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  • 標本箱

    鏡の前で、少女の髪を切っていた。
    カラスアゲハのような、黒く美しい髪。

    まっすぐな前髪に櫛を当てながら
    鋏を入れようとしていた。


    「はやく大人になりたいな」

    唐突に少女が呟く。
    せわしなく羽ばたく、その長いまつげ。

    「大人になって、どうするの?」

    「うんときれいになるの」
    「きれいになって、どうするの?」

    「あのね」
    「うん」

    「標本箱にピンでとめるの」


    思わず切りすぎた。


    「わあ、黒い雨みたい」
     

    Comment (1)

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      投稿
  • 昔 話

    無邪気な子どもたちは
    老婆の語る昔話に夢中になっていた。


    瞳を輝かせ、かわいい娘が尋ねる。

    「ねえ、ねえ、おばあさん。
     それから、お姫様はどうなったの?」

    老婆は微笑む。

    「それから、お姫様は王子様と結婚して
     いつまでもしあわせに暮らしました、とさ」

    娘は目を丸くするのだった。

    「すごいわ、すごいわ。昔の人って
     それだけでしあわせになれたのね」
     

    Comment (3)

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      投稿
    • Tome館長

      2014/09/10 15:11

      「こえ部」で朗読していただきました!

    • Tome館長

      2012/11/13 10:42

      「しゃべりたいむ・・・」かおりさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2011/12/30 21:48

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

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