂ってるの、サイボーグなの、

    獣なの、妖精なの、幽霊なの、妖怪なの、
    原始人なの、異星人なの、異次元人なの、

    仙女なの、天女なの、女神なの、
    もうなにがなんだかわからないの・・・・・・


    ありとあらゆる美女を集めた。
    それが私の夢のハーレム。

    当然、このハーレムの主は私だが、
    私は怖くては入れない。
     

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  • 地下室の惨劇

    2008/12/10

    怖い話

     
    「地下室への入口よ」


    廊下廊下廊下廊下廊下
                   階段
                      階段
                         階段
                            階段
                               階段
                                  階段
                                     階段
    「暗いから、気をつけて」                     踊り場
                                     階段
                                  階段
                               階段   
                            階段
            血            階段
    血                 階段
         死 体      階段
    床床床血血血血床床床

     
    「きゃあああああ!」
     

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    • Tome館長

      2012/03/30 14:32

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

  • 不吉な声

    2008/12/09

    怖い話

    カラスの鳴き声で眠りから覚めた。


    かなり近くでカラスは鳴いている。

    いつも私は頭を窓に向けて寝るのだが
    カラスは外のベランダにいるらしい。

    スズメやハトならともかく
    なぜカラスがこんな近くにいるのか。

    寝たまま考えるのだが、よくわからない。


    眠りから覚めても目は閉じたままだった。

    仰向けに寝ているのだが
    まるで起きる意欲が湧かないのだった。

    すでに夜は明けているはずだが
    それでも網膜に薄暗く感じられるのは

    カーテンが窓を覆っているからだろう。


    さきほどまで夢を見ていたはずだが
    その内容はどうしても思い出せない。

    そういえば、昨日なにをしたのか
    それさえ思い出せないのだった。


    ふと、異臭がするのに気づいた。
    肉が腐っているような臭いだった。

    ベランダに猫の死体でもあるのだろうか。
    だから、ベランダにカラスがいるのか。

    寝たままでは確信など持てなかった。


    そろそろ起きなければいけない。

    社会人として許されないことであり、
    体にとっても寝すぎるのは好ましくない。

    どうすれば起きることができるのか
    仰向けに寝たままで私は考えてみた。

    まず寝返りを打って、うつ伏せになり、
    膝を突き、尻を持ち上げた姿勢になれば

    もう素直に起きた方が楽になるはずだ。 

    けれども、理屈はそうなのであろうが
    最初の寝返りさえ、私は打てないのだった。

    あいかわらず目も開けることができない。


    カラスの鳴き声さえ気にしなければ
    あたりは信じられないくらい静かだった。

    家人の足音も、扉が開閉する音も
    近所の奥さんの笑い声も聞こえなかった。

    私自身の息や鼓動の音さえ聞こえなかった。


    カラスは一羽ではないような気がした。

    二羽か三羽か四羽か五羽か六羽か
    あるいは、もっといるかもしれなかった。

    その生きた心地のしない不吉な声が
    寝たままで動けないわたしの体を覆っていた。

    耳を塞ぎたくても、指さえ動かせなかった。


    あの肉の腐ったような臭いが
    ますます強く感じられてくるのだった。
     

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  • 鬼ごっこ

    寺の小僧が指を立て、大声で叫んだ。
    「鬼ごっこするもの、この指とまれ!」

    すぐにいろんなのが集まってきた。

    妙に鼻が高いの。
    手に水掻きがあるの。

    角を生やした鬼の子までやってきた。
    とりあえず、この鬼の子が鬼になった。

    「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」
    オカッパの女の子が囃し立てた。

    すぐに鬼の子は女の子を捕まえた。

    「鬼さん、遊びよ。食べないで」

    でも鬼の子は、やっぱり鬼の子。
    真っ赤な顔して食べちゃった。
     

