Tome Bank

main visual

Tome館長

m
r

Tome館長

CREATOR

  • 3

    Fav 1,204
  • 9

    View 5,858,067
  • p

    Works 3,356
  • いじめないでね

    2016/11/11

    ひどい話

    お願いだから、僕をいじめないでね。

    今、僕をいじめると、あとで君に仕返しするよ。

     

    僕はね、とっても陰湿なんだ。

    ケンカは弱いけど、泣き寝入りはしないよ。

     

    たとえば、そうだね 

    君の家に火をつけちゃうかもしれない。

     

    そりゃ犯罪だけど、つまり追い詰められたら 

    そういう危険なことだってやりかねないってことさ。

     

    または、君がコンビニで万引きしたこと 

    君のお母さんに言いつけちゃうかもしれない。

     

    なぜか偶然だけど、その証拠写真もあるし。

    まったくケータイって便利だよね。

     

    それとも、君のお母さんが工藤先生と浮気してること 

    君のお父さんに言いつけようかな。

     

    ウソなもんか。

    ちゃんと僕は知ってるんだよ。

     

    ふん。まあ実際のところ 

    ウソだってかまわないんだけどさ、僕は。

     

    ねっ、わかったろ。

    そういうわけだから、僕をいじめないでね。

     

    まさか。とんでもないよ。

    僕、君をいじめてなんかいないって。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 四人姉妹

    2016/10/13

    ひどい話

    そろって若く美しい四人の姉妹があった。

     

    両親は飛行機事故で亡くなり 

    彼女たちには莫大な遺産が残された。

     

    豪華客船に乗って世界一周の旅の途中 

    あるハンサムな男が姉妹に近づいた。

     

    この男、じつは結婚詐欺師。

     

    密かに四人それぞれと恋人になり 

    密かに四人それぞれから依頼を受けた。

     

    「誰でもいいから、妹のひとりを殺して」

    「妹でも姉でもいいから、ひとりを殺して」

    「姉でも妹でもいいから、ひとりを殺して」

    「誰でもいいから、姉のひとりを殺して」

     

    男は途方に暮れてしまった。

     

    仲の良さそうに見える姉妹なのに 

    じつは互いに憎しみ合っていたのだ。

     

    その理由を男が尋ねてみると 

    彼女たちの返事はそろって同じだった。

     

    「だって、四人だと多すぎるんだもん」

    そうかもしれない、と男は思った。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 森の研究所

    2016/09/17

    ひどい話

    研究所は森の中、危険に満ちた森の中。

    森には研究所から逃げた実験生物が大繁殖。

     

    たとえば、毒蛇の尾を振るライオンは 

    尻を噛まれないかと猛獣自身が怯えてる。

     

    食衣植物に襲われ、靴や服を食われると 

    皮膚を舐めるキノコやナメクジが寄ってくる。

     

    皮膚が消えると、血を吸い肉を齧る虫が集まってくる。

    骨を好む魚まで這ってくるから、何も残らない。

     

    森の外は砂漠、いにしえの都市の残骸。

    放射能と各種有害物質でできている。

     

    森の外に出たら死ぬしかない。

     

    当初の目的は不明であるが、現在の所員たちは 

    研究所の外、森の中で生きる方法について研究中である。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 豚ごもり

    2016/08/29

    ひどい話

    喰っちゃ寝、喰っちゃ寝、喰っちゃ寝してたら 

    とうとう本物の豚になっちまった。

     

    手足の先がいかにも豚足、目の前にゃ豚鼻。

    くるっと丸まった尻尾が姿見に映ってる。

     

    ぶくぶく太るだけじゃなかったんだ。

    比喩でも警告でも迷信でもない。

     

    学校へ行かず、就職もせず 

    実家の自室に引きこもって早十年。

     

    自業自得、なるべくしてなったと言うことか。

     

    ぶうぶう文句たれても始まらない。

    まずは親に連絡だ。

     

    甘やかせて育てた挙句、我が子はひきこもり。

    追い出したいが、切れると怖い。

     

    怯えながらも世話してくれてる。

    さすが豚の親。

     

    ところが、部屋から出られない。

    豚足の上に四つん這いでは、ドアノブを回せない。

     

    「ブー、ブー、ブー」

    しかも、豚語しか喋れない。

     

    「どうしたの、変な声出して」

    「ブヒー、ブヒー、ブヒー」

     

    「まるで豚みたいな声ね」

    「ブヒヒヒヒ」

     

    「ドアを開けるわよ」

    「ブー」

     

    当然ながら母親は驚いた。

     

    「あら、餌代が助かるわ」

    まさか、クソでも喰らえってか。

     

    「今夜から、しばらくはトンカツね」

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 兎の殺意

    2016/08/03

    ひどい話

    狼と犬と兎が 一緒に暮らしていました。

     

    狼は 兎を襲いたいのですが、犬が許しません。

    犬は 兎と遊びたいのですが、狼が邪魔をします。

     

    ある夜、こっそり兎が 狼に囁きました。

    「あの生意気な犬を 殺して欲しいの」

     

    すると兎は 狼に襲われてしまいました。

     

    傷ついた兎は 犬に泣きつきました。

    「あの憎らしい狼を 殺して欲しいの」

     

    すると兎は 犬に遊ばれてしまいました。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 戦場へ赴く

    2016/08/01

    ひどい話

    戦場へ赴かねばならない。

     

