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2015/02/05
わたくしは水玉模様の日傘を差して砂漠におります。
時折りに移り変わる蜃気楼の景色を眺めながら
どうしようもないくらいに今、胸騒ぎがしております。
巨大な砂時計の底に置き去りにされたみたいな
こんな己の他に誰もいない世界の果てにいると
それほど悪いこともしていないはずなのに
いえ、悪いとか良いとかの問題ではなくて
慣れ親しんだ人々の営みから隔絶しているというこの状況が
ありもしない幻の監獄に囚われ
ありもしない幻の罪業に責め苛まれる病人のように
根本的に見当違いなあり方ではないか
という気がしてくるのです。
「もう諦めて、帰ってきなさい」
そのような幻聴すら
やはり時折りに聞こえてくるのです。
なんの根拠もない
ただの胸騒ぎであれば良いのですが・・・・
2015/02/03
秘密は、人に知られぬゆえに秘密。
その秘密知りたる者、生き続ける事かなわじ。
「ああ、どうしよう」
「どうしたの?」
「あたし、大変なこと、知っちゃったの」
「どんなこと?」
「そんなの言えない」
「どうして?」
「だって、言ったら、大変なことになっちゃうもん」
「どんなふうに大変になるの?」
「みんな、生きていられなくなる」
「わかんないな」
「だから、わかんないままがいいのよ」
「あんた、どうするつもり?」
「どうにもできないよ」
「困ったわね」
「とりあえず、そういうことなので」
「どこへ行くの?」
「わかんない」
「わかんないって・・・・」
「とりあえず、さようなら」
「あんた、まさか・・・・」
「だって、これ、秘密なんだもん」
2015/02/01
妹には友だちがいない。
それこそひとりもいない。
「どうして友だちを作らないんだ?」
そう尋ねたことがある。
「他にすることがあるから」
それが妹の返事だった。
けれども、妹は忙しくなにかしてる様子はない。
寝転んでいなければ部屋の中を歩きまわるくらいで
家の外へも滅多に出ようとしない。
「なにしてんだよ?」
「考えごと」
「どうだ、映画館に行かないか?」
「興味ない」
取りつく島もない。
引きこもりではなく、たまに外出すると
一週間くらい家に帰らないことさえあった。
「おれが友だちになってやろうか?」
ある時、ふざけて言ってみたら
「あら、友だちじゃなかったの?」
だって。
まあ、兄と思われていないことくらい
とっくの昔に知っていたけどさ。