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  • 耳掃除屋

    2008/12/07

    愉快な話

     
    女房もらうんなら掃除好きに限るな。
    ホコリ溜めねえで金を貯めるってもんだ。

    うちのなんかもう掃除好きで大変だぜ。
    よそでホコリ見つけると懐かしくなるよ。

    しかも耳掃除ときたらもう天下一品だね。

    まず、あいつの膝枕に頭のっけるだろ。
    あの耳かき棒がぐいっと突っ込まれるね。

    耳の穴の奥をぐりぐり掻きまわされてな。
    脳ミソをくすぐられてるような心地よさよ。

    もう口の端からよだれが垂れちまうよ。
    おれの親父なんか小便まで垂らしやがった。

    それにまた、耳クソの出ること出ること。

    どこからこんなに出るのか信じられねえぜ。
    終わると、頭が軽くなって浮いちゃうよ。

    そりゃ冗談だけどさ、そんな感じだよ。
    どうだ、おまえ。うらやましいだろうが。

    それでな、おれにいい考えがあるんだ。

    あいつに耳掃除屋をやらせるわけよ。
    つまり、客の耳の穴を掃除する商売さ。

    いや、本当だって。絶対に儲かるって。

    あの耳掃除を途中でやめられてみな。
    こりゃもう確実に身もだえもんだよ。

    大枚はたいても続けて欲しくなるって。
    なんなら、おまえが最初の客になりなよ。

    どうだ。なんとも耳寄りな話じゃねえか。
     

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  • 村への遠い道

    2008/12/06

    怖い話

    夕暮れが迫っていた。
    急がねば。


    村はずれに首切り地蔵が祭ってある。
    罪もなく打ち首にされた村人の慰霊だ。

    道の真ん中、地蔵の首が落ちていた。
    気味悪いが拾い上げ、戻そうとした。

    だが、首切り地蔵の首はちゃんとついてる。
    慈愛の表情。

    あわてて首を投げ捨てた。


    ますます暗くなってきた。
    急がねば。


    まもなく足引き池の横を通ることになる。
    池に近づくと、足を河童が引き込むという。

    その澱んだ水面から腕が二本突き出ていた。
    顔も出ていた。

    だが、河童ではなかった。

    それは村の子だった。
    見覚えがある。

    そのまま引き込まれるように池に沈んだ。


    すっかり日も沈んだ。
    とにかく急がねば。


    ぼんやり遠く、身投げ橋が見えてきた。
     

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  • 目覚めたら

    2008/12/06

    変な話

    あわてて目覚めたら、そこは戦場だった。

    ミサイルがまっすぐ飛んできた。
    すばやく地面に転がって衝突を避ける。

    あるいは、素手でもつかめたかもしれない。
    それほどミサイルはゆっくり飛んでいた。

    そのミサイルを狙い、光線銃で撃つ。
    なぜ光線銃を所持しているのか、不明だ。

    それはともかく、
    光線が空中をゆっくり進む。

    そのため時差が生じ、位置が重ならず、
    光線はミサイルには当たらなかった。

    死を覚悟するような戦場においては
    すべてがゆっくりと動くらしい。

    おそらく、相対的に主観的に
    そのように感じられるだけなのだろう。

    ミサイルの進行方向には戦車が一台、
    空中に浮かんでいた。

    戦車に翼があるわけではないのだから
    見えない竜巻にでも巻き込まれたのだろう。

    やがて目測通り、
    その空飛ぶ戦車とミサイルとは衝突した。

    しかし、爆発しない。

    ミサイルは地面に落ちてから爆発した。

    油断していた。
    爆発も遅いのだ。

    ほんの近くだった。
    爆風がゆっくりとこちらにやってくる。

    逃げようとして、地雷を踏んでしまった。
    それとも潜水艦の頭であったか。


    あわてて目覚めたら、そこは海底だった。
     

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  • 野戦病院

    2008/12/05

    切ない話

    入院すれば必ず死ぬのであった。
    退院するのは死体に決まっていた。

    院内には死に至る伝染病が蔓延していた。
    皮膚に斑点が浮き出たら、もう絶望的だった。

    野戦病院という名の傷病兵捨て場なのだった。
    医師も看護婦もみんな死んでしまった。

    それでも治療と看護は続けられていた。
    知能を備えたシステムが働いているのだ。

    生きている限り患者を生かそうとする。
    生体反応が消えたら、院外に排出する。

    それだけの単純なシステムだった。

    病院の裏には死体の山ができていた。
    すでに病院より大きな山になっていた。

    死体にはすべて防腐処理が施されている。
    だから死体はあまり崩れていなかった。

    体のどこかの部位を失っているもの。
    どこか割れたり裂けたりしているもの。
    どこか膨らんだり爛れたりしているもの。
    皮膚に斑点があるだけでなんともないもの。

