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2012/11/15
あっ。読んでくれてる。
ありがとうございます、本当に。
いやー、あなた良い人ですね。
こんな駄文を読んでくださるなんて。
いえいえ、とんでもない。滅相もない。
本心からそう思っておりますです、ハイ。
なにしろ内容ないですからねー。
私の頭ん中も行間もカラッポですよ。
それでもまだ読んでくださってらっしゃる。
あんたは偉い。私、尊敬しちゃいます。
あっ。えっ。お気に触りましたか。
す、すみません。どーも思慮が足りなくて。
ええと、まだ読んでくれてますよね。
見放しちゃったとかないですよね。
ごめんなさい。私、小心者なんで。
読者に嫌われちゃったかな、とか思って。
そうですよね。考え過ぎですよね。
それなのに内容、考えなさ過ぎですよね。
ええと、なに書こうかな。えーと。
あなた、なにかご希望ありますか。
BL小説とかゆーのですか。
なんだか流行ってますよね、あれ。
でも、よくわかんないんですよ、私。
あれ、女の方が読まれるんですか。
そうですか。まあいいでしょう。
どうせ書けませんから。
だいたい恋愛小説、駄目です。
かったるくて、鬱陶しくて。
それに長い話は無理ですよ。
途中で逃避したくなりますから。
結局、書きたくないんですね。
書くのって、けっこー疲れますもんね。
文字を読むのも疲れるでしょう。
どちらかというと、マンガ読みたいとか。
さて、どうしよう。困ったな。
うーん。なーんも浮かばん。
あの、まだ読んでらっしゃいますか。
誰も読んでないのに書いてたりしてませんよね。
なんか反応ないような気がするんですけど。
気のせいかなあ。どーもわからん。
おーい。聞こえてますかー。
いやいや。声じゃない。文章だからな。
ふん。もういいや。
どうせ誰も読んじゃいねーだろ。
ああ、くっだらねー。
なにやってんだ、俺は。
かしこまって書く必要ねえよ。
趣味なんだから、こんなの。
「あら、とても素敵な方ね」
「いやあ。みんなそう言うんですよ」
はいはい。もうやめたやめた。
自分でも読む気しねーもんな、全然。
いや、しかし。でも、まさか。
ここまで読んでる暇な奴、いねーだろーなー。
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2012/11/21 21:51
「さとる文庫」もぐらさんが朗読してくださいました!
2012/11/16 00:56
改作「聞いてください」を「こえ部」で朗読していただきました!
【 聞いてください 】
あっ。聞いてくれてる。
ありがとうございます、本当に。
いやー、あなた良い人ですね。
私の話を聞いてくださるなんて。
いえいえ、とんでもない。滅相もない。
本心からそう思っておりますです、ハイ。
なにしろ内容ないですからねー。
私の頭ん中、カラッポですよ。
それでもまだ聞いてくださっていらっしゃる。
あんたは偉い。私、尊敬しちゃいます。
あっ。えっ。お気にさわりましたか。
す、すみません。どーも思慮が足りなくて。
ええと、まだ聞いてくれてますよね。
見放しちゃったとかないですよね。
ごめんなさい。私、小心者なんで。
嫌われちゃったかな、とか思って。
そうですよね。考え過ぎですよね。
それなのに内容、考えなさ過ぎですよね。
えーと、なに喋ろうかな。えーと。
あなた、なにかご希望ありますか。
えっ、BLとかゆーのですか。
なんか流行ってますよね、あれ。
でも、よくわかんないんですよ、私。
あれ、女の人が聞くんですか。
そうですか。まーいーでしょう。
どうせ話せませんから。
だいたい恋愛の話、ダメです。
かったるくて、鬱陶しくて。
それに長い話は無理ですよ。
途中で逃避したくなりますから。
結局、あまり喋りたくないんですよね。
喋るのって、けっこー疲れますもんね。
話を聞く方も疲れるでしょう。
どちらかというと、歌を聞きたいとか。
ボカロとかアニソン、流行ってますよね。
私、知らなくて歌えませんけど。
さて、どうしよう。困ったな。
うーん。なーんも浮かばん。
あの、まだ聞いてらっしゃいますか。
誰も聞いてないのに喋ってたりしてませんよね。
なんか反応ないような気がするんだけど。
気のせいかなー。どーもわからん。
おーい。聞こえてますかー。
返事がないな。そりゃー電話じゃねーもんな。
ふん。もういーや。
どうせ誰も聞いちゃいねーだろ。
ああ、くっだらねー。
なにやってんだ、オレは。
かしこまって喋る必要ねーよ。
趣味なんだから、こんなの。
「あら、とても素敵なお声ですね」
「いやあ。みんなそう言うんですよ」
はいはい。もーやめたやめた。
自分でも聞く気しねーもんな、全然。
いや、しかし。でも、まさか。
ここまで聞いてる暇な奴、いねーだろーなー。
2012/10/22
観光バスが自宅に飛び込んできた。
やれやれ、またか。
急カーブの外側に建つ家の宿命か。
バスのフロントガラスが大きく割れている。
運転手のあんちゃんが笑顔で手を振る。
「やあ」
おれは笑顔になれない。
でも、返事くらいしてやろう。
「やあ」
バスガイドのねえちゃんも笑顔で手を振る。
「どうも」
なかなか美人。
おれは嬉しくなる。
「どうも」
乗客は女子高生の群、いや団体。
修学旅行の途中だろうか。
みんな笑顔で手を振る。
「ハーイ!」
素敵なコーラス。
おれは感動してしまう。
「ハーイ!」
まるで名所旧跡になったような気分だ。
さてさて、どこを案内してやろうか。
2012/10/16
額にキノコが生えてきたので
あわてて近所の薬局へと走った。
深夜営業の薬局の主とは顔なじみだった。
「あんた、運が良かったよ。もし鼻だったら」
「キノコが鼻に生えたら、どうなる?」
「そりゃ勿論、女の子に笑われます」
嬉しそうな主の笑顔。
こっちは嬉しくもなんともない。
なにはともあれ、薬だ。
あやしげな大小様々な薬品類が
いわくありげな棚に隙間なく陳列されている。
「額のキノコに効く薬、ないかな?」
「ええとだね、これは昔からある奴だけど」
「・・・ちょっと。それ、醤油だろ?」
「うん。焼いて掛けて食べると、すっごく旨いんだ」
よだれを垂らしている。
明らかに薬のやりすぎだ。
「お客様。どうもすみません」
店の奥から娘が現われた。
まだ学生だった。
彼女は父親である主を店の奥に下がらせる。
「最近、