1万8000人の登録クリエイターからお気に入りの作家を検索することができます。
2013/08/28
古い鉱山を掘っている。
廃坑の噂もあるが、とんでもない。
そこそこ貴重品が出てくるのだから
まだまだ見捨てるのは惜しい。
幽霊の先祖らしき化石だとか
先史時代のタイムカプセルだとか
ダイヤモンドより硬い豆腐の角だとか
とにかく
なんでもありだ。
もう落盤なんか関係ない。
出口が塞がろうが
坑道が崩れようが
そんなことはどうでもいい。
気晴らしに有毒ガスを吸い込み
岩盤を削り、発破をかけ
どこまでも、どこまでも
掘り進むのみだ。
2013/08/27
あなたであったかもしれない私
拉致監禁暴行致死死体遺棄事件の
被害者であったかもしれない私
あなたであったかもしれない私
拉致監禁暴行致死死体遺棄事件の
加害者であったかもしれない私
私であるかもしれないあなた
拉致監禁暴行致死死体遺棄事件の
記事を読んでいるかもしれないあなた
ログインするとコメントを投稿できます。
2013/06/05
真昼の川に落ちたなら
白い魚になるものを
夜中の川に落ちたれば
夜の女になりましょう
魚が いいか
女が いいか
白い魚は
川を泳ぐに
夜の女は
浮世を泳ぐ
2013/05/20
割れる 割れる
ひび割れる
足のカカトが
ひび割れる
クチビル上下も
ひび割れる
雨が降らない
雨降らない
どこにも降らない
一滴も
大地が割れる
笑顔が割れる
心はとうに
割れている
日々 ひび
ひびび
ひび割れる
2013/05/03
あなたの肌に
わたしの針と糸で
刺繍をほどこすとしたら
どんな絵柄が
ふさわしいでしょう?
白っぽいうす色の糸では
きっと赤く染まってしまいますね。
すぐに
臙脂えんじにかわり
そのうち汚れて
なんともいやな色になりそう。
だったらはじめから
黒い糸で縫いましょう。
わたしの髪のように黒い糸。
わたしの心のように黒い糸。
あなたが死ぬまで悔やむように
黒い黒いわたしの
かなしげな笑顔はいかが?
2013/05/03
笛や太鼓が 鳴りやまぬ
祭囃子の にぎやかさ
火の粉 闇を焦がそうが
どうもならん
若い衆 いかに踊れど
なんもなりゃせん
かわいい娘っ子
山神様への 生贄じゃ
なんのために
生まれてきたんじゃろ
あげな器量よしで
皆に好かれとるに
なして あの若さで
いかにゃならんかの
きれいなベべ着て
皆に 恩ば着せて
いいのかの わしら
のうのうとしておって
あの世は この世
この世は あの世じゃろが
ほれほれ
山神様の お通りじゃ
娘っ子は 捕まるぞい
2012/11/05
唇を塞がれて
とても敵わぬ力で
暗い闇の底に組み伏せられ
いやらしく抱きしめられ
苦しくて呻くしかなく
なにか禍々しいもの
理不尽なものが
喉の奥へ侵入しようと
体の中に潜り込もうと
その気配だけで
もう息も絶え絶えに
抵抗もできぬまま
やがて占領され
惨めで情けなく
いけないこと
許されないこと
悪いことをしたというのか
なにも思い出せない
考えようとすらしていない
けだるくて
生きていないみたいな
死んでさえいないみたいな
こんな狂おしいばかりの
わけのわからぬ場所で
唇もなにもかも
塞がれたまま
ログインするとコメントを投稿できます。
2012/11/03
おらの村の 娘っこ
野を越え 山越え
帯をゆらして 駆けてゆく
髪をなびかせ 村娘
おべべの裾が はだけたか
猟師の罠には 気をつけな
毒蛇の牙は 抜いちまえ
村一番の 長者の蔵には 米俵
村一番の 娘の胸には 白い餅
食べたかろうて 頬張ってみ
毒味はいらんか いらんかな
夕陽傾き 山鳩帰る
遠くで寺の 鐘が鳴る
2012/10/02
胸の内に入りて
臓腑を喰い破るもの
頭の内に潜り
脳を腐らせるもの
腰を折り
背骨を曲げ
四肢を萎えさせ
首を項垂らせんとする
ああ 汝の名は
言うも 憂鬱
2012/09/25
曲がりくねった地層の夕焼け
断崖に建てる朽ちた十字架
病気の蟹は泡を吹きながら
難破船の帆を切り刻んでいる
なにが蟹を駆り立てるのか
帆にもマストにもわからない
渚の貴婦人が貝の胸をはだけ
海牛の素足でそっと歩み寄る
そのまわりに波の舌がからむ
瞳の奥で星砂が切なげに泣く
「あなたを待っていたの
こんなに潮が満ちてしまって」
髪は海草 海百合の飾り
唇は珊瑚 黒真珠の入れ歯
漂着したばかりの潮騒の缶詰
腐乱死体の浜辺の恋の物語