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2015/01/13
あら、ダメよ。
まだまだ我慢して。
あせっちゃ、ダメ。
まあ、いやな目。
そんな顔、しないの。
ほんとに、もう。
ねえ、いい?
よーく考えてよ。
モノゴトには、裏と表があるの。
みんな、そうよ。
聞こえる声が、いつもホンネとは限らないわ。
そりゃ、信じるのは簡単よ。
でも、疑うのも簡単。
ううん。
そうゆーのじゃなくて。
踊ってるつもりで、踊らされてるような。
ああ、もう。
うまく言えないな。
とにかく、もっと想いをめぐらせて欲しいの。
ああ、ダメ。
ダメよ。
ホントにダメだったら!
2015/01/12
どんなに愛しくても
いつまでも一緒いられるものではない。
また仮に
いつまでも一緒にいられるとしても
互いの愛しい気持ちは
どうしても変わらざるを得ない。
その気持ちの変化は
昔の気持ちの裏切りであるかもしれないけれど
今の気持ちの偽りであるよりは
まだいくらか罪の目方は軽い気がする。
2015/01/08
暗く長い廊下の向こうには
石炭置き場がある。
その当時の学校のストーブは
電気でも石油でもなくて
石ころの石炭を燃やしていたのだ。
崩れた崖のような黒い石炭の斜面をスコップで掘り
銀色のブリキのバケツに移す。
そして
それを教室まで運び
ストーブの脇にある木箱に移す。
その日の当番の仕事だったが
僕はこの仕事、わりと嫌いではなかった。
誰かがやらねばならない仕事だったし
それゆえ皆に感謝もされたから。
もちろん
そんなに好きなはずも
なかったけれど。
2015/01/07
「助けてくれよ」
「いやだね」
「薄情だな」
「その通り」
「友だちだろ?」
「俺に友だちはいない」
「そんな」
「いるのは、敵。でなかったら、手下」
「この際、手下でいいからさ」
「それが手下の態度か」
「この通りです。お願いします」
「ふん。まあいいだろう」
「では、助けていただけるのですね」
「いいや」
「どういうことですか」
「おまえが俺を助けるのさ」
「はっ?」
「おまえは俺の盾に過ぎない」
「・・・・盾?」
「そうだ。矢玉を受けて死ね!」
2015/01/05
聖なる神殿の中
秘めやかなる祭壇の前で
麗しき巫女がひとり泣いていた。
彼女は知ってしまったのだ。
この身の行く末と
この世の行く末を。
その時
祭壇の上に
神が光臨された。
神はおっしゃられた。
「聡明な娘よ。私を見なさい」
巫女は見上げた。
神は祭壇の上で
裸踊りをなさっておられた。
2015/01/02
あるところに 不眠症の羊飼いがいました。
羊毛みたいな白いヒゲがご自慢の
この老いた羊飼いの悩みの種は 眠れないことでした。
「眠れない夜は 羊を数えると 眠れますよ」
近所の奥さんが そう教えてくれました。
「わしは毎日 羊を数えておるよ。
それが わしの仕事じゃからの」
「あら。それじゃ あなた、きっと眠っているんですよ」
そこで目が覚めました。
元旦の朝でした。
これは 羊を数える老いた羊飼いの 初夢だったのです。