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  • 危機管理室

    2015/12/20

    愉快な話

    「指導教官殿、下半身が自白しそうであります」

    何を口走っておるのだ、おれは。

     

    そもそも、目の前で悩ましく美脚を組み替えるミニスカ美女に 

    心を奪われている場合ではないのだ。

     

    「あら、とても苦しそうね。我慢はカラダに毒よ」

    うう、その通り。早く楽になりたい。

     

    敵国からの見えざる侵略の手が政財界の中枢にまで届いている 

    という話、まんざら噂だけではなさそうだ。

     

    「失礼いたします」

    沈黙を破るように人型ロボットの等身大メイドが入室してきた。

     

    「コーヒーもお茶も召し上がらないそうなので

     お水をお持ちしました」

     

    どうせ自白剤が入っているに違いない。

    いやいや。催淫剤かもしれないぞ。

     

    「今年の夏は雨が多く、日照時間が少ないそうですね」

    とりあえず天気の話でもして誤魔化すしかあるまい。

     

    「・・・・そのようね」

    データを確認したかのように、美女は再び美脚を組み替える。

     

    案外、この女も人型ロボットかもしれないぞ。

     

     

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  • 駆逐せよ

    2015/12/19

    暗い詩

    ウケよくて 
    親しみやすく 

    目立っているが
    つまらない 

    挨拶みたいに 
    どうでもよさそな 

    噂のように 
    どこにでもありそな 

    世の流れに 
    タダ乗りしてるだけの 

    ニセモノども 
    マガイモノども 

    目障りなだけで 
    なんの貢献もせぬ 

    唾棄すべき
    インチキ至極な輩を 

    駆逐せよ! 
    駆逐せよ! 


    (逆に駆逐されたりして)

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  • 板チョコ

    2015/12/18

    愛しい詩

    君は板チョコ 
    明治のブラック。


    近所のスーパーの 
    第二と第四土曜日の 

    お菓子全品一割引きの特売日に 
    まとめて買われ 

    紙帯のパッケージ はぎ取られ 

    夏なら冷蔵庫の野菜室の片隅に 
    重ねて保管されるのさ。


    ほぼ一日一枚

    筋目に沿って 指でパキパキ折られ 
    アルミの銀紙 破られて 

    それから一かけらずつ 指でつままれ 
    僕の口の中へ放り込まれる 

    それが君の運命。


    齧られ 舐められ 溶かされて 
    甘く 切なく ほろ苦く 

    カカオポリフェノール 
    770mgは伊達じゃない。

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  • 防災放送

    2015/12/17

    ひどい話

    こちらは、防災噓田です。
    光化学スモッグ注意報が発令されました。
    不要な外出や屋外での運動はお控えいただきますよう、お願いいたします。


    こちらは、防災噓田です。
    本日、噓田市法螺台の87歳の女性が行方不明となり、探しています。
    女性は身長47m50cmくらい、細身で、頭髪は白髪・短髪です。
    上着も下着も着ておらず、つまり裸ですが、ピンクのスリッパを履いています。
    お心当りの方は、噓田警察署までご連絡ください。


    こちらは、噓田市役所です。
    市民のみなさん、外にいる子どもたちの安全を地域の眼で見守りましょう。
    安心・安全の街づくりにご協力をお願いします。


    こちらは、防災噓田です。
    本日発令されました光化学スモッグ注意報は、解除されました。
    ご協力ありがとうございました。


    こちらは、防災噓田です。
    本日、行方不明の捜索依頼をしました女性は、無事保護されました。
    ご協力ありがとうございました。


    こちらは、嘘田市役所です。
    外にいるよい子のみなさん、もう家に帰る時間ですよ。
    事故に遭わないよう、みんなで気をつけて帰りましょう。
    市民のみなさん、子どもたちの安全を地域の眼で見守りましょう。

     

     

