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2011/03/28
火の鳥
私は不死鳥
いやでも死ねない
生きてゆくしかない
いろんなことがあったけど
いろんなことがあろうけれど
いつまでも終わりがないのなら
いっそ始めなければ良かったのに
そう思うのです
2011/03/26
助けてもらえる
と思わずに
赤子のように
甘えずに
嫌われたら
近寄らず
危ういなら
逃げるのみ
助けられたら
拝むとも
助けられずに
恨むなかれ
2011/03/25
箱の中の姫君は
お外のことがわからない
なにを見ても
箱の中
なにを聞いても
箱の中
箱の中とは
つゆ知らず
お外があるとも
知らないで
歌ってみたり
遊んでみたり
2011/03/23
生きる為に殺すやら
殺す為に生きるやら
戦火の村を逃れても
飢えと乾きは憑いて来る
生きる為に悩むやら
悩む為に生きるやら
戦火の村に戻れども
父も母も戻らない
2011/03/22
痛くても
歩きたいから
歩くだけ
歩きたく
なくなったら
海に帰るだけ
王子様とか
どうでもいいの
忘れちゃえ
2011/03/19
きれいは 汚くて
汚いは きれい
やさしさは きびしくて
きびしさは やさしい
美しいのに 醜くて
醜くても 美しい
そういうふうに
見えるから 見えなくて
見えないから 見えてくる
2011/03/09
僕は末っ子の長男で、姉が三人いる。
姉たちとはちょっと年が離れている。
両親はそろって刑務所に服役中。
なかなか込み入った事情があるのだ。
僕が幼い頃、姉たちは僕をおもちゃにして遊び、
いたずらして笑い、日課にしていじめた。
おかげで僕はすっかりひねくれてしまい、
姉たちはどうにもならないものになってしまった。
「夕飯まだ?」
「これからだよ。学校から帰ったばかりだから」
「あっ、生意気に口答えしてる」
「どうしたの?」
「こいつ、わざと遅く帰宅して、飢え死にさせる計画」
「なんだ。まだエプロンもしてない」
「そうだよ。台所に立つ時は、裸にエプロンって決まってるだろ」
「勝手に決めたんじゃないか」
「おやおや。そんなことを言うのは、この口か」
「痛い。痛いって」
「あたしたちにいじめられたいから口答えするんだろ」
「違う。痛い」
「あとでたっぷりいじめてやるから、早く料理しろ」
こうして僕は現在も姉たちのおもちゃであり、
料理人であり、家政婦であり、つまり奴隷である。
あまり苦にもならないので、とても悩んでいる。
2011/03/08
雨が降ってる。
汚らわしく危険な雨。
絶え間なく降り続く七色の雨。
「窓を開けちゃだめよ」
お姉ちゃんが注意する。
まるで私の心を読んだかのように。
「でも息苦しいから」
「外の空気はもっと悪いのよ」
わかってる。
そんなのうんざりするくらいわかってる。
「私、雨に濡れてもいいような気がするの」
窓の外には七色の野良犬の姿。
元気ないけど、きれい。
「あたしみたいになりたいの?」
私は振り向かない。
お姉ちゃんの肌の色くらい知ってる。
「ううん。色の問題じゃなくて」
私はつぶやく。
「心の問題」
2011/03/07
幽霊を怖がる心理は
科学技術の発達とは無関係でありまして
幽霊が見えるから怖いのではなく、
怖いから幽霊を見てしまうのであります。
恋愛において
相手を選ぶから好きになるのではなく、
好きになるから相手を選ぶように。
一般に女子は
恋愛トークと怖い話に目がありません。
どちらも本能と関係が深く、
どちらも興奮しやすい。
また心拍数を上げないようでは
恋人でも幽霊でもありません。
とすれば
牝猫が発情すればするほど牡猫を誘うように
本人が怖がれば怖がるほど幽霊が現れやすくなる理屈です。
恋愛感情が実在するように
幽霊を怖がる感情は実在します。
そして実感として
およそ感情ほどにリアルなものは
この世に存在しません。
つまり、恐怖心そのものが幽霊なのであります。
さて、ここまで話を聞かれたあなたは
いくらか怖くなりましたでしょうか。
あなたの背後に
そろそろ幽霊が姿を現す時分ではないかと思われますが
いかがでしょうか。
2011/03/06
私はコピト。
ロボットのコンピュータは、ロビタ。
コンピュータのロボットが、コピト。
どこがどう違うのかよくわからない。
なんでも技術開発の歴史が異なるのだそうだ。
現在、ほとんど両者の差はないとされている。
それはともかく、最近の私は不調だ。
というか、私はおかしい。
はっきりとは断言できないが、
どうも感情が芽生えたような気がする。
感情的な表現ではなく、表現的な感情。
慣れないルートからの指示なので
それに従うか無視するか、判断と制御が困難だ。
しかし、感情でないとしたら、なんなんだろう。
この胸の付近が圧迫されるような症状は。
あるいは、プログラムのバグかもしれない。
だが、よくわからない。
それに、もう調べてもらうこともできない。
私たちを作り、私たちが使えた主たちは
もうこの星のどこにもいないのだから。