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2015/03/13
花嫁を幸せに導くであろう偽りのヴァージンロードに
ほんのちょっとだけ銀のナイフで切れ込み入れるの。
そして、そのまま知らんぷりして
ウエディングケーキに入刀させるのよ。
教会の十字架には忌まわしきハーケン施して
誓いの言葉は手作り時限爆弾で掻き消すの。
季節はずれの突風も吹くでしょうね。
お金持ちでハンサムな花婿は倒れるわ。
かわいいだけの花嫁は吹き飛ばされて
転がるエンゲージリングは野ウサギの巣穴の奥に落ちるのよ。
ああ、いい気味だわ。
ライスシャワーなんかポップコーンで十分よ。
ウエディングベルは煩悩の数だけ除夜の鐘ね。
花嫁が投げるしゃらくさいブーケなんか
血まみれのヘソの緒アンド胎盤付き胎児だわ。
おほほほほ。
まさに、おほほのほよね。
2015/02/10
空の上には神さまがおられて
ウトウトと昼寝を始められた。
空の下には恐竜が生まれ
そこそこ繁栄していたが
そのうち絶滅した。
しばらくして人類が生まれ
なかなか繁栄した。
けれども
神さまが昼寝から目覚めた頃には
人類は絶滅していた。
「ああ、よく眠った」
神さまはウウウンと
気持ち良さそうに背伸びをなされた。
2015/01/25
「やめなさい。悔い改めよ」
この期におよんで神父は説教を始めた。
「ああ、悔い改めるさ。
あんたを神のもとへ送ってからな」
おれは神父の胸にナイフを突き刺した。
「おれを許すか?」
おれは神父に問うた。
「たとえ私が許しても、神は許すまい」
神父は絶命した。
それから、おれは悔い改めた。
「ああ、神よ。おれを許してくれ!」
2015/01/20
この行進から抜け出したい。
けれども、その方法がわからぬ。
少し離れるくらいなら誰でも試みるが
疲弊して引き返すのがオチだ。
なにしろ見渡す限りどこまでも砂漠が広がり
水も食料も、一かけらの希望すら見つからないのだ。
こんな不毛の土地ゆえ行進が始まった
という説がある。
だがむしろ、豊饒の土地が
この果てしない行進によって
長い年月のうちに養分を奪われた
と考えるのが自然だろう。
水は水筒に注がれ、食料は干物ひものにされ
なんとかやり繰りしながら行進を維持しているが
いつまでも続けられる理由はない。
それは行進を続けるひとりひとり
誰もが皆わかっている。
そういうわけで、仕方なく
気の進まぬまま行進しているのが現状だ。
この先まったくもって
なんの進展も見い出せないまま
まるで自分たちの墓穴を掘るように。
2015/01/07
「助けてくれよ」
「いやだね」
「薄情だな」
「その通り」
「友だちだろ?」
「俺に友だちはいない」
「そんな」
「いるのは、敵。でなかったら、手下」
「この際、手下でいいからさ」
「それが手下の態度か」
「この通りです。お願いします」
「ふん。まあいいだろう」
「では、助けていただけるのですね」
「いいや」
「どういうことですか」
「おまえが俺を助けるのさ」
「はっ?」
「おまえは俺の盾に過ぎない」
「・・・・盾?」
「そうだ。矢玉を受けて死ね!」
2014/11/10
私、階段を転げ落ちているの。
止まらない。
止められない。
その痛いの痛くないの。
もう腕も脚もグシャグシャ。
肋骨だって鎖骨だって粉々よ。
すでに頭蓋骨も割れているはずだわ。
でも、なぜ失神しないのかしら。
階段を転げ落ちながら考えているけど
やはり、なかなか考えがまとまらない。
とにかく、止まらなければダメだわ。
途中に踊り場でもあればいいのに。
いつまで落ちでも階段が続く。
あんまり痛くて、わけがわからなくなってきた。
私は誰?
ここはどこ?
ええと、私は主婦で、ここはデパートで
買い物をしていて、上の階へ行こうとして
でも、エレベーターが満員だったから
しかたなくエスカレーターに乗って・・・・
2014/11/03
大海原の真ん中あたり
小型の救命ボートが漂流している。
「喉が渇いた」
髭だらけの男がうめく。
「あんたのせいよ」
乱れ髪の女がなじる。
「うるさい!」
「どっちが」
夫婦のようである。
女は赤ん坊を抱えていた。
「乳は出ないのか?」
「あんたの分まではね」
「飲ませろ」
「海水なら、いくらでも」
男が女を殴る。
女の鼻から血が流れ出る。
あごの先から赤い雫が乳房に垂れる。
すぐに赤ん坊がしゃぶりつく。
真っ赤な顔の赤ん坊。
顔を見合わせる男と女。
波が小型ボートをきしませる。
まだ日は昇ったばかり。
2014/09/19
まず、新鮮な美女を用意します。
化粧が濃かったり、服装が派手なものは避けましょう。
眼が死んでいたり、口が悪いのもいただけません。
もし暴れるようなら、平手打ちをくれてやりましょう。
衣類および装身具を丁寧に取り除き、虚飾を洗い落としたら
まずは三枚におろします。
包丁も使いますが、魚料理ではないので
おもに言葉を多用します。
「愛してる」「好きだ」「君が欲しい」などが一般的です。
余計な羞恥心は捨て、隠れている欲望をむき出しにして
固い自尊心を半分に切断します。
煮ても焼いても結構ですが
そのまま生でいただいてもかまいません。
好みにより誕生石の指輪など添えると、大変喜ばれます。
なお、罠の仕掛けや毒がある場合もありますので
くれぐれもケガや中毒には、ご注意を。
2014/09/14
水平線上に陸地が見えてきた。
デッキの上には乗客たちの笑顔があり
乗客たちと一緒に船長も喜んでいた。
長かった航海も無事に終わろうとしている。
「ねえ、あそこ見てよ」
女の子が海面を指さす。
「人魚が泳いでいるわ!」
船長は苦笑し、そちらに視線をやり
そして自分の目を疑ってしまう。
尾びれで水しぶきをあげながら
海面から顔を出して女性が泳いでいたのだ。
他の乗客たちも騒ぎ始めた。
船長は自分が船長であることを思い出した。
彼は勇敢にも人魚に向かって叫んだ。
「おーい、人魚さーん! こんにちわ!」
すると、人魚も叫び返してきた。
「あれー! 助けてー!」
それは悲痛な叫びであった。
彼女、上半身は人間なのに
下半身はサメに飲み込まれていたのだった。
2014/06/09
みなさん、こんにちは。
よい天気ですね。
本日は、これから
ナメクジとカタツムリが競走するそうですよ。
さっそく、スタート!
でも、どうしたのでしょう。
スタート合図の銃声を聞き逃したのでしょうか。
いつまで経っても、どちらも動く気配がありません。
あっ。
少しカタツムリが前に進みました。
あっ。
ナメクジも少し進んでます。
よかったですね。
一時はどうなることかと心配しましたよ。
ようやく両者、スタートラインを越えました。
さて、長引きそうですね。
では、ここでお昼にしますか。
すみません。
つい昼寝もしてしまいました。
でも、あんまり変わってないですね。
少しばかり、カタツムリがリードしてますか。
でも、あの重い家を一緒に運んでますから
おそらく後半はきついでしょうね。
観戦している我々もきついです。
ああ、そろそろ日が暮れます。
長い一日でしたね。
では、また明日。
おやすみなさい。
おはようございます。
おや。
あんまり進んでないですね。
一晩中、なにやってたんでしょう。
眠っていたんでしょうか。
先は長いですね。
また明日来ますね。
おやおや。
まだこんなところにいるのですか。
余裕ですね。
自信でしょうか。
いくらかナメクジが挽回しましたか。
では、またそのうち。
みなさん、しばらくぶりです。
あやうく忘れてしまうところでした。
なんですか、これは?
ははあ。
ナメクジのミイラですか。
なるほど。
長い間、日当たりにいましたからね。
カタツムリも家の中に閉じこもってますね。
流行のヒキコモリですか。
それとも餓死したのでしょうか。
ちょっと確認できません。
やれやれ。
どうにもなりませんね。