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    Works 3,356
  • 鞭の音

    2011/08/30

    変な詩

    ああ 鞭のくれ方 わかんない
     猛獣使いじゃ ないんだもん

       だから おじさん 吠えないで


    バシッ! バシッ! バシッ!
     ほらほら こんなに ミミズ腫れ

    ビシッ! ビシッ! ビシッ!
     まあまあ どんどん 血が出るわ

    ブシッ! ブシッ! ブシッ!
     あらあら 骨まで 見えてきた

    ベシッ! ベシッ! ベシッ!
     あれあれ とんでも ないことに

    ボシッ! ボシッ! ボシッ!
     うわうわ なんだか わかんない


    ああ 鞭の音が たまんない
     猛獣だったら 怖いけど

       だから おじさん 吠えないで
     

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  • 撃つぞ

    2011/08/29

    愉快な話

    おい、待て。止まれ。こら、逃げたら撃つぞ。
    よしよし、動くなよ。死に急ぐことはない。

    何者だ、おまえは。ふん、言いたくないのか。
    その自信はどこから来る。ここか。ここか。

    まだ言いたくないか。そらそら、これでもか。
    ほほう、たいしたもんだ。ちょっと見直したよ。

    まあいい。何者でも関係ない。とにかくだ。
    おまえ、何をしていたんだ。こんなところで。

    いいか。ここには黙秘権なんかないからな。
    なにを教わってきたか知らないが、忘れろ。

    ほれ、どうだ。喋りたくなってきたろうが。
    やれやれ、なんて奴だ。まったく、疲れるよ。

    しかたない。面倒臭いから撃ち殺してやる。
    いまさら命乞いなんかしても、手遅れだぞ。

    恨むなよ。おまえが逃げようとするからだ。
    ちょっと道を尋ねようとして、悪かったな。
     

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    • Tome館長

      2014/08/24 05:50

      「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2012/12/29 02:41

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 夜の三つ編み

    2011/08/27

    暗い詩

    真夜中に
    女が髪を編んでいる


      憂鬱と軽蔑と恥じらいと
      憂鬱と軽蔑と恥じらいと
      憂鬱と軽蔑と恥じらいと


    夜の三つ編み
    ほどけない

    ほどけない
    夜の三つ編み
     

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  • 夜の隙間

    夜が始まって夜が終わるまでのどこかで
    彼女は跡形もなく消えてしまった。

    すうっと音もなく切り開いた夜の隙間から
    するりと音もなく抜け出たかのように。


    「逃げたのではなく、隣の部屋に移動しただけ」

    そう言わんばかりの鮮やかな手口。
    彼女に見えて僕には見えない出口。


    酔いたくなる夜にふと探してしまうけど、
    見つからないことはとうにわかっている。

    わかっていてもやめられない。


    そんな夜だってあるさ。
     

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  • 糸電話

    「もしもし、きこえますか?」
    「もしもし、きこえますよ」

    幼い兄弟が糸電話で遊んでいる。

    「いま、なにしてますか?」
    「でんわでおしゃべりしてます」

    「それはえらいですね」
    「どういたしまして」

    たわいない会話である。

    「そちらはどこにいますか?」
    「こちらはここにいます」

    「こちらもここにいますよ」
    「それはえらいですね」

    「奥さん。旦那には内緒だぜ」

    「なんですか、これは?」
    「なんですかね、これは?」

    「へんなこえでしたね」
    「いやらしいこえでしたね」

    「たぶん、こんせんですね」
    「それはえらいですね」
     

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    • Tome館長

      2014/06/14 02:05

      「ゆっくり生きる」はるさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2011/12/19 16:38

