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  • リンゴ頭

    2016/06/20

    変な詩

    頭の中がリンゴです 

    なんにも考えられません 

     

    だから 品種は不明です 

    メロンでないとも限りません 

     

    腹の中はバナナかスイカ

    野菜と果物 どちらかな

     

    胸はブドウ 尻はモモ 

    脚はダイコン 腕ゴボウ

     

    そんなもんです 

    だいたいは 

     

    細かいことは気にしません

     

    だって ほら 

    頭の中がリンゴだもん

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  • キカキカ

    2016/06/19

    愉快な話

    恐れていた状況は補助線とともに出現した。

    「キカキカが来た!」

     

    大きい。

    コンパスと定規だけでは太刀打ちできそうもない。

     

    「三角屋敷の長老を呼べ」

    円周に接するように伝令が走った。

     

    キカキカは容赦なかった。

    瞬く間に村は記号だらけにされてしまった。

     

    さらに、とんでもない場所に垂線を下すと 

    次々と合同条件を吐き出す。

     

    あまりの光景に、ウブな村娘がバタバタ倒れた。

    血の気の多い若い衆も頭を痛めた。

     

    「キカキカを見てはいかん!」

    公理に乗って運ばれてきた長老が叫ぶ。

     

    「あんなもん、なんの役にも立たん」

    いかにも、と村の古老たちがうなずく。

     

    キカキカは怒った。

    長老を踏みつぶすつもりだ。

     

    「愚か者め」

    長老は懐から消しゴムを取り出した。

     

     

    以上である。

     

    キカキカが長老に消されてしまったことは 

    今さら証明するまでもあるまい。

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  • 礼拝堂

    2016/06/18

    ひどい話

    「心静かに祈りなさい」

     

    天井には大きな穴があいていた。

    まるで星に祈るような気分。

     

    「隠すことなく、純真な気持ちで」

     

    女は肌を隠していないか。

    司祭は金貨を隠していないか。

     

    私にはわからない、

    何を祈ればいいのか。

     

    突然、荒々しく扉が開いた。

    「強盗だ。神を恐れはせぬ」

     

    わかったような気がした、

    何を祈ればいいのか。

     

    しかし、祈ってる場合ではないな。

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  • それでいいのだ

    2016/06/17

    論 説

    誰しも程度の差こそあれ 

    わかることとわからないことがある。

     

    この場合、わかることとは 

    本人がわかっていると思っていること。

     

    その必要さえなければ 

    他人に説明できずともかまわない。

     

    また、わからないこととは 

    本人がわかっていると思えないこと。

     

    そのうちわかってくるかもしれないが 

    それまでまともな説明はできまい。

     

    だから、物事の説明は二の次でいいのだ。

    定義や証明が常に必要とは限らない。

     

    おおむね本人さえわかっているなら 

    おおむねそれでいいのだ。

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  • 奴隷として

    2016/06/16

    ひどい話

    お后様、お許しください。
    卑しき奴隷の身で失礼いたします。

    美しいお后様のたおやかなる寝姿を見下ろすとは
    奴隷として言語道断でございます。

    しかしながら、お后様。
    たった今、麗しくお目覚めになられましたお后様。

    すでに国王陛下はお亡くなりになられました。

    つまり、暗殺されたのです。
    忌まわしき我ら奴隷どもの反乱によって。

    ええ、そうです。
    この卑しき奴隷の手が王位を奪ったのです。

    ですから、お后様。
    おそれ多くも賢くも、お后様。

    もはやお后様はお后様ではありません。
    立場が変わってしまったのです。

    まもなく奴隷として辱められることでしょう。
    かつて奴隷だった者の手によって。

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  • 鎧武者

    2016/06/15

    怖い話

    武士たちに騙されていたことに 

    やっと農民たちは気づいたようだ。

     

    手間暇かけて収穫した作物を 

    まんまと奴らに奪われてしまうのだ。

     

    さすがに農民たちは怒った。

    死ぬとしても、反抗せねば生きていけない。

     

    それぞれ石や薪や農具で武士に襲いかかる。

    が、武器を持った武士に敵うはずがない。

     

    髭面の鎧武者が太刀を振り上げる。

    「おまえら、決して生かしておくものか」

     

    逃げなければいけない。そう思う。

    すると、おれは農民だったのか。

     

    恐ろしい形相の鎧武者に背を向けて逃げ出す。

    鎧の擦れる音が追かけてくる。

     

    農地の広がる屋外にいるはずなのに 

    なぜか世界が閉ざされているように感じる。

     

    まるで透明な壁に囲まれた立方体の部屋。

     

    目の前に透明な扉がある。

    そこにしか出口はない。

     

    だが、この扉を開ける前に 

    鎧武者に背後から斬られてしまうはずだ。

     

    そのような確信がある。

    どうしても救われる方法が浮かばない。

     

    死を覚悟する余裕もないというのに 

    たった今、扉に手が届いた。

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  • ゴミ屋敷

    2016/06/14

    ひどい話

    裏隣りの家の屋根の上にやたらと鳩が多い。

     

    鳴き声がうるさく、糞の被害も心配なので 

    ともかくその家へ問い合わせてみた。

     

    すると、餌を与えたり、飼っているわけではなく 

    なぜ集まるのか不思議であり、困っているとのこと。

     

    調べてみたら、原因は自宅を含むマンションにあった。

    4階にある空室のベランダが野鳩の巣になっていたのだ。

     

    いかん。このままにしてはおけない。

     

    早急に対応してもらうため 

    自主管理組合の理事長としてオーナーへ連絡した。

     

