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2016/09/18
神はいるか?
いるかもしれない。いないかも。
奇跡が起これば?
とりあえず、いるとしようか。
とりあえずだと?
そうだ。
どういうことだ?
たとえば、この世界に神はいるとする。
うん。
ところが、別の世界にはいないかもしれない。
別の世界とは?
この世界とは無関係な世界さ。
それは空想だ。
空想と決めつける根拠はあるのか?
この世界と無関係な世界の根拠はこの世界にない。
しかし、別の世界がないとは言えまい。
もてあそんでいるだけだ。
何を? 世界を? それとも論理を?
両方だ。
ならば、私こそ、神そのものではないのか?
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2016/09/17
研究所は森の中、危険に満ちた森の中。
森には研究所から逃げた実験生物が大繁殖。
たとえば、毒蛇の尾を振るライオンは
尻を噛まれないかと猛獣自身が怯えてる。
食衣植物に襲われ、靴や服を食われると
皮膚を舐めるキノコやナメクジが寄ってくる。
皮膚が消えると、血を吸い肉を齧る虫が集まってくる。
骨を好む魚まで這ってくるから、何も残らない。
森の外は砂漠、いにしえの都市の残骸。
放射能と各種有害物質でできている。
森の外に出たら死ぬしかない。
当初の目的は不明であるが、現在の所員たちは
研究所の外、森の中で生きる方法について研究中である。
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2016/09/16
ふと思い出した。
それは遠い昔に夢で見たかもしれない
というほどの、ほんのかすかな記憶なのだ。
断崖絶壁にある洞窟居住地。
鍾乳洞のような自然の空洞を利用したものらしい。
壁面にあいた穴を窓として見える正面の風景は
こちら側と同じような形状の穴だらけの断崖絶壁。
その隙間は、上も下も霞んで見えないほど高く深い。
たとえるなら、いびつで巨大な先史時代のマンモス団地か。
アリの巣を連想させる洞窟内で出会う半裸の住民は
人間に似ているが、どことなく違う。
その若者は考えていた。
鳥のように空中を飛べないものか、と。
そうすれば、向こう側へ行ける。
向こう側には、時折り見かける気になる少女がいる。
翼のようなものを両腕に付けたらどうだろう。
しかし、その考えは古老らが否定する。
飛べずに落下して二度と帰らぬ者たちを知っているから。
しかし、若者は諦めきれない。
なんとか工夫して・・・・
物語は続くが、その先はどうも思い出せない。
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2016/09/15
見えないことが問題ではない。
ずっと昔、決断してしまったのだ。
見えなくなってもいい、と。
深海魚だって同じ決断をした。
そんなことはどうでもいいのだ、今さら。
問題は地中生活が難しくなったこと。
どうにも掘れないような硬い土が増えた。
そのため獲物が極端に減った。
路頭に迷うとはこのこと。
唇もないのに、唇がさびしい。
まったくもって、さびしいばかり。
土の中で餓死しても、誰も気づくまい。
ひっそり柔らかい土になるだけだ。
ああ、空腹で目まいがしてきた。
ほとんど見えないのに不思議なこと。
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2016/09/14
六月の風は
うちに入れよ
梅雨になる前の 晴れた日の
あの六月の風は
レースのカーテンやらで
人目さえぎるにせよ
窓を開け放ち
しっかりと うちに入れよ
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2016/09/13
僕はいつもの帰り道を通れない。
びっくりするくらい大きなカンガルーが
曲がり角のところで待ち伏せしてるはずだから。
おそらく野良ではなく、飼いカンガルーだろう。
なぜなら、両手にボクシングのグローブをはめている。
それでも、あんなに大きくなると、さすがに怖い。
しかも、必ずスパーリングを求めてくる。
僕の見た目が弱そうに見えるのか、強そうに見えるのか
なぜか僕をパートナーとして気に入ったようなのだ。
もちろん僕は、いかれたカンガルーの相手なんかしたくない。
ボクシングは見るものであって、するもんじゃない。
それで僕は、越えなくてもいい線路を越えたりして
わざわざ遠まわりして帰宅することになる。
カンガルーの語源は「わからない」という意味ではないそうだが
あいつらの考えていること、ホントわからない。
(画像:Robert Hoge)
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2016/09/12
朝まだき
眠りもならず 起きもせず
うつらうつらと まどろめば
ざわざわ ざわわ
ざわざわと
頭ん中に クモの這う
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2016/09/11
往来を歩いていると
刀の鞘を足蹴にされた。
「無礼者!」と斬り捨てようとしたら
武士の魂たる刀がなかった。
鞘の中身は竹光である。
魂なき入れ物だけ飾っておれば
侮辱されるは武士として当然の報い。
そもそも斬り捨てようがない。
食うに困って質に入れ
そのまま流してしまったのだな。
これでは武士とも呼べないか。
武士は食わねど高楊枝。
武士が食ったら豚になる。
ブーブー
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2016/09/10
ひょいとサルが顔を出す。
「わあ、なんだなんだ。あっちへ行け。
おれはサルなんぞに用はない」
「ウキキキキ」
さすがサル。恥ずかしげもなく、定型的な笑いを笑う。
「黙れ。歯ぐきをむき出して笑うな。
とぼけて頭に手を置くな。猿真似すんな」
しかし所詮、サルはサル。
なにを言っても無駄なのだ。
「ウッキ ウッキ ウキウキ ウッキ」
どこかで聞いた節で、どこかで見た踊りを踊る。
やれやれ。やっぱ、サルだ。
去らぬなら、無視するしかあるまい。
「ウッキッキ」
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2016/09/09
たてがみが燃えるのではない
燃えあがる炎が
ライオンのたてがみなのだ
駆け抜ける草原さえ 燃えている
灼熱の太陽から降り注ぐ 火の雨
雨宿りできる安息の木陰は どこにもない
黒煙を噴きあげ
燃えながら流れる 油の川
涙の川なら
手足縛ってでも 溺れてみたい
赤き血の川なら
裸になって 泳いでやる
ああ 喉が焦げる
心臓が焼けただれる
燃えに燃え
すべてが灰になってしまう
なにも残らない
一本の骨 ひとつの言葉すら
ああ 限界だ
もう我慢できない
あの燃えるライオンに今 喰われたい
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