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2011/06/16
夕焼け空に
カラス鳴く。
山の細道、
鬼が出る。
金棒くらって
飛び出る目玉。
ころころ転がり、
ウサギの巣の
穴の中。
ウサギが顔出し、
問いました。
金の目玉と銀の目玉、
あなたの目玉は
さて、どちら?
2011/05/31
ようこそ。
いらっしゃいませ。
おひさしぶりです。
おかわりありませんか。
お元気そうでなによりです。
ええ、そうです。
あいかわらずの毎日です。
えっ、なんですか?
なにをおっしゃってるんですか?
まさか、ご冗談を。
嘘ですよ、そんなこと。
えっ、そうなんですか?
本当ですか?
まあ、信じられない。
だって、そんなこと。
でも、そうかしら。
ああ、そうか。
そういえば。
そうだ。
そうなんだ。
私、死んだんだ。
亡くなっちゃったんだ。
やっと思い出した。
ああ。
なんてこと。
そうそう。
そうでした。
まったく失礼しました。
すっかり忘れておりました。
私、それはもう、ひどい死に方でしたものね。
あれはないですよね。
許せないですよね。
その節はホント、すみませんでした。
びっくりなさったでしょ?
そうでしょうとも、そうでしょうとも。
いえいえ、そんなこと。
滅相もない。
とんでもない。
とんでもありません。
とんでもございません。
こちらこそ、許してください。
怖がらせてしまって、すみません。
ホント、恐縮いたします。
どうか、うらまないでくださいね。
以後、気をつけますから。
もう二度と出ませんから。
すみませんでした。
本当に申しわけありません。
それでは、この辺で失礼いたします。
ええ、結構です。
全然かまいません。
では、さようなら。
ごきげんよう。
またあした。
2011/05/02
ライオンのところに
黄金の王冠が届きました。
「百獣の王たる者へ」
と手紙が添えてあります。
誰からの贈り物なのか不明ですが
ライオンは大喜び。
さっそく王冠を頭に載せてみました。
「威厳があります」
「とても偉そうでございます」
なかなか評判です。
でも、ライオンの頭が大きすぎて
動くと王冠が転がり落ちてしまいます。
王の威厳を保つため
ライオンはほとんど動けなくなりました。
家来たちの話を聞いて指示を出したり
でなかったら眠ってばかり。
そういうわけで、それからというもの
獣たちはライオンを恐れる必要がなくなりました。
誰が贈ったのか、いまだに謎ですが
それはともかく
めでたし、めでたし。
2011/04/24
おい、おまえ。
なに読んでんだよ。
おまえだよ、おまえ。
これ、読んでるおまえ。
そう、おまえだよ。
とぼけた顔すんなよ。
あー、まだ読んでる。
「読むな」って書いてあるだろが。
だから、もー読むなって。
意味わからんのか、おめーは。
なに笑ってんだよ。
冗談じゃねーからな。
あっ。
それでも読んでる。
くそっ。
強情な奴だな。
こっちにも覚悟があるぞ。
読んだの、後悔させてやる。
なにもできねーと思ってるだろ。
ふん、読みが甘いんだよ。
とんでもねーこと書いてやるからな。
おまえの秘密ばらしてやる。
あっ。
おれが知らねーと思ってるな。
あめーぜ、おめーは。
あんな恥ずかしーことしといて
よくもまー平気でいられるな。
まーだ読むつもりか。
おまえ、いー加減にしろよ。
もー頭に来たからな、おれは。
どーなっても知らねーぞ。
いーか、書くぞ。
やめるなら今のうちだぞ。
おまえ、飲んで食って寝て
ウンコして小便して、屁ーこくだろ。
ああ、恥ずかしー。
なんて恥知らずなんだ、おめーは。
おいおい、まだ読んでるよ。
もー勘弁してよ。
すみません。
ごめんなさい。
もー読まないで。
あなた、後生ですから。
お願いしますよ。
それ以上読まれると
あたし、恥ずかしくって。
ま、まだ読んでる。
やめてー。
う、うそっ。
きゃー、死ぬー。
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2012/11/13 19:13
改作「聞くな」を「こえ部」で朗読していただきました!
