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2013/09/15
渡り鳥が飛んでゆく
南の空へ
二羽
三羽
四羽
渡り鳥が飛んでゆく
北の空へ
一羽
一羽
一羽
2013/09/13
おじいさまからいただいた
水晶玉。
それを汚し
それを傷つけ
それを割れば
世界が汚れ
世界が傷つき
世界が割れてしまう。
なんということ!
目覚めたら
どこにもない。
いったい誰が
水晶玉を盗んだの?
ああ、
もう信じられない。
こんなに私の肌は
汚れてしまった。
あんなに野原は
傷ついて
ああ、
もう空が割れ始めている!
2013/09/11
君に
本物の雪を
見せてやりたい。
真っ白な
シュークリームみたいな
大きな大きな
わた雪が
ふわふわ
ふわふわ
落ちてくるところを
君に
ちゃんと
見せてやりたい。
あの六角形の
アクセサリーみたいな
雪の結晶が
そのまま
ふらふら
ふらふら
落ちてくるところを
君に
しっかり
見せてやりたい。
2013/09/09
シャボン玉はきれい
美しい球体
ゆれる虹色模様
宇宙の神秘が
見え隠れする
ドウシテコンナニキレイナノ?
シャボン玉は軽いけど
空気よりは重い
高く浮き上がることなく
すぐに割れてしまう
まあ しかし
シャボン玉だから
しかたない
いつまでも割れなかったら
迷惑だし
2013/09/07
いい眺めだ。
それはそうであろう。
そうでなければならんのだ。
この崇高なる象牙の塔を築くだけのため
罪なき幾億幾万幾千もの象が
犠牲になったのだから
代償もなく。
2013/09/04
いびつな形に縛られて
その肉太の
朱筆の責めの鋭さよ。
「ああ、なりませぬ」
是非もなし。
転がされ
揉まれ、落とされ
踏み潰されて
大粒なみだ
こぼれます。
「泣くとは笑止。
笑止の障子の鎖鎌!」
ガマの鳴き声
凄まじく
帰る家などありゃしない。
十字架、念仏、真の闇。
2013/09/03
どこから入って来るのだろう。
いくら調べてもわからないが
なぜか家の中に虫がいるのである。
それも、うんざりするほどいる。
窓から外へ捨てても
指先やスリッパでつぷしても
それこそ息苦しくなるくらい
殺虫剤を撒き散らしても
いつの問にか家の中が
虫だらけになっているのである。
虫が食べるのか、部屋の柱が細くなり、
床板は曲がり、歩くといやな音を立てる。
家が傾き、窓やドアが開かなくなり、
壁に穴があき、服が破られ、噛みつかれる。
だから、夜中に娘が泣いていたりする。
今朝など、死ぬほど驚いた。
あまりの不快感に目を覚ますと
口の中に虫が巣を作っていたのだった。
2013/09/01
静脈と動脈の絡む積乱雲。
骨と産業廃棄物よりなる灰色の砂漠。
巨大なムカデを連想させる流民の群。
その頭と尻尾は砂塵に霞む。
ありとあらゆる人種の肌が重なり、
ありとあらゆる民族の顔が交わる。
痛みを伴い、歩みは重く、
目は虚ろ、悲しみは深い。
「だめ。そっちへ行っちゃ、だめ」
かすかに少女の声がする。
しかし、その声は
蜃気楼のように遠く近く
誰の耳にも届きはしない。
はがれ落ちた無数の鼓膜が焼けている。