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2011/06/11
光のどけき春の日に
雨が降ります
雨が降る
涙の雨ではあるまいか
いえいえ あれは
狐の嫁入り
人に見せてはなりませぬ
見せてはならぬ
花嫁御陵
ほれ 虹が
2011/06/10
あのね、タカシくん」
「なーに? 先生」
「タカシくん、この問題とける?」
「えーと、ちょっと待って」
「待つわよ、タカシくん」
「うーん。難しいな」
「がんばってね、タカシくん」
「もしかして、反転するのかな」
「タカシくん、いけないわ」
「だって、ここが交点だもん」
「でもね、タカシくん。そこは」
「わかった! 角をニ等分するんだ」
「タカシくん、すごいわ」
「それから、この分母を求めて」
「そうよ。そこよ、タカシくん」
「エックスに代入すればいいんだ」
「すてき。すてきよ、タカシくん」
「どう? 先生」
「すごい、すごいわ。タカシくん」
「先生」
「タカシくん」
「先生!」
「あら、どうしたの? タカシくん」
「先生こそ、どうしたの?」
「なんでもなくてよ、タカシくん」
「先生、いつも僕の名を呼ぶんだね」
「いけないかしら、タカシくん」
「ううん。僕、うれしいけど」
「先生もよ、タカシくん」
2011/06/07
お願い。
聴かないで。
私の声を聴かないで。
ああ、やめて。
そんなに耳をそばだてないで。
とっても恥ずかしいの。
とってもとっても、恥ずかしいの。
でも・・・・・・
私、本当は聴いてもらいたい。
私の声、恥ずかしいけど、
あなたに聴いてもらいたい。
でも、聴かれたくない。
なのに、こんなに聴かせたい。
声って、いったいなんなの?
ああ、ダメだったら。
そんなに真剣に聴かないで。
なんにも言えなくなっちゃう。
なんにも・・・・・・
でも、違うの。
なにか違う。
そうよ。
私が伝えたいのは
声なんかじゃない。
聴こえない声。
声にならない声。
ねえ、あなた。
やっぱり聴いて。
お願いだから、聴いて。
私の心の声を、聴いて。
2011/06/05
おれは偽りのクリスチャン。
ここはパイプオルガン鳴り響く教会。
おれは深く頭を垂れ、
神に祈りを捧げるふりをしていた。
やがて沈黙が訪れ、
続いて声がした。
「不信心者よ。わたしを見よ」
見ると、それは神であった。
その姿の他はすべて闇であった。
「時の流れを止めた。ここには音も光も届かぬ」
「はあ」
「わたしはこれより最後の審判を下す」
「さようですか」
「しかし、おまえたちに最後のチャンスも与えよう」
「それは結構なことです」
「おまえ、最後の審判を下しなさい」
「意味がわからないのですが」
「おまえたちのひとりであるおまえに
おまえたちをまかせたのだ」
「なぜまたそんなことを」
「わたしが審判を下せばおまえたちは消える。
だから、せめてもの最後のチャンスなのだ」
「そういうことでしたら・・・・・・」
おれはつぶやいた。
「神はいない」
すると、世界はステンドグラスの光と
パイプオルガンの音で満たされた。
おれは深く頭を垂れ、
神に祈りを捧げるふりを
いつまでも続けた。
2011/06/04
もしも夏に
雪が降ったなら
それはきっと
涼しかろ
だけど雪は
夏に降っても
きっとすぐに
消えるだろ
夏に降る雪
きのふれた雪
2011/06/02
降る雨に
あわてて逃げ込む
軒下あれど
ふられる恋に
あたたかく迎える
胸はなし