1万8000人の登録クリエイターからお気に入りの作家を検索することができます。
2016/10/18
暗いオフィスの狭い一室である。
中央にデスクが寄せ集められ
その上にコンロがいくつか置かれ
丸底の黒い鉄鍋が火にかけられている。
すぐに湯を沸かす必要が先ほどまであったはずだが
なぜか今、おいしそうな鍋料理を煮ている。
デスクに座った数人の従業員たちは呆れ顔だ。
もうひとつ土鍋もあったので
水を入れ、別のコンロで温め始める。
階下からアルミ鍋を持って先輩社員が現れた。
「すまん。ちょっと使わせてよ」
そのままコンロに点火して手持ちの鍋を置く。
階下の部屋にはコンロがないのだが
どうしても貧しさを感じてしまう。
電気保温ポットが故障しているとしても
湯沸しより急がれる仕事がないのだろうか。
そろそろ土鍋の湯を使いたいのだが
取っ手が熱くて素手では持ち上げにくい。
隣室に入り、手頃なものはないかと探す。
使われることなく、誇りをかぶったデスクの群。
殺伐とした広い室内には誰もいない。
ゴーストタウンを連想させる。
粗品の社名入りタオルを見つけたところで
後輩社員が土鍋を素手で持って現れた。
「手、熱くないの?」
「平気です」
かなり無理しているような気がする。
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/17
集め、組み合わせ、分類し
選び、使い、提示する。
これではない。
あれでもない。
ほのかな想い
形となーれ。
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/16
明日になれば
今日が昨日であるごとく
今 この瞬間は
現在であると同時に 過去未来。
また ここはここ、
ここはあそこでなけれども
もし ここがここでなかりせば
ここはあそこで あそこ ここ。
すなわち なべて時空
意識のありよう次第なり。
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/15
真夜中、細かい作業に疲れ
立ち上がり、窓を開け
ひとり ベランダに出て
深呼吸していたら
つい うっかり
夜空を飲み込んでしまった。
ああ、驚いた。
まったく
うっかりにも 程がある。
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/14
朝の通勤電車で痴漢しようとしていたら
逆にOLに痴漢されてしまった。
「あ、あの、それは、ちょっと」
「ふん。攻撃は最大の防御よ」
よく見たら、見覚えがある。
三日ほど前に痴漢した女だった。
「ま、まさか。あっ、そこは」
「どう? される者の気持ちがわかったでしょ」
今のところ、まだよくわからないのだが
彼女の気持ちはわかった。
どうやら正当防衛のつもりらしい。
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/13
そろって若く美しい四人の姉妹があった。
両親は飛行機事故で亡くなり
彼女たちには莫大な遺産が残された。
豪華客船に乗って世界一周の旅の途中
あるハンサムな男が姉妹に近づいた。
この男、じつは結婚詐欺師。
密かに四人それぞれと恋人になり
密かに四人それぞれから依頼を受けた。
「誰でもいいから、妹のひとりを殺して」
「妹でも姉でもいいから、ひとりを殺して」
「姉でも妹でもいいから、ひとりを殺して」
「誰でもいいから、姉のひとりを殺して」
男は途方に暮れてしまった。
仲の良さそうに見える姉妹なのに
じつは互いに憎しみ合っていたのだ。
その理由を男が尋ねてみると
彼女たちの返事はそろって同じだった。
「だって、四人だと多すぎるんだもん」
そうかもしれない、と男は思った。
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/12
他人から借りた傘を返す時に
どのようにすればいいでしょうか?
みたいな知人の問い合わせに対して
なんとか返答しようとしている夢を見て
人は理屈でなく気分で動くのだから
相手の気分に合わせれば良いでしょう。
みたいな話をしようかなと思っているうちに
途中で目が覚めてしまったんですけど
どうすればいいでしょうか?
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/11
猫をかぶろう
猫かぶろ
当方 左様なお話
まったく関心ございません
てな 顔してさ
頭隠して 尻も隠せば
見つからない
人相 風体
物腰 持ち物
所詮 見た目さ
世の中は
うまく かぶれば
苦労せぬ
だから かぶろう
猫かぶろ
他人の前では
猫かぶろ
かぶらにゃ 損々
てなもんだ
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/10
とりあえず
地球の重力圏を 飛び出そう。
何をするか は
それからだ。
ログインするとコメントを投稿できます。
2016/10/09
そういうことは
やってはいけなかったんだ。
許されるかと思っていたけど
そうではなかったんだ。
やり過ぎたのだ。
調子に乗り過ぎた。
怒られて、厳重注意。
もうできないのだ。
やめるしかない。
悪気はなかったんだけどな。
そうは思ってくれないのよね。
どうにも仕方ない。
はあ、残念。
ログインするとコメントを投稿できます。