    ところが、困った返事。

     

    以前はオーナーの息子さんが住んでいたそうだが 

    その友人に貸したらゴミ屋敷にされてしまったとのこと。

     

    まったく手のつけようがないほどに。

     

     

    定期排水管清掃の時期に鍵を預かって室内に入ったら 

    それはそれは、じつに信じられない光景。

     

    とにかく、どこもかしこもゴミ袋だらけ。

    ゴミ入りポリ袋の白き峡谷の底を恐る恐る歩く感じ。

     

    敷きっぱなしの布団の上もゴミだらけ。

    まさに寝る場所もない(そりゃ出ていくわ)。

     

    六畳の洋間はゴミ袋だけで背の高さまで完全に埋まっていた。

    ゴミ箱ならぬ、ゴミ部屋である(アホか)。

     

    キッチンの床は濡れ、落ちていた硬貨が錆びていた。

    なぜ? なぜ、ここまで・・・・ 

     

     

    住人は地元の医科大学歯学部の学生だったそうである。 

    こんな歯科医に治療されたら、ゴミ歯だらけにされそう。

     

    排水管清掃の女性作業員が言う。

    「以前、女の人で、もっとひどいゴミ屋敷ありましたよ」

     

     

    結局、オーナーは業者に頼んでゴミを処分し 

    業者に頼んで室内を修繕し、業者に頼んで転売してしまった。

     

    このオーナーも夫婦そろって歯科医であった。

    息子さんも、おそらく歯科医になられたことであろう。

     

    近頃はコンビニより多いくらい増えて儲からなくなった 

    と噂される歯科医、おそるるべし。

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  • 格言らしき

    2016/06/13

    論 説

    人に問う前に まず己に問え 



    聞いて旨いは 食べて苦し 



    きれい事の裏に 汚れあり 



    いい人とやさしい人 扱いやすし 



    言う前にやれ 
    やった後に言うな 



    上手じゃつまらん 
    下手でないだけ 



    努力できるも才能 



    無駄な能力 無能に近し 



    道具を使えば道具に頼る 
    型に嵌れば型に頼る 



    格言 ことわざ 頼るなかれ

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  • 叫ばずにいられない

    2016/06/12

    変な話

    そこは岩場のある海岸のようであり 

    潮騒とも思えるざわめきがかすかに聞こえる。

     

    そこにあるそれは巨大な巻貝の抜け殻のようであり 

    入り口の穴にはヤドカリならずとも引かれるものがある。

     

    本能的とも呼べるその抗あらがいがたい誘惑に負け 

    私またはあなたは、この不思議な巻貝の穴に入り込む。

     

    私またはあなたは裸足のまま滑らかな通路を進む。

    通路の内壁には貝殻の内側のような光沢がある。

     

    大きな弧を描きながら曲がっているにもかかわらず 

    いつまでも通路が明るいのは内壁に光が反射するからだろう。

     

    そう。まるで光ファイバーの通路のように。

     

    それにしても、なかなか行き止まりにならない。

    また、通路の曲がり具合に変化は感じられない。

     

    つまり、蚊取り線香のように平面的な渦巻きではなく 

    やはり巻貝のように縦方向に螺旋を描いているのだろう。

     

    ただし、上っている感じも下っている感じもしない。

    それほど大きな直径または円周ということか。

     

    なんにせよ、いつまでも終わりがないのは困る。

    引き返す決断を下すきっかけが欲しい。

     

    あるいは、これは罠なのだろうか。

    入り込んだら抜け出せないネズミ捕りのような。

     

    私は不安になり、あなたは立ち止まる。

    私またはあなたは振り返る。

     

    真っ直ぐな道ではないのだから 

    まさか進行方向を間違えるはずはない。

     

    しかし、この不安な気持ちはなんだろう。

     

    ひょっとすると、私はあなたによって

    習慣的な思い込みを逆用されたのではなかろうか。

     

    または、あなたが私によって。 

     

    つまり、私にとって右へ曲がることは、すなわち 

    あなたにとって左へ曲がることを意味しないか。

     

    いやいや、待ってくれ。

    そもそも、その意味するところがわからない。

     

    私またはあなたは 

    いったい何を考えているのだろう。

     

    今更のように迷いが渦巻く。

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  • いかにも売店

    2016/06/11

    変な話

    あやしげな売店である。

    ありきたりなものは売らない。

     

    食品なら、たとえば半魚人の肉。

    衣類なら、たとえば天狗の隠れコート。

    文房具なら、たとえば書ける消しゴム。

    宝石なら、たとえば水星の水晶。

     

    貴重品なんだか冗談グッズなんだか 

    よくわからない。

     

    美しい人妻さえ売られている。

     

    ひとりで店番しているこの妙齢の女性、

    じつはこの店の商品でもある。

     

    なぜなら、その豊満な胸に「商品名:人妻」 

    ちゃんと値札も下がっている。

     

    ただし、恐ろしく高い。

    値引き交渉するのもためらわれるほど。

     

    ただの話題作りであろうか。

    いや、どうも本気のような気がする。

     

    なぜなら、この店そのものが売り物だから。

     

    出入り口の扉には貼り紙がある。

    「値段交渉によっては店ごと売ります」

     

    まさに売店。

     

    そういえば、注意してよく見ると 

    来店客の背中に値札シールが貼ってあったりする。

     

    悪質ないたずらだろうか。

    それとも、サービスだろうか。

     

    まあ、買い手と値段によっては 

    売られてもいいような気がしないこともない。

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