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2012/03/28
空は晴れていた。
僕は嬉しくなり、
空に向かってブーメランを投げる。
戻ってくるブーメラン。
ブーメランを投げる。
王様の首がとぶ。
まあいいさ。
ブーメランを投げる。
親の首がとぶ。
申しわけない。
ブーメランを投げる。
恋人の首がとぶ。
ごめんね。
ブーメランを投げる。
僕の首がとぶ。
やれやれ。
2011/09/13
女たちが 恋占いをする
女たちが クスクス笑う
女たちが 爪を伸ばす
女たちが 唇を舐める
女たちが 嘘泣きをする
女たちが 知らんぷりする
女たちが 髪をかきあげる
女たちが けだるく頬杖をつく
女たちが 入念に化粧する
女たちが キョトンとする
女たちが 目を閉じる
女たちが 謎をかける
2011/09/09
ナースの肩に触れただけ。
振り向いた唇を奪っただけ。
「こら、なにやっとるか!」
怒鳴りながら駆け寄るポリス。
警棒が頭蓋骨にめり込む。
まだ樹木だった頃の警棒の記憶。
唇と唇の継ぎ目が消えた。
「それ以上くっつくと撃つぞ!」
ポリスの銃口が鼓膜で塞がれる。
まだ溶岩だった頃の拳銃の記憶。
やがて額と額が重なり合う。
まだ少女だった頃の彼女の記憶。
そして、轟音とともに記憶が弾けた。
2011/08/30
ああ 鞭のくれ方 わかんない
猛獣使いじゃ ないんだもん
だから おじさん 吠えないで
バシッ! バシッ! バシッ!
ほらほら こんなに ミミズ腫れ
ビシッ! ビシッ! ビシッ!
まあまあ どんどん 血が出るわ
ブシッ! ブシッ! ブシッ!
あらあら 骨まで 見えてきた
ベシッ! ベシッ! ベシッ!
あれあれ とんでも ないことに
ボシッ! ボシッ! ボシッ!
うわうわ なんだか わかんない
ああ 鞭の音が たまんない
猛獣だったら 怖いけど
だから おじさん 吠えないで
2011/06/30
座敷わらしの
オベベは赤い
座敷わらしの
オメメも赤い
けれど
座敷わらしの
オテテは白い
ケケケケケ
2011/06/15
高みの見物しておられる方々を
こうして低みから見物しておりますと
どんなに偉そうなこと
いくら申しておりましても
地に足ついていらっしゃらないの
よくわかります。
2011/05/14
春になれば
目覚めなければ
ならなくて
まだ眠りたのに
なんとも
息苦しくなってきて
切なくて
どうにも
我慢できなくなって
虫ケラども
いとわしきもの
ぞろぞろ
うじゃうじゃ
這い出てくるのです。
2011/05/07
頭に釘刺して 眠れぬ夜
「プロジェクトX」読みながら 自炊す
魚肉ソーセージ 噛んで吐き 噛んで吐き
俎板と包丁 洗いたくなきが故に
震災関連倒産 六十六社とや
ならば 無関連倒産 幾社ぞや
などと思えり
その場しのぎで 良かれなら
詐欺や横領 社長も総理も 楽なもの
パソコン インターネット なかりせば
世に表すこともなき 余生かな
指折りて 五七五 五七五七七と
定型こだわる 俳人歌人の 気が知れぬ
詠んで好ければ 読まずとも良し
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2011/04/07
うららかな春の
朝早く、
裏庭の小池に
気づかれないように
そっと近寄り、
さっと水面を
めくってみましたら、
すっと消えてしまいそうに
ささやかな
淡く切ない水の物語が
しっとり濡れて
にじんだ文字で
ひっそり書かれてありました。
それをこっそり
読んでしまった私です。
だから泣いているのです。
2009/02/13
遠い海の 深い底
貝の中の
綺麗な真珠
真珠の中の
眠れる少女
波に揺れる 月の杯
「飛べないかもめは かわいそう」
媚を 売るのは
クラゲの 娘
「飛べるかもめは つまんない」
憂鬱に 笑う
ヒトデの 息子
夜空に浮かぶ 星座の帆船
星の涙と
波のハンカチ
願い事 ひとつ
唇 ふたつ
遠い海の 深い底