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  • 切腹の作法

    2015/12/16

    論 説

    切腹には作法というものがある。

    切腹する人を切腹人、これに付き添い切腹人の首を切り落とし 
    検視役に首を見せるなど、切腹の補助を行う者を介錯人と呼ぶ。

    腹部を切り裂いただけでは死に至るまでに時間がかかり 
    非常な苦痛を強いるため、通常は 
    介錯人が切腹直後に介錯を実行する。

    切腹の際の腹の切り方は、腹を一文字に切る「一文字腹」 
    さらに縦にみぞおちからへそ下まで切り下げる
    「十文字腹」が望ましいとされた。

    しかしながら、体力的に実行は難しく、介錯人がいない場合 
    喉を突いて絶命することが多かったそうである。

    切腹人は、検視役に黙礼し、右から肌脱ぎする。
    左手で刀を取り、右手を添えて押し頂いてから右手に持ち替える。

    左手で三度腹を押し撫で 
    へそを避けた高さに左から刀を突き立てる。

    切腹人が刀を引き回す頃合いで、介錯人は首を皮一枚残して斬る。
    皮一枚残して斬ることを「抱き首」といい 
    こう斬るのが礼儀とされた。

    抱き首の形にするのは、首が飛んで落ち 
    土砂で汚れるのを防ぐため。
    または「身体を分割するは親不孝」との儒教思想の影響があるため。

    あるいは 
    「討ち死には敵に頭を向ける前のめりの形が美しい」とされ 
    胸にぶら下がる首の重みで体を前に倒すためともいう。

    ただし、切腹人があえて首を切断することを希望する場合もあり 
    必ずしも抱き首にしなければならないということはなかった。

    首を一刀で切り落とすのは剣術に長けた者でないと勤まらず 
    下手な介錯ではしくじっては何度も斬りつける事態になりかねない。

    介錯人は預かり人の家中の者が務める建前になっていたため 
    介錯の失敗は武術不心得として預かり人の家の恥とされた。

    そこで、家中に腕の立つ者なければ 
    他家から人を借りることもあった。

    江戸時代中期には切腹自体も形式的なものとなり 
    短刀でなく扇子を置き、それに手をかけんとした瞬間に 
    介錯人が首を落とす方法が一般的となる。

    なお、平穏な江戸時代には 
    どうしても腹を切れぬ武士も少なからずおり、そのため 
    切腹ならぬ「一服」という服毒自殺の方法も用意されていた。


    以上、Wikipedia「切腹」より編集引用。

    自殺および自殺幇助の作法まであるとは、じつに日本的。
    つくづくパターン化するのが好きな国民である。

     

     

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  • 風の子

    2015/12/15

    明るい詩

     

    風の子 飛ぶ子 いたずらっ子 
    目に砂入れて 泣かすの得意 

    少女の足もと さっと駆けぬけ 
    ちらりとスカート めくるのだ 

    春一番から 木枯らしまで 
    疲れを知らない 風の申し子 

    まだまだ小さくて 台風や 
    竜巻には なれないけれど 

    つむじ風になって 踊ったり 
    ときには そよ風になったりね 

    風の子 もしも見つけたら 
    自転車に乗って 追いかけよう 

    そうすりゃ ほら 君だって 
    なかなか立派な 風の子だ


     

     

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  • 姉さんの鍵

    今日は、ぼくの誕生日。

    ねえさんから鍵をもらった。
    きれいな金色の鍵。

    ぼくは、ねえさんの髪が好き。
    やわらかな長い髪。

    許されるなら、いつまでもながめていたい。

    ねえさんの手も好き。
    でも、長い爪はきらい。

    去年の誕生日、そっとねえさんの髪にふれた。
    ねえさんは驚いてふり向き、爪がぼくの耳にささった。

    あの時、ぼくもねえさんも泣いてしまった。
    だから、ぼくの右耳には今でも、小さな穴があいている。

    今夜、この穴に鍵をさしこんでみるんだ。
    痛いだろうけど、ぼくは泣かないよ。

     

     

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  • 夜中のセミ

    2015/12/13

    暗い詩

     ツクツク オーシ
     ツクツク オーシ 

    12時も近く
    こんな夜中に鳴くセミのいる 


    暑くて寝苦しいからか 

    常夜灯がまぶしくて 
    眠れないからか 


    それとも 

    もう鳴いていられる時間がないと 
    わかっているからか 

     

     

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  • 落ちてしまいそう

    2015/12/12

    怖い話

    ビルの屋上にいる。
    5階建てくらいだろうか、そこそこ高い。

    なのに、フェンスは低い。
    クルマ止めブロックほどの高さしかない。

    なぜか中学生の頃からの友人と一緒だ。
    冗談みたいに彼が私の肩の上に乗っている。

    そして、彼は執ように重心を移動させる。
    そのため私は、フェンスぎりぎりのところまで歩かされる。

    眼下にコンクリートの地面が見える。
    小さく見える自転車や自動車。

    恐怖のあまり、臓器が縮みそうになる。
    「あぶない。やめろ。やめろったら」

    しかし、ますます友人はフェンスの外側へ重心を移動させる。
    彼が何を考えているのか、さっぱり理解できない。

    「あ、あぶない」
    本当に落ちてしまいそうだ。

     

     

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  • カオルちゃん

    2015/12/11

    切ない話

    カオルちゃんが教会でオルガンを弾いています。

    その美しい調べは聴衆をウットリさせます。
    この曲は小さなカオルちゃんが自分で作りました。

    カオルちゃんはうまく喋れません。
    学校にも通えないくらいです。

    でも、音楽の才能はたいしたものです。

    どんな曲も一度聞くだけで演奏できます。
    それも完璧に。

    文字は書けませんが、楽譜は書けるのです。
    その小さな手で一生懸命に。

    楽譜も録音も膨大な量になりますが 
    どれも素晴らしく、どれも捨てられません。

    そう言えば、カオルちゃんは捨て子でした。
    この教会のこのオルガンの前で泣いていたのです。

    この教会で育ち、この教会で大人になり 
    やがて、この教会で老いてゆくはずです。

    カオルちゃんの音楽はいったいなんなのでしょう。
    あるいは、天使の歌が聞こえるのでしょうか。

     

     

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