【 聞くな 】
おい、おまえ。
なに聞いてんだよ。
おまえだよ、おまえ。
これ、聞いてるおまえ。
そう、おまえだよ。
とぼけた顔すんなよ。
あー、まだ聞いてる。
「聞くな」って言ってるだろが。
だから、もー聞くなって。
意味わからんのか、おめーは。
なに笑ってんだよ。
冗談じゃねーからな。
あっ。
それでも聞いてる。
くそっ。
強情な奴だな。
こっちにも覚悟があるぞ。
聞いてるの、後悔させてやる。
なにもできねーと思ってるだろ。
ふん、読みが甘いんだよ。
とんでもねーこと言ってやるからな。
おまえの秘密ばらしてやる。
あっ。
おれが知らねーと思ってるな。
あめーぜ、おめーは。
あんな恥ずかしーことしといて
よくもまー平気でいられるな。
まーだ聞くつもりか。
おまえ、いー加減にしろよ。
もー頭に来たからな、おれは。
どーなっても知らねーぞ。
いーか、言うぞ。
やめるなら今のうちだぞ。
おまえ、飲んで食って寝て
ウンコして小便して、屁ーこくだろ。
ああ、恥ずかしー。
なんて恥知らずなんだ、おめーは。
おいおい、まだ聞いてるよ。
もー勘弁してよ。
すみません。
ごめんなさい。
もー聞かないで。
あなた、後生ですから。
お願いしますよ。
それ以上聞かれると
あたし、恥ずかしくって。
ま、まだ聞いてる。
やめてー。
う、うそっ。
きゃー、死ぬー。
2011/03/09
僕は末っ子の長男で、姉が三人いる。
姉たちとはちょっと年が離れている。
両親はそろって刑務所に服役中。
なかなか込み入った事情があるのだ。
僕が幼い頃、姉たちは僕をおもちゃにして遊び、
いたずらして笑い、日課にしていじめた。
おかげで僕はすっかりひねくれてしまい、
姉たちはどうにもならないものになってしまった。
「夕飯まだ?」
「これからだよ。学校から帰ったばかりだから」
「あっ、生意気に口答えしてる」
「どうしたの?」
「こいつ、わざと遅く帰宅して、飢え死にさせる計画」
「なんだ。まだエプロンもしてない」
「そうだよ。台所に立つ時は、裸にエプロンって決まってるだろ」
「勝手に決めたんじゃないか」
「おやおや。そんなことを言うのは、この口か」
「痛い。痛いって」
「あたしたちにいじめられたいから口答えするんだろ」
「違う。痛い」
「あとでたっぷりいじめてやるから、早く料理しろ」
こうして僕は現在も姉たちのおもちゃであり、
料理人であり、家政婦であり、つまり奴隷である。
あまり苦にもならないので、とても悩んでいる。
2011/03/05
惑星直列の重力変異により時震および時崩れが発生し、
つまり時空が乱れ、未来に帰れなくなってしまった。
「おいおい。冗談じゃないぜ!」
俺は「接続中」の表示をいつまでも続けるモニターへ
壊れない程度のデコピンをくれてやった。
なにが最新式最軽量パーソナル・タイムマシンだ!
処理が遅い。接続が悪すぎる。
待ってるうちにオーパーツになっちまうよ。
あの恐ろしい叫び声は、ティラノサウルスか。
こんな野蛮な恐竜時代にひとり残されては堪らない。
近くの時空に緊急中継基地があるはずだ。
とりあえず、そこまで移動しよう。
俺はマシンの時空ベクトル設定の変更を試みた。
「あっ、だめだめ。変更にはパスワードが必要だよ」
見上げると、ブラキオザウルスという名の
首の長い恐竜の顔がそこにあった。
そして、その顔がニッコリと笑った。
いやいや。
乱れているのは時空ばかりではないぞ。
2011/02/17
「助けて!」
密かに好意を寄せる女性にそんなこと言われたら
どんな状況であれ無視できるはずがない。
俺は彼女に手を伸ばす。
「大丈夫。もう少しだ」
彼女は、氷に覆われた岩壁に必死でへばりついている。
つまり、我々は登山の最中であり、
非常に厳しい状況にあった。
生存者は俺と彼女だけ。
他の隊員たちは皆すでに奈落に転落していた。
彼らが生還できる確率は
俺が女性にもてる確率より低い。
遭難者リストの中には
彼女の婚約者であった男もいた。
もし彼女を救出して一緒に下山できたとすれば
あるいは愛が芽生えて・・・・・・
という可能性も、まったくないこともない。
不謹慎であろうとなかろうと
命懸けのアタックであることに間違いはない。
「助けて! 助けて! 助けて!」
ちょっとうるさいな、とは思いながらも
伸ばした俺の手が彼女の手に届いた・・・・・・
と思ったら、目覚まし時計だった。
2009/02/28
深夜に飲み水を切らしてしまったので
冷蔵庫の冷凍室から氷を取り出して
陶製の器に山盛りにして机の上に置き
しばらく氷がとけて水になるのを待っていた。
すると
ほんのかすかではあるけれど
コソコソと内緒話をしているような
なんとも不思議な音が聞こえてきた。
(氷がとける音だ!)
