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2008/11/15
芹
なずな、
御形
はこべら
仏の座。
すずな
すずしろ、
春や来い。
2008/11/14
ここに どうして あんたが 夢を
重ねて ゆくわけ ゆかないわけ で
なんだって お好み次第 きゃはは う
手に手を とって 足に足 とって
彼女と 彼は あんたと あたし
カナリヤ 鳴くから 見て 見てってば
意味が ないと 明日も ナイト
一晩中 わかって ないの もう朝か
恋も なくなく あんたもう 眠ってる
2008/11/14
狭い檻の中にたくさんの鼠がいる。
動かないのも動きまわっているのもいる。
動かない鼠は檻の隅に丸まり、
自分自身の前脚を齧っている。
出血はない。
すでに前脚は死んでいる。
この檻の中には、逃げる場所がない。
檻の隅で逃げたつもりになるしかないが
動きまわる鼠に尻を齧られることになる。
それでも隅の鼠は動こうとしない。
動きまわる鼠は暴れるだけ暴れ、
齧る、引っ掻く、引きずりまわす。
わけもなく暴れずにいられないのだ。
狭い檻の中でうごめく無数の鼠の群。
尻尾の千切れてない鼠は一匹もいない。
2008/11/13
そこは不思議なところです。
柔らかな白い絹のような地面が
どこまでも果てしなく広がっていて
しかも その上のいたるところに
うつ伏せになったり 仰向けになったり、
ドレスを着たり ほとんど裸だったり、
いろいろな様子をした女の子たちが
おもいおもいに眠っているのです。
下手に歩いたりしたら
さざ波のように地面が揺れて
彼女たちを起こしてしまいそうな気がして
そこから一歩も動くことができません。
途方に暮れて 私も地面に横たわり、
すぐ目の前の女の子の寝顔を見ながら
一緒に眠ってしまいました。
2008/11/12
大きなクマのぬいぐるみ。
いつもあたし、これ抱いて寝るの。
しっかり抱いていないと眠れない。
理由はわかんない。とにかくそうなの。
これ、パパが誕生日に買ってくれた。
だけど、あんまりパパには会えない。
なんというか、いろいろあってね。
あたし、さびしかったり悲しい夜に
ぬいぐるみをしっかり抱いてみるの。
すると、ぬいぐるみもあたしを抱いてくれる。
なんだかとっても気持ちよくなって、
本当に泣きたいくらい気持ちよくなるの。
ホントよ。すごく不思議。
でもね、あたしね、わかっちゃった。
これ、ただのぬいぐるみじゃない。
これ、パパなんだもん。
ねっ?
ぬいぐるみの中にいるの、パパでしょ?
2008/11/11
生きるために
食べるとしても
食べるために
生きたくはない。
君のために
生きるとしても
君のために
死にたくはない。
2008/11/10
男の子がふたり左右に立っている。
どちらも見覚えがあるのに
どこの子だったか思い出せない。
一本の長いなわがふたりを結んでいる。
なわの両端はしっかりと握られ、
ふたりはなわを振りまわし始める。
なわの軌跡は大きな目のように見える。
それが目なら瞳がありそうな気がする。
きれいな瞳なら嬉しいのだけれど。
どこからか女の子がやってきて、
ひょいとジャンプして、なわの目の中に入る。
スカートが蝶のように舞う。
カラスの翼のように黒い髪が揺れる。
なわの目の中に、かわいらしい瞳ができた。
僕が瞬きすると、彼女も瞬きする。
「郵便屋さん、おはいんなさい」
そうだった。
配達の途中なのだった。
2008/11/09
なんだろ
こけもも
よくわかんない
スカート制服の高校生女子が
うんと
学校と世間との境界を象徴する鉄柵を
乗り越えようとする姿勢で
ほら
きらめく朝日を
うなじと横顔に浴びながら
日に焼けた片足を大胆に伸ばす
と
煉瓦通りの歩行者としては
首かしげ
なにがいったい彼女をそうさせるのか
いくら
いくら考えてもわからないので
わからないのは
今の時刻の意味が
遅刻を表現していない
ということで
すでに正門は開いているし
怖そうな
見張りも番人も監視員も教師もいない
いないいないババアもいない
けど
可能なことはいつか誰か
きっと
実行してしまうものだから
かもね
で
なにを言いたいのかというと
一瞬
なにもかも忘れて泥んこになって
夢中になって遊んでいた
子どもの頃の
気分の
あの気分を思い出してしまって
つとと
頬に涙が伝わるのが不思議で
本当に本当に
不思議だから
うん
2008/11/09
トタン屋根の雨音は
坊やの好きな子守唄
子宮の鼓動
古代の海に溺れてごらん
潮騒は遠すぎて
耳の貝殻 信じない
ねじれて笑う
脱ぎ捨てたパジャマ
窓を開けたら
みんな一緒 雨のひとしずく
ざあざあ 楽しそうに
頭から 地面へ落ちてゆく
雨があがると
近所の子どもら 泥遊び
かわいらしい墓地のある
泥の町が さあできた
2008/11/08
泥と呼ばれ
泥のような暮らしを続ける
その女は 今
泥の床にすわり
泥の床になみだする
暗い部屋の入口
樹のように痩せた男は
なすすべもなく
樹のように立ちつくし
樹のように見下ろすばかり
時の屍
鐘の音さえ届かず
永遠に救われぬ
ふたつの影
泥はさびしく
樹はかなしい