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2008/10/24
あは えけけ
崩れてね ゆくんだよ
もりぶでん おしまいなんだ
砂のお城が ぽの波にね
さらさ らささら ささらささ
貝殻 耳たぶ うんずらけ
ぽら ぽとくとね だめなんだ
トンネル掘って うん トンネル通って
ごろごろだ もう倒れてる
けじたね うんとけじた
わかってなんか いないんだ きと
王様 死んだ
ぽら お后様も 死ぬよ
お姫様は んと これから殺す
ぱぴれぱれ 泣いてる
お姉ちゃん 笑ってる
舐めたら とけろな ちっちゃな水着
ビー玉 ころがて 兵隊 ころがて
うてな お船が 沈んで 沈んで
ぽら 砂のお城 崩れる
あは えけけ
2008/10/23
生きているクジラのように見えるが
じつはクジラ型潜水艦なのである。
潮を吹き、身をくねらせて泳ぐが
やはりクジラ型潜水艦なのである。
大空を飛行することもできるが
クジラらしくないから海中を泳ぐだけ。
潜望鏡もあるが、なかなか使えない。
やはりクジラに潜望鏡はいただけない。
とにかく、クジラ型潜水艦での生活は長い。
こいつに乗って七つの海を潜ったが
初めて乗艦したときは興奮したものだ。
おれも若くて、まだ駆け出しだったが
あの頃まだ、こいつも子クジラだった。
2008/10/22
なんと美しい宝石でしょう。
ほら、よくごらんなさい。
小さな魚が泳いでいますね。
石の中に閉じ込められた魚です。
もちろん生きています。
優雅な姿ではありませんか。
もっとよくごらんなさい。
この魚の眼は石なのです。
美しいではありませんか。
これより美しい石ですか?
さらによくごらんなさい。
石の中の魚の石の眼の奥。
あなたの瞳が映りますね。
その石のように冷たい瞳。
2008/10/21
たとえば
鍵があって
扉がある。
または
弓矢があって
的がある。
でも
合わなかったり
はずれたり。
2008/10/21
異臭漂う危険な丘の上では
ドラム缶から黄色い液が流れ
錆びたボルト草にナットの花が咲く
六本足のネズミが笑っている横では
病気持ちの浮浪者が眠っている
潰れた車体から白い足をはみ出して
いかれた歌を口ずさんでいるのは
家を出たばかりの家出少女
なんだか あたし
猫に蹴られて 死にたいな
とっても あたし
猫に蹴られて 死にたいな
2008/10/20
ガラス瓶に占領された部屋の中で
男はガラス瓶を眺めて暮らしている。
ガラス瓶の中には
様々な美女が入っている。
好みの美女を街角で見つけると
男は卑怯な手段で部屋に連れ込み、
眠らせて無理やりガラス瓶に詰め込むのだ。
囚われの美女たちにプライバシーはない。
充血した男の眼から逃れることはできない。
ときどきガラス瓶の首をつまんで振ったり、
気が向けば逆さにしたり、
空中に放り投げたりもする。
美女たちが泣くと
男はガラス瓶に耳を押し当てる。
溜まった涙で溺れそうな幼女もいる。
死んだふりしてる少女もいる。
諦めて笑ってる女もいる。
彼女たちがいつまでも若々しく見えるのは
おそらくガラス瓶の口にしっかりと
コルク栓がはまっているからだろう。
2008/10/19
昔、この沼に一匹の亀がいた。
沼から出たことのない臆病な亀は
頭さえ滅多に甲羅から出さなかった。
蛇が首に巻きついたことがあって以来
首を伸ばすことができなくなったのだ。
ほとんど動かないため
亀の甲羅に苔が生えてきた。
茸が生え、
やがて草まで生えてきた。
緑に覆われ、
甲羅の下から根が伸び、
ついには水面に浮かぶようになった。
そして、そのまま
風に吹かれて漂うのだった。
ここが亀沼と呼ばれ、
浮き島があるのは
つまり
そういうわけなのだ。
2008/10/19
夢中になって交尾をしていたら
彼女に頭を切り落とされてしまった。
うっかりしていた。
彼女の両腕は鎌になっていたのだ。
彼女は落ちた頭を拾い上げ、
わざと僕に見せつけるように
眉間にシワを寄せて食べ始める。
途端に僕は悲しくなる。
もっとうまそうに食べてくれても
いいじゃないか。
僕の頭が泣いている。
だから彼女が喜んでいる。
それでも僕は、交尾をやめないのだ。
やめられない、と言うべきか。
2008/10/18
なにしてるの?
なんにも 風に吹かれているだけ
それだけ?
うん それだけ
どんな感じ?
なかなかいい感じだよ
ふうん
君 どこから来たの?
あっちから
どこへいくの?
こっちかな
ねえ
なあに?
君ってさ
うん
まるで風みたいだよ
ふうん
2008/10/18
いつの間にか僕は牛になっている。
好かれている僕がなにもしないから
彼女を泣かせてしまったという理由で
クラスの女の子たちが僕を取り囲み
縫い針を手にして僕の体を刺している。
チクチクするような痒みを感じるけれど
それらしい痛みはほとんど感じない。
他人の痛みどころか自分の痛みさえ
もう僕は感じなくなっているのだ。
取り囲む有刺鉄線の柵の杭の一本が
僕が本当に好きな女の子だったから。
どのように開放されたか記憶にないが
おそらく囲いを破って逃げたのだろう。
以上、情けない囲い牛だった僕の話。