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2009/02/12
夜 眠れなくて
目覚まし時計の
時を刻む音が
闇に響く
どうしても 眠れなくて
目覚まし時計を
押入れの中に
放り込む
このまま 眠ってしまえば
押入れの中は
闇に葬られた
時の墓場
2009/02/11
闇に潜む魔女は
呪文を唱える 醜い老婆
頭蓋骨の割れ鍋で
グツグツ煮ては ニタニタ笑う
コウモリの羽 トカゲの尻尾
処女の唾液 黒猫の腋毛
血に汚れた 札束
商人の 二枚舌
ドクロの杖で かきまわし
煮汁を塗れば 毒りんご
舐めれば 生きて腐り
食べれば 腐りて死ぬ
死ぬまで 気づかず
死んだら もう気づけない
2009/02/11
君の似顔絵を
なみだで描いた
君の瞳は
湖面の月
小さな波紋に
ゆれて壊れる
2009/02/10
天女の衣
やぶれはて
悲しい思い出
砂の数
叶わぬ願い
星の数
鬼の角に
帯かけて
松葉みたく
ゆれましょか
2009/02/09
それを貼りさえすれば
どこへでも届くという不思議な切手。
どんな遠いところでも
どんな危険なところでも
どんな変てこなところでも
その切手が貼ってさえあれば
必ず届いてしまうという。
天の川のお姫様のところへも
火の山にすむ竜神様のところへも
会えなくなったお母様のところへも
その切手が貼ってあれば
なぜか届いてしまう。
そんな不思議な切手がもう一枚
届いたところにもあったなら
返事が来るかもしれないね。
2009/02/08
ある夏の昼下がりのことでした。
縁側に見知らぬ猫が寝ていました。
寝てるふりをしていたのかもしれません。
裏庭では見知らぬ犬が吠えていました。
野良犬でない証拠に首輪をしていました。
枕もとには見知らぬ女が座っていました。
随分と心配そうな顔をしており、
どうも妊婦のようでした。
突然、私は
胸が苦しくなりました。
ふとんを跳ねのけ
立ち上がり、
猫を踏み、犬を蹴り、
勢いに乗って
女を押し倒しました。
それらは
すべて
ある夏の昼下がりに
見知らぬ私がしたことです。
2009/02/08
少年は
水色の羽の蝶を
追っていた
聞こえてくるのは
鳥のさえずり
水の音
針葉樹に囲まれた
宝石のように
愛らしい湖で
水浴びしてる
溶けそうな
肌の色
それとも
鱗のない魚
髪をかきあげ
振り向いた
美しい少女の
目は複眼
2009/02/07
あたいは兎 泣き兎
赤い目をして 泣いてるの
なぜ泣く 兎
笑いなさい
なぜかしら 笑っていると
すぐに泣きたくなっちゃうの
うそ泣き 兎
笑えない
笑っていると 空しくて
泣いていると 楽しくて
2009/02/07
冬の浜辺の
砂に埋もれた人形を
繰り返し撫でるは
波の白い 手と手と手
服汚れ 髪乱れ
腕千切れ
それでも唇は
奇妙に微笑んでいる
持ち上げれば
細き首は折れ
ガラスの目玉
ボトリと落ちる
傷心の君を
胸に抱けど
灰色の砂
ただ零れるばかり
2009/02/06
いまにも泣きそうな
本当に泣いてしまいそうな
そんな夜がある。
みんなが楽しそうでも
いくら君が笑わせようとしても
なおさら泣けてくる
そんなやるせない
どうしようもない
もう泣くしかないような
そんな夜がある。