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2011/01/23
星空の
シャンデリア
湖の
ワイングラス
そして
絞り立ての
月の雫
2009/03/14
華やかな衣装を身にまとい
端正な顔に美しく化粧をほどこして
世界中から集まった人形たち
麗しき人形
美しき人形
きれいな人形
かわいい人形
愉快な人形
良い人形
とても愛らしい
小さな貴婦人たち
もっとも
等身大のマネキンだっているけど
人形たちの素敵な舞踏会
もっとも
誰も踊ったりしないけど
2009/03/12
キドラ辺境惑星における伝統音楽は
いたるところに存在するにもかかわらず
同時に見つけるのが困難とされている。
ロレロと呼ばれる宗教的な期間に
年配者が若者に伝説を語る風習があり、
そこで歌われるのがロレロ霊歌である。
現在では霊的なものは失われてしまったが
これはタヌヌ戦争直前に録音されたもの。
液体楽器ビハデを奏でるのは
村の古老ダグエラとその娘エダの親子。
ベキ音唱法を駆使して即興で歌うのは
タンニとウフニの双子の姉妹である。
録音に成功した辺境調査家エデレーは
自著において次のように解説している。
「ベキ音唱法が時空の認識を変化させ
時を越えて打ち寄せるビハデの波紋により
宇宙の意識が聴者の意識と重なると、
自他および因果の区別は意味を失う」
なお、ここで語り継がれる伝説については
サッササ叙事詩のキドラ辺境型変形、
またはそのピケ亜流と分類される。
2009/03/08
窓を開けたまま眠ると、
真夜中、あいつに襲われる。
あいつは、するりと部屋に侵入する。
あいつは、ふとんの中まで入ってくる。
抱きつかれてから気づくのだ。
「なんだ。おまえは何者だ」
「闇の隠者とでも呼べ」
「なにをするつもりなのだ」
「なにもしない」
「抱きついているではないか」
「抱くだけ。なにもしない」
闇の隠者に抱かれたら、もう逃げられっこない。
じっと夜明けを待つしかない。
ほら、窓の外、闇の隠者が覗いてる。
2009/03/07
白い指が宝石箱のふたを開ける
「首に巻いてください」
哀願するネックレス
「耳にぶら下がってやろうか」
生意気なイヤリング
「胸にしがみつきたいな」
甘えん坊なブレスレット
「捨てられちゃった」
戻ってきたばかりのリング
白い指が宝石箱のふたを閉じる
2009/02/23
白い道に 雪が降る
犬ぞりに乗って
嬉しくて
彼女 首を振り振り
歌うたう
白い道に あられも降る
犬ぞりの上で
気がふれて
彼女 服を脱ぎ捨て
すっ裸
白い道に ひょうも降る
そりの上には
犬が乗り
彼女 革につながれ
そりをひく
2009/02/16
我が家に住み込みの家政婦たち。
彼女たちは紐につながれている。
小柄で口の大きな温子は食事の用意。
暖めるだけ。複雑な調理はできない。
料理の材料は冷子が蓄えている。
立派な体格。いびきがうるさい。
暑い日は涼子が風を送ってくれる。
いつも窓際にいて、息が荒い。
清美は洗濯上手。目のまわる忙しさ。
なぜか洗濯物を干すのは役目でない。
不満はあるけど、立派な家政婦たち。
停電になると、皆で仕事をサボるけど。
2008/10/23
生きているクジラのように見えるが
じつはクジラ型潜水艦なのである。
潮を吹き、身をくねらせて泳ぐが
やはりクジラ型潜水艦なのである。
大空を飛行することもできるが
クジラらしくないから海中を泳ぐだけ。
潜望鏡もあるが、なかなか使えない。
やはりクジラに潜望鏡はいただけない。
とにかく、クジラ型潜水艦での生活は長い。
こいつに乗って七つの海を潜ったが
初めて乗艦したときは興奮したものだ。
おれも若くて、まだ駆け出しだったが
あの頃まだ、こいつも子クジラだった。
2008/10/18
なにしてるの?
なんにも 風に吹かれているだけ
それだけ?
うん それだけ
どんな感じ?
なかなかいい感じだよ
ふうん
君 どこから来たの?
あっちから
どこへいくの?
こっちかな
ねえ
なあに?
君ってさ
うん
まるで風みたいだよ
ふうん
2008/10/17
海よりも深い夜にあなたの寝室に忍び込み
トカゲのようにあなたのベッドに近づいて
あなたの無邪気な寝顔を見下ろしながら
さてどうしてやろうかやるまいか
このにくたらしい鼻の頭を削ってやろうか
このいじらしい耳たぶを切ってやろうか
あれやこれやと随分悩んだ末に
毛布からはみ出ていたあなたの尻尾を
いけないことだとは思いながらも
ハサミで切り落として持ち去ったのは
じつはわたくし怪盗ネチネです。