    それらの死体によって山が築かれていた。
    あまりにも救いのない風景だった。


    私は、ある特殊な任務をおびていた。

    野戦病院の死体の山を処分すること。
    それが私に与えられた任務だった。

    気が滅入らないはずがなかった。
    まだ戦闘に参加する方が気が楽だろう。

    だが、任務の遂行は絶対命令なのだった。

    死体の山を処分する前にすることがあった。
    野戦病院のシステム修正作業である。

    死体の山を処分するだけでは切りがない。
    山を築かないシステムにする必要がある。

    これについては、私に考えがあった。

    まず死体を円盤状に圧縮成型するのだ。
    それから、この円盤を冷凍処理する。

    ただし、防腐処理の工程は省略する。

    これでカチカチの死体円盤ができあがる。
    そして、これを院外へ放出するのだ。

    死体排出口も改造しておく必要がある。

    円盤が遠くまで地面を転がり続けるように。
    病院から遠く離れてから倒れるように。
    上り方向に対しては水平に滑空するように。

    これで死体はあちこちに分散するだろう。
    どこにも死体の山は築かれないはずだ。

    死体は自然解凍され、自然に腐る。
    やがて自然な土になる。それで完了。

    システムとして問題なさそうだ。

    現在、システムの修正作業は進行中だ。
    すでに修正内容の指示は済んでいる。

    あとはシステムの知能に任せておけばいい。


    私は、先に死体の山を焼くことにした。
    死体の山は不快であり、邪魔でもある。

    それに処分できなくなるかもしれない。

    私の皮膚に斑点が浮き出てきたのだ。
    死に至る病に私も感染してしまったらしい。

    死体を処分する者が死体になるわけだ。
    戦争が終わったら笑い話になりそうだ。

    それでも、せめて任務だけは遂行したい。
    なんのために死ぬのか納得して死にたい。


    任務の遂行だけなら簡単なことだ。
    山の死体を傷病兵として再登録すればいい。

    システムが判断して円盤に加工するだろう。

    だが、あまりにもかわいそうではないか。
    死んでから円盤にされるなんて。

    さらに地面を転がされたり、空を飛ばされたり。

    しかも防腐処理済みだから、なかなか腐らない。
    いつまでも円盤のまま。

    いくら死体でも死にたくなるに違いない。

    できるだけ普通に焼いてやりたいのだ。

    それで私の罪滅ぼしになるとは思わない。
    それが私の最期の生きがいなのだ。

    おそらく円盤の第一号は私だろう。
    うんと遠く、敵陣まで転がってやるつもりだ。
     

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  • 山猫の沼

    茂みをかき分けかき分け、
    奥へ奥へと進んでゆく。

    あたりはひっそり
    静まり返っている。

    山鳥のさえずりさえ
    聞こえない。

    草と木と土の匂い。
    ひどい汗。


    不意打ちのように茂みが途切れ、
    目の前に小さな沼が現われる。


      ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ


    なんだろう。
    妙な音。

    沼の対岸で水を飲む、
    それは山猫。

    ふと顔を上げ、
    こちらを見る。

    視線が合う。
    その縦長の瞳。


    すぐにつまらなそうに目をそらし、
    山猫は再び水を飲み始める。


      ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ


    小さな舌が
    水面に波紋を作る。

    それは沼のこちら側まで広がる。


    波紋は岸で終わらない。

    だから僕の足が
    柔らかな地面に沈んでゆく。
     

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  • 忘れたい女

    2008/12/03

    切ない話

     
    列車は深い闇の底を走っていた。
    おれは疲れ果て、眠りかけていた。

    突然、隣席の女が吠えた。
    驚いたのなんの、猛獣かと思った。

    「ご、ごめんなさい」

    思わず謝ってしまった。
    寝ぼけて迷惑かけたと思ったのだ。

    体も顔も小さな女だった。

    「す、すみません」

    女も謝ってきた。可憐な声だった。

    「どうしたんですか?」

    尋ねると、うつむいてしまった。

    細い肩が震えていた。
    そこに手を置くべきかどうか迷った。


    やがて、女は小さな声で呟いた。

    「思い出してしまったの」

    こちらは首を傾げるしかない。

    「なにを?」

    女の声は、ますます小さくなった。

    「どうしても忘れたいことを」
     

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