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • あべこべの世界

    2011/08/24

    変な話

    あべこべの世界、なかなか簡単ではない。


    「愛しているから、あなたを抱けないの」
    突然、恋人があべこべの人になった。

    「でも、抱きたいの。だから、殺すの」
    そんなふうに説明されても理解できない。

    死にたくないので彼女から逃げた。
    拾った石を手に彼女が追いかけてきた。

    「逃げるから追いたくなるのよ」
    彼女が叫ぶ。

    痛い。
    肩に石が当たった。

    彼女は正しい。
    立ち止まるしかない。

    彼女は追いつき、そのまま追い越す。

    さらに走り続ける。
    小さくなる後姿。

    やがて、はるか前方の壁にぶつかった。

    痛々しい音がした。
    恋人は倒れるはず。

    ところが、倒れたのは壁の方だった。


    あべこべの世界、なかなか簡単ではない。
     

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  • 駅のアナウンス

    2011/08/23

    愉快な話

    駅のホームで電車を待っていた。
    どこか遠くへ私は行くつもりだった。


    やがて、合図のチャイムが鳴った。

    「お待たせしました。まもなく2番線に」
    さわやかなアナウンスの声。

    「目玉焼きがまいります!」


    到着したのは、大きな目玉焼きだった。
    恐竜の卵かな、と思うほど大きかった。

    だが、こんなものに乗るわけにはいかない。

    やはり目玉焼きは食べ物なのだ。
    たとえ食べる気になれないとしても。


    残念だが、次の電車を待つしかない。
    ラッシュアワーでなくて、本当に良かった。


    再びアナウンスがあった。

    「お待たせしました。まもなく2番線に」
    見ると、腕時計の針が曲がっていた。

    「原始人がまいります!」


    その到着を待たず、
    私は諦めて家に帰ることにした。
     

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  • 真夜中の遊園地

    2011/08/22

    怖い話

     
    皆様にお知らせいたします。
    当遊園地はまもなく閉園時間となります。


    出口が見つからないお客様は、

    閉園時間を過ぎますと
    永遠に出られなくなる可能性がございますので、

    くれぐれもご注意ください。


    と申しますのも、

    真夜中の遊園地は大変楽しいのですが、
    それに比例して非常に危険な時空となるからです。


    観覧車は輪廻を繰り返しますし、
    コーヒーカップには本物の熱いコーヒーが注がれます。

    回転木馬は三角木馬になってしまい、
    ジェットコースターは銀河鉄道に連絡いたします。

    また、エクトプラズム・パレードをご覧になりますと、
    まれに魂が離脱するお客様がございます。


    さらに、幽霊屋敷は本物になりますので
    気の弱い方は決して近づかないでください。

    もっとも屋敷から出てきたら逃げようがありませんが・・・・・・


    あっ、もう時間ですね。

    門が閉まりましたら、運命と諦めてください。
    明日の開園時間まで爆弾が落ちても開くことはありません。


    それでは、またのお越しをお待ちしております。
    本日のご来園、まことにありがとうございました。
     

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    • Tome館長

      2011/08/22 10:08

      「さとる文庫」もぐらさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2011/08/22 10:03

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 門 番

    2011/08/20

    変な話

     
    それはそれは立派な門であった。

    絵にも描けないほど立派だった。
    つい入ってみたくなるのだった。


    「いらっしゃいませ」

    高過ぎず低過ぎず、
    じつに感じの良い声だった。

    「お待ちしておりました」

    おそらく門番とでも呼ぶのだろう。

    その男に家まで案内された。


    意外に狭い庭である。
    家も小さかった。

    玄関を抜け、居間らしき部屋に入り、
    そこで主人と対面した。

    「つい入ってしまいました」
    「そうでしょう、そうでしょう」

    この主人とは初対面であった。

    「私を待っていたそうですが」
    「話し相手が欲しくてね」

    幸せそうな笑顔の老人である。

    「それにしても、立派な門ですね」
    「そうでしょう、そうでしょう」

    「不思議な門と言いますか」

    老人の笑顔はそのままであった。

    「あれは、あとで建てたんですよ」
    「あと、と言いますと?」

    「あの門番を雇ったあとですよ」

    そう言えば、好感の持てる男だった。

    「なるほど。確かに立派な門番でしたね」
    「そうでしょう、そうでしょう」

    「そうですね、そうですね」


    もうなにも話すことがないのだった。
     

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  • ヘグナムシ

    2011/08/19

    愉快な話

     
    あやしげな物を売るあやしげな店で、
    あやしげな店主が教えてくれた。

    「この水槽の中にヘグナムシがいるのです」

    それを聞いて驚かないわけにいかない。


    外に待たせていた連れを急いで呼んだ。
    連れは正体不明のあやしい虫である。

    「なんだい?」

    小さな虫だが、しっかり言葉を話せる。


    「この水槽の中に入ってごらん」

    連れの虫は素直に水槽の中に入ると、
    なんの疑いもなく水面を泳ぎまわる。

    少し頭が足りないのだ。

    「これがどうかしたの?」


    突然、水面から胴長の生物が跳ねると、
    その大きな口で連れの虫を捕らえた。

    「なんだなんだなんだ!」

    連れの虫はひどく騒いだ。
    まあ、当然の反応ではあるけれど。


    ヘグナムシは一気に飲み込めないらしく、
    すぐに連れの虫を吐き出した。

    「なんだなんだなんだ!」


    逃げまわる連れの虫に教えてやる。

    「それ、ヘグナムシなんだって」

    連れの虫は水面に立ち止まる。

    「なに、ヘグナムシ?」

    そのため、性懲りもなく
    再び大きな口に捕らえられてしまった。


    「ああ、とっても気持ち好い!」

    そんな強がりを言うのだった。
     

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