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2012/11/08
ゆめゆめ夢よ
夢の夢
夢見る頃に
夢はなく
夢ある頃に
夢を見ず
夢なら覚めよ
覚めぬ夢
2012/04/28
遥か遠い見知らぬ土地に
サピアという名の川がある。
そこにはイメージとか印象とか
いわゆる想念のようなものが流れている。
その水をすくって飲めば
心乱れ、
身を浸せば
鱗生え、魚になる。
サピアの流れは雄大で
蛇行を繰り返し、
段丘を築き、
そこここに三日月湖を残す。
橋はない。
いくら架けても流されてしまうゆえ。
この川を遡れば
やがて君は
サピアという名の乙女に辿り着く。
つまり、サピアの流れは
ひとりの乙女の涙が
その源流なり。
2011/10/05
長方形の砂浜
隣接する
人工芝の美しい公園
晴れた休日のひと時を楽しむ人々
ピクニック気分で海草を食べる家族連れ
スイカの隣で頭を割られたお父さん
迷子の坊やをやさしく波がさらってゆく
手首を残して砂に埋められた少年
砂がつかないように白い靴下を脱ぐ少女
海と空の間で青く染まったカモメが哀しむ
時は春
いまだ遊泳禁止は解かれていない
2011/09/07
それがなんであるか
説明するのは難しいのだけれど、
ともかく、
そのとても大切なものを
僕はあやまって壊してしまった。
そのため僕はまるで
死んでいるみたいな気分になり、
その粉々になってしまった
大切なもののかけらを集めたり
せっかく集めたそれらを
結局あきらめて投げ捨てたりして、
そんなふうに
なんにもならない時間を
波打ちぎわの波みたいに
まったく意味もなく無駄に過ごしてしまった。
こんなことではいけない。
壊れてしまった大切なものにかわる
なにかもっと大切なものを
僕は見つけなければいけない。
そんな気がするのだ。
そして、そのためどこか遠くへ
旅に出かけなければならない気もする。
でも、
そんなものがどこにあるのか、
また、そんなものが
本当にどこかにあるというのか、
そういう大切なことさえ
さっぱりわからないままなのではあるけれど。
2011/06/11
光のどけき春の日に
雨が降ります
雨が降る
涙の雨ではあるまいか
いえいえ あれは
狐の嫁入り
人に見せてはなりませぬ
見せてはならぬ
花嫁御陵
ほれ 虹が
2009/02/09
それを貼りさえすれば
どこへでも届くという不思議な切手。
どんな遠いところでも
どんな危険なところでも
どんな変てこなところでも
その切手が貼ってさえあれば
必ず届いてしまうという。
天の川のお姫様のところへも
火の山にすむ竜神様のところへも
会えなくなったお母様のところへも
その切手が貼ってあれば
なぜか届いてしまう。
そんな不思議な切手がもう一枚
届いたところにもあったなら
返事が来るかもしれないね。
2009/02/08
少年は
水色の羽の蝶を
追っていた
聞こえてくるのは
鳥のさえずり
水の音
針葉樹に囲まれた
宝石のように
愛らしい湖で
水浴びしてる
溶けそうな
肌の色
それとも
鱗のない魚
髪をかきあげ
振り向いた
美しい少女の
目は複眼
2008/11/27
あなたはひとり そこにいる
床と天井は 正方形
四方の壁も 正方形
ドアも窓もない 立方体の部屋
家具はなく 照明さえない
なのに部屋全体が 明るい
あなたの影は どこにも見えない
壁も床も天井も 白く滑らか
あなたは 息苦しさを感じる
見えない出口を 探そうとあせる
おそらくあなたは 壁を押すだろう
すると その壁が床に変わる
床だった面は 壁になる
反対側の壁は 天井になっている
床にうつ伏せに 倒れているあなた
立ち上がれば 同じ部屋
白く滑らかな 立方体の部屋
あなたはもう 呼吸さえ忘れてる
2008/11/22
耳の穴の奥に 小人が住んでいる。
小人は子どもで ふたりいて
右耳は男の子で ミーミ
左耳は女の子で ミミー
どちらもとっても いたずら好き。
真夜中、眠っていると
耳の穴の奥から 這い出てきて
ウーン と背伸びしてから
耳たぶにぶら下がる。
カタツムリの背に乗って
鼻息でラッパをプカプカ吹いたり
ハンマーで鼓膜を
ドンドン叩いたりする。
だから、病気になったときに
耳鳴りがしたりするのは、じつは
ミーミとミミーのせいなのだ。
2008/11/13
そこは不思議なところです。
柔らかな白い絹のような地面が
どこまでも果てしなく広がっていて
しかも その上のいたるところに
うつ伏せになったり 仰向けになったり、
ドレスを着たり ほとんど裸だったり、
いろいろな様子をした女の子たちが
おもいおもいに眠っているのです。
下手に歩いたりしたら
さざ波のように地面が揺れて
彼女たちを起こしてしまいそうな気がして
そこから一歩も動くことができません。
途方に暮れて 私も地面に横たわり、
すぐ目の前の女の子の寝顔を見ながら
一緒に眠ってしまいました。