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2009/02/08
ある夏の昼下がりのことでした。
縁側に見知らぬ猫が寝ていました。
寝てるふりをしていたのかもしれません。
裏庭では見知らぬ犬が吠えていました。
野良犬でない証拠に首輪をしていました。
枕もとには見知らぬ女が座っていました。
随分と心配そうな顔をしており、
どうも妊婦のようでした。
突然、私は
胸が苦しくなりました。
ふとんを跳ねのけ
立ち上がり、
猫を踏み、犬を蹴り、
勢いに乗って
女を押し倒しました。
それらは
すべて
ある夏の昼下がりに
見知らぬ私がしたことです。
2008/11/30
んがらみの そねしそねたも ほねそねし
はらいそぱらそ けせらももねむ
とやかにも ぱみれきうれい うんそねま
ほことのまほれ しっぺ どどしと
ぴこでもの へんなふべいな うにかもめ
たまよねゆんげ ふじけらし なめ
さげそねみ ぴりひらぴらも ふんこみな
まよりにてむは もっけ もものけ
どべじでだ うべかにこわそ しみずむれ
へげなこまいそ うな かたじけね
すっからむ べべしとて こみいとま
くんげ なかんも へね ほねほねし
ほけせてね いわなかんなも わなこめた
ぱき ゆじかみれ おっことのそ
おどろけぱしか はにかみて
すふれ うずまや ふぬふみのふむ
ぷゆときて わけながまそじ ずけいらむ
ではめねそけた ことのゆかたび
すんがらみんこふ ぶすけらま
ほりそ まほにた ふねよらず げほ
なぎればなぎれ こよ くにとぞみ
ばいやもすぶれ そめきうずけや
はなさきそげて しのばずり
いでや まほろし えで ぱすがたに
うんずきそめき ぽかそげた
ぺりめ みからし へけもけた やも
まんにんや はかなすびとし うくれやに
すばたきそこね えでへにす
ぺんでれでふじ ふけさばさ
ぴへにえもえや とべきそこなり
あんそみぽんじ ゆくれけそ
ゆでらしけらし ぽこそみて はなぢ
ほにほ にほほほ わかさしければ
うずくゆかりな ひこまみれ しばくも
とけちてやりね くずきもも
へれでんがぼそ ほに むすくずれ
すからぱや えけもけそねし すぱらがや
ふずれゆかたび しでらまに ゆっけ
えっせけほにか ぴこれども
わかきくにちか えそ ほりぶでん
さねばとじ さねさばとじね ほもよろず
つのもことしき ぽか まことし
むしき らびそで ほねこけた
ぴやれ やんなも わかちにはんぺす
ほのほなが ゆできことひら はりさげみ
うんこざね もりこざむ やめられめ
2008/11/19
ハネなしチョウの墓を
たくさん見つけた
それは鼻なしゾウの
たくさんの足跡
ハネなしチョウの群を
鼻なしゾウが踏んだ
その足跡が
ハネなしチョウの
墓標なのだ
ただそれだけなんだけど
なんとなく笑ってしまう
ハネがないのにチョウだなんて
鼻がないのにゾウだなんて
2008/11/15
家の近くの 森の奥に
ピンクのフクロウがいる
奇妙なことに
その肩の上で
ピンクの丸い顔が
ころころ 転がる
普通のフクロウは ともかく
ピンクのフクロウは いつも
「今晩は」
と 静かになく
2008/11/14
ここに どうして あんたが 夢を
重ねて ゆくわけ ゆかないわけ で
なんだって お好み次第 きゃはは う
手に手を とって 足に足 とって
彼女と 彼は あんたと あたし
カナリヤ 鳴くから 見て 見てってば
意味が ないと 明日も ナイト
一晩中 わかって ないの もう朝か
恋も なくなく あんたもう 眠ってる
2008/11/10
男の子がふたり左右に立っている。
どちらも見覚えがあるのに
どこの子だったか思い出せない。
一本の長いなわがふたりを結んでいる。
なわの両端はしっかりと握られ、
ふたりはなわを振りまわし始める。
なわの軌跡は大きな目のように見える。
それが目なら瞳がありそうな気がする。
きれいな瞳なら嬉しいのだけれど。
どこからか女の子がやってきて、
ひょいとジャンプして、なわの目の中に入る。
スカートが蝶のように舞う。
カラスの翼のように黒い髪が揺れる。
なわの目の中に、かわいらしい瞳ができた。
僕が瞬きすると、彼女も瞬きする。
「郵便屋さん、おはいんなさい」
そうだった。
配達の途中なのだった。
2008/11/09
なんだろ
こけもも
よくわかんない
スカート制服の高校生女子が
うんと
学校と世間との境界を象徴する鉄柵を
乗り越えようとする姿勢で
ほら
きらめく朝日を
うなじと横顔に浴びながら
日に焼けた片足を大胆に伸ばす
と
煉瓦通りの歩行者としては
首かしげ
なにがいったい彼女をそうさせるのか
いくら
いくら考えてもわからないので
わからないのは
今の時刻の意味が
遅刻を表現していない
ということで
すでに正門は開いているし
怖そうな
見張りも番人も監視員も教師もいない
いないいないババアもいない
けど
可能なことはいつか誰か
きっと
実行してしまうものだから
かもね
で
なにを言いたいのかというと
一瞬
なにもかも忘れて泥んこになって
夢中になって遊んでいた
子どもの頃の
気分の
あの気分を思い出してしまって
つとと
頬に涙が伝わるのが不思議で
本当に本当に
不思議だから
うん
2008/11/06
おれは毒入りの瓶だ。
ちゃんと髑髏マークのラベルが貼ってある。
暗い過去を持つ由緒正しき危険物で、
これまで多くの尊い命を奪ってきた。
もしおれの言葉が信用できなければ、
頭の栓を抜き、おれの中身を飲めばいい。
ほんの少し、唇が湿るくらいで十分。
苦しむ暇もなく、すぐに息絶えるはずだ。
中身が全部飲まれてしまったら
ただの空っぽの硝子瓶でしかないが、
幸いにも、まだいくらか毒は残ってる。
その証拠におれを持ち上げて振ってみれば
液体に特有の舌鼓のような音がして、
「こっちゃ来い、こっちゃ来い」
と、聞こえるはずだ。
2008/11/04
こんなとこに夜が隠れている
涙がコロコロ転がるうぶ毛の大地
夕暮れの底に沈んでゆく群衆
きっと僕たちはまちがっている
蝶のことは蝶にまかせておこう
眠ってしまったカタツムリ
見てしまった夢はしかたない
ただつぶやいてみただけ
2008/11/01
とある家庭の台所の風景である。
異国の人形を大きくしたような少女が
手前の調理台の上に仰向けに寝かされ、
サラダ油か桃の缶詰の汁かわからないが
びしょ濡れで天井を見上げて泣いている。
その奥にはステンレスの流し台があり、
まだ洗ってない食器が山盛りになっている。
さらに奥にある明り取りの窓からは
恐ろしい顔の鬼が台所の中を覗いている。
調理台の真下の汚れた床の上には
料理の道具ではないような気がするが
殴られたら死にそうな金棒が転がっている。
ハエが一匹、少女の上を飛んでいるが
あまりたくさんのハエが飛んでいないのは
おそらく鬼の顔が怖いからだろう。