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2008/07/08
ある山の麓に泉があった。
ただの泉ではなかった。
湧き出る水を飲めばどんな病気でも治る。
そういわれていた。
仙人も山から飲みにおりてくる。
そんな言い伝えさえあるほどだった。
「けほん、けほん、けほん」
ある晩、山の仙女が麓までおりてきた。
「あーあ、霞が喉に詰まっちゃった」
美しい横顔を月の光が照らしていた。
それを見てしまったのが、村の若者。
「ああ、仙女様。おらの嫁さなっておくれ」
曇ったしわを眉間に寄せ、真剣な表情。
そう、若者は恋に落ちてしまったのだ。
仙女は、泉の水を手にすくって飲んだ。
それから、にっこりと微笑むと、
村の若者にもすすめた。
若者はおそるおそる仙女に近づき、
その白い手を器にして泉の水を飲んだ。
すると、若者の表情は晴れやかになった。
「ああ、仙女様。おら、嫁なんぞいらねえよ」
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2011/07/09 03:31
「こえ部」で朗読していただきました!
2011/01/24 14:02
AA(アスキーアート)にしていただきました!
AAなにっき
2011/01/24 13:44
朗読していただきました!
「しゃべりたいむ」かおりサン
2010/08/24 01:24
ケロログ「山猫亭奇譚」の山猫亭銀猫さんに頼み込んで朗読していただきました。
「ああ、銀猫様。おら、感激ですだ!」
2008/08/01 23:42
小説現代「ショートショートの広場」にて、生前の星新一氏に認められた、最初の入選作品。
掲載された雑誌を読んだ時、震えるくらい嬉しかった。
2008/07/07
ふたりなかよし
いつもいっしょ
おててつないで
チョウみたい
はねをパタパタ
ひらいてとじる
2008/07/07
撫でられたら 嬉しい
やさしくなくても 平気
爪を立てられても 我慢する
それが あなたなら
あなたが したいなら
転がされても いい
どこまでも どこまでも
喜んで 転がってあげる
あなたが 追いかけてくれるなら
あなたが 笑ってくれるなら
放り投げても かまわない
泥がついても 泣いたりしない
そんなことで 泣いたりしない
あなたが わたしのこと
おぼえていて くれるなら
2008/07/06
撫でし子の
噂 桔梗や
女郎花
買うや 買わぬの 藤袴
萩て
葛れて
尾花かな
2008/07/06
透明なグラス越し
表面張力の水面越しに
涼しそうに花弁を開いて
いったいなにを期待してるの?
ひんやり冷たい水の中
風に吹かれて揺れもせず
蝶や蜂に触れさせもせず
ただ黙って咲いてるだけなの?
けれどやっぱり
なんにも答えてくれない
水中花
2008/07/06
あなたはまるでそこにいないみたいに
わたしの目の前にいないみたいに
あなたは本当にいないみたい
いったいどこへ行ってしまったのと
わたしが尋ねるかもしれないと
あなたは予感したのかしら
かしらかしらかしらかしらかしら
リフレインとよぶのかしら
こんな耳 捨てようかな
かなかなかなかなかな
2008/07/05
いま
わたしはここにいます。
そう
わたしはここにいるのです。
でも
あなたはここにいません。
そう
あなたはここにいないのです。
2008/07/05
やめておくれと
その手をのけりゃ
ほんにやめちゃう
いやな奴
ふたりあそこで
別れたとても
どうせ濡れてよ
通り雨
手さえにぎらず
つれない素振り
ゆうべしたこと
忘れたの
ぽたぽたぽたと
しずくが落ちる
なみだにしては
ちと赤い
2008/07/05
湖に浮かんでいたら
雪が降ってきちゃった
白くて
ふわふわしていて
夢みたいで
とってもきれいだった
あんなに濁った空
なのに
こんなに白い雪
湖に浮かんでいても
あったかいよ
2008/07/04
光の雪が おりてくる
光の雪が おりてくる
冷たくもなく
温かくもない
そんな 光の雪が
君の肩に 降りつもる
きらきら さらさら
光の雪が 降りつもる