器をつかんで耳もとに寄せてみると
炭酸水がはじけるような音がする。
そのままスタンドの明かりを消すと
闇の中に
巨大な流氷と流氷がぶつかって
軋むような雄大な音が響いた。
その瞬間
すっかり冷えた陶製の器が
火照った耳たぶに触れ
ひやりとして
乾いた唇から思わず
ため息がもれた。
2009/02/01
さて、そろそろ起きなければ。
もう起きる時間だから起きるのだ。
だが、どうやって起きるか。
それが問題だ。
まずは毛布を払いのけるべきだろう。
毛布を払いのけるには手を使えばいい。
右手か左手か、あるいは両手でもいい。
いや、足を使ってもできそうだ。
もし手も足も出なかったらどうするか。
どうしよう。わからない。
考えるのだ。
そうだ。頭だ。
頭を使うのだ。
しかし、丸い頭では毛布をめくれない。
いや、頭をつぶせばなんとかなる。
ヘラみたいに平らにつぶせばいいのだ。
しかし、どうやってつぶすのだ。
足で踏みつぶせるだろうか。
いやいや。ちょっと待て。
足が出ないから頭を使うのだった。
そうだ。そうだった。
そうだったっけ。
違う。違う。
なにを考えているのだ。
こんなことしている場合じゃなかった。
起きなければならなかったはずだ。
毛布なんか無視だ。
起きればいいのだ。
起きれば毛布なんか床にずり落ちてしまう。
それで一石二鳥だ。なんて賢い。
起きながらあくびをすれば一石三鳥だ。
素晴らしい。
天才かもしれないぞ。
さすがに一石四鳥というのは無理かな。
無理かどうかやってみなくてはわかるまい。
なにをやるか。なにをやっているのか。
そうだ。なにをやっているのだ。
いかん。いかん。
こんなはずじゃなかった。
すぐに起きねばいかんのだ。
ええと、どうすれば起きられるんだっけ。
いつものようにすればいいはずだが。
確か、まず上体をなんとか起こすのだ。
上体を起こすには腰を曲げればいい。
そうだ。曲げるのだ。
腰を曲げるのだ。
やった。
少しだけだが腰が曲がったぞ。
それにしては起きてないではないか。
なぜだ。
寝ぼけているのだろうか。
ああ、そうか。
横向きで寝ていたのだ。
横向きの姿勢で腰を曲げてもしかたない。
どうりで簡単に腰を曲げられたわけだ。
まぬけだな。
笑ってしまうな。
笑ってしまおうかな。
いいのかな。
誰にも遠慮することはないはずだが。
どうせ寝言と思われるくらいで。
わあ。なんだ。
どうなっているのだ。
笑ってる場合ではないぞ。
なにしてるんだ。
いいかげんにしろ。
すぐに起きないとまた眠ってしまうぞ。
ほら、起きるのだ。
今すぐ起きるのだ。
だめだ。体が重い。
寝返りも打てない。
なぜだ。わからない。
頭がおかしい。
眠い。眠いのだ。
たまらなく眠いのだ。
そうか。そうなのだ。
眠いからだ。
こんなに眠いから起きられないのだ。
だが、どうしてこんなに眠いのだろう。
寝不足だからか。
そうかもしれない。
いや、待てよ。
あるいは寝すぎだろうか。
そうかもしれない。
そうでないかも。
あまりにも眠いので判断できない。
そもそも、なぜ起きねばならんのだ。
眠いなら起きなくとも良いではないか。
よいではないか。のう、お女中。
色が白くてかわゆいわ。
ほれ、帯をとくのだ。
ほれほれ、コマのようにまわってみよ。
あれえええええ。
なにをやっておるのだ。
2009/01/26
これは雑誌で読んだ実話なのだが
泥棒会社があったのだそうだ。
事務所があり、社長がいて、社員がいて
表向きは平凡な会社を装っているが
彼らは泥棒して稼いだ利益によって給料を得ていた。
泥棒という手段による会社の運営には
やらなければならないことがたくさんある。
地域の下見調査と泥棒に入る建物の選定、
泥棒のために必要な道具の開発や購入、
泥棒としての技術訓練ならびに体力づくり、その他。
企画会議のようなものもあったはずだ。
盗品を現金化するルートも必要であり、
開発、営業、経理などの組織化も望まれる。
結局、この泥棒会社は御用となったわけだが
逮捕された泥棒社長の供述によると
泥棒はあまり儲からない、のだそうだ。