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2015/12/30
僕の恋人 と呼ぶ人は
壁を挟んで すぐ隣に住んでいる。
寝室も隣 台所も隣
出入り口も ベランダも
二つ並んで お隣同士。
なかなか すてきな
距離関係。
いつも一緒じゃ 息詰まる。
つかず 離れず
お隣同士が ちょうど良い。
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2015/12/29
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2015/12/28
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2015/12/27
トランプが見つからない。
二十年以上も前に買った「不思議の国のアリス」のトランプ。
かわいらしくて素敵な絵柄だったから捨てるはずない。
なのに、おもちゃ箱の中に入ってない。
押し入れを掻き回したり、床板を剥がしたり
頭の中の記憶を掘り起こしたりしても出てこない。
ウサギの巣穴に落っこちたの?
米粒より小さく縮んでしまったの?
それとも、首切り好きな女王様が
家臣や兵隊を大勢引き連れ、国外逃亡でもしたの?
はっ、まさかね。
童話じゃあるまいし。
どこかに隠れているはずなのだ。
ほんのちょっとばかり意外な場所に。
ああ、くやしい。
不思議でもなんでもないはずなのに
消えてしまった、不思議の国のトランプ。
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2015/12/26
成長促進剤やら添加物の影響で成長異常児や奇形児が増えている
という噂である。
しかし問題は、それらを放任したままにしておく当事者の
精神の異常であり、奇形であろう。
などということを考えていたら
窓の外が騒がしい。
共同ごみ置き場のごみの出し方がひどい
とのこと。
やれやれ。
身近にも徘徊していたか。
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2015/12/25
君はオートバイで海を渡る。
船で渡っても、あんまり意味がないから。
同じ理由で、君が乗る船は空を飛び
君が乗る飛行機は地中を潜る。
しかしながら、それらにも深い意味はない。
自転車で虹を渡ろうと、衛星軌道を進もうと
ほんのちょっと奇妙な印象を与えるだけ。
そういう場所に宝は隠されていない。
子どもたちは喜ぶかもしれないが
大人たちは紛らわしさに困惑するばかり。
つまり、乗物とか移動手段なんか
なんだっていいのだ。
スプーンに乗ってスープ皿の上を
渡りたければ渡るがいいさ。
結局、どこにいてどうしていようと
君は君でしかないのだから。
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2015/12/24
どうぞ私を捜さないでください。
私はあなたから姿を消します。
あなたの知らない場所へ隠れます。
だから私を捜さないでください。
ふたりが別れてはならない理由も
一緒にいなければならない理由も
少なくとも私には見つけられないのです。
あなたの都合など理由にはなりません。
私の都合が理由にならないのと同じです。
もう会わないことにしましょう。
それが、お互いのためになると思います。
いいえ、私たちのためだけでなく
ありとあらゆるもののためになるでしょう。
そんな予感がするのです。
だから、この手紙を残します。
けっして私を捜さないでください。
もしあなたに見つけられたら
私は生きていけません。
私はあなたを死ぬほど愛そうとしました。
でも、愛がなくては死ねません。
私は最後の女として生きます。
あなたも最後の男として生きてください。
さようなら。
もう名前もいらない 最後の男へ
最後の女より
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2015/12/23
彼女は段ボール箱なのだった。
宅配便とかで届いた荷物の梱包材を捨てもせず
部屋の片隅に溜めておいたら、生まれてしまったのだ。
「困るなあ」
僕が呟くと
「そうよね。困るわよね」
波状の断面をゆがめ、彼女は悲しげな顔をした。
途端に心がざわつく。
「いやいや。早く処分しなかった僕が悪いんだけどね」
しかし、このままにしてもおけない。
なんとかしなければ。
とりあえず、彼女の素材の段ボールについて調べてみた。
19世紀イギリスにおいて、当時流行していたシルクハットの
内側の汗を吸い取るために開発されたのだそうだ。
また、腐食性ガスがわずかながら発生するので
電子部品の長期保存には向かないとのこと。
由緒あるのはかまわないが、腐食性はいただけないな。
「あの、私、出ていきます」
僕の心を読んだのか、彼女の方から申し出てくれた。
「そうかい。悪いね。そうしてもらえると助かるな」
彼女のために玄関ドアを開けてやる。
「大丈夫かい?」
「・・・・大丈夫です」
「段ボール箱だもんね」
「ええ。段ボール箱ですから」
そうして段ボール箱の彼女は出ていった。
見送るために庭に出て、僕は曇り空を見上げる。
雨が降っていないのが、せめてもの幸いだ。
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2015/12/22
気まぐれに
鶴を折ろうとして
折り方をすっかり忘れていることに
今 気づいた
三角に折ったり
ひし形に折ったり
きれいにたたんで裏返したり
おしまいに 息を入れて膨らませたり
幼い頃
なにが面白くて折り紙をしたのか
と言うと
なんでもない一枚の紙が
ただ折るだけで
舟とか兜とか 人形とか飛行機とか
いろんなものに変わるから
でも たとえそれが
どんな形をしていようと
やはり なんでもない
ただの一枚の紙でしか
あり得ないのに
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2015/12/21
追われている。そんな気がする。
なんとしても逃げなければならない。
そいつの裂けた口には鋭い牙が並んでいる。
きれいな穴の列を頭蓋骨にこしらえるはず。
そいつの歪んだ手にはおぞましい爪が生えている。
傷口を開いて血まみれの心臓をえぐり出すはず。
なのに動けない。足が重い。
両足に黒く長いものが巻き付いている。
背後から臭い息が忍び寄る。
よだれのようなものがうなじに垂れた。
「さて、どこから喰ってやろうか」
思わず返事をしてしまう。
「私は毒です。おなかを壊します」
「ほほう、そうかい。では、まず毒抜きをせねばな」
「・・・・そうですね」
そうして、それから毒抜きなるものをされた。
すっかり毒を抜かれてしまい、もう何も言えないが
そのまま喰われた方がマシだった気がする。
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