    兵士として軍隊に組み込まれ 

    敵軍の兵士を殺すことを強いられる。

     

    殺さなければ逆に殺される。

    厭わしいことだ。

     

    銃で撃たれたり、爆弾に吹き飛ばされたら

    それこそ死ぬほど痛いはず。

     

    正気ではいられない。

    正気の沙汰とも思えない。

     

    戦争を始めねばならない状況にしたのは誰だ。

    回避できなかったのか。

     

    いつまでも続けさせているのは誰だ。

    正義は両方にあろうが、こちらに勝算あるのか。

     

    捨て石ならともかく 

    犬死にだけは御免だぞ。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 爪切り

    2016/07/07

    ひどい話

    腹が減った。

    じっと手を見る。

     

    爪が伸びてきたな。

    そろそろ切るか。

     

    ニッパ式の爪切りがある。

     

    まずは小指。

    パチン。

     

    おっと、深爪してしまった。

    いけない、いけない。

     

    気をつけなきゃ。

     

    次は薬指。

    パチン。

     

    痛っ。

    あっ、また深爪だ。

     

    ああ、血がにじんでる。

    バカだな、おれって。

     

    知ってるけどさ。

    まあ、いいや。

     

    次は中指。

    今度こそ慎重に、パチン。

     

    痛い! 

     

    わあ、肉まで切っちゃった。

    なにやってんだ。

     

    血が垂れてる。

    ああ、ひどいな。

     

    傷テープ、あったっけ。

    セロハンテープはどうだ。

     

    めんどう臭いな。

    まあ、いいや。

     

    どうせ、そのうち止まるだろ。

     

    しかし、まいった。

    注意してたんだけどな。

     

    夜に爪切ると親の死に目に会えない、か。

    なるほどね。

     

    まったく、昔の人は偉い。

    暗けりゃ、あぶないもんな。

     

    もっとも、まだ昼なんだけどさ。

    ふん、まあいいや。

     

    さて、次は人差し指だ。

    パチン。

     

    痛たたたた! 

     

    うわあ、指先を切った。

    第一関節から先がない。

     

    血が止まらん。

    ドクドク流れてる。

     

    指の根元をつまんで止血だ。

    痛い。痛い。

     

    しかし、バカだな。

    というか、不器用だな。

     

    いやいや。

    爪切りで指を切り落とすのは至難の業。

     

    普通、途中で気づくよな。

    やっぱ、バカか。

     

    死ななきゃ治らんな、こりゃ。

     

    やれやれ。

    なんとか血は止まったようだ。

     

    薬ぬって、包帯まいて、と。

    こういうのは器用なんだよな、なぜか。

     

    ううう、ズキズキする。

    ひどい目にあったもんだ。

     

    まったく情けない。

    まったく・・・・ 

     

    あっ、指先が落ちてる。

    拾わなきゃ。

     

    ああ、生々しい。

    新鮮な骨付き肉だ。

     

    これ、どうしようか。

    もう、くっつかないよな。

     

    せっかくだから、食べちゃおか。

     

    もったいないもんな。

    腹減ってるし。

     

    とりあえず、冷蔵庫に入れて、と。

     

    さてさて。

    問題は、次の親指だ。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 花粉死

    2016/06/26

    ひどい話

    うららかな春なのに、殺害現場は凄惨を極めた。

    肉片と体液と血の海。

     

    被害者の眼球は両目ともえぐり出されていた。

    鼻は包丁で切り取られ、その二つの穴は切り裂かれてあった。

     

    爪で掻き毟られた痕跡が全身の皮膚に残る。

    毛髪はほとんど引き抜かれ、床に散らばっていた。

     

    被害者の手は血塗れ。

    右手に包丁、左手に潰れた眼球のひとつを握っていた。

     

    内鍵が掛けられた部屋は完全密室。

    窓とドアには内側から目張りまでしてあった。

     

    状況としては自殺である。

    しかし、じつは他殺。

     

    死因はスギ花粉だった。

     

    「空気清浄」の「強風」に設定された壁掛け式エアコンの中に 

    花粉だらけのスギの枝葉がセットされてあったのだ。

     

    被害者が花粉症であったことは言うまでもない。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 命の木の実

    2016/06/21

    ひどい話

    楽園から追放される前に男は 

    こっそり命の木の実を盗んで食べた。

     

    すると、相容れないものだったのか 

    せっかく食べた知恵の木の実を吐き出してしまった。

     

    そのため男は救いようのない愚か者になり 

    父と兄弟を殺し、母と姉妹を誘惑して孕はらませた。

     

    そもそも男には父も母もおらず 

    ゆえに兄弟も姉妹もいないはずなのに。

     

    呆れ果てた妻は息子と結託して 

    夫である男を殺した。

     

    しかし、命の木の実を食べた男は死にきれず 

    息子の子、孫として妻の腹から甦よみがえるのだった。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 礼拝堂

    2016/06/18

    ひどい話

    「心静かに祈りなさい」

     

    天井には大きな穴があいていた。

    まるで星に祈るような気分。

     

    「隠すことなく、純真な気持ちで」

     

    女は肌を隠していないか。

    司祭は金貨を隠していないか。

     

    私にはわからない、

    何を祈ればいいのか。

     

    突然、荒々しく扉が開いた。

    「強盗だ。神を恐れはせぬ」

     

    わかったような気がした、

    何を祈ればいいのか。

     

    しかし、祈ってる場合ではないな。

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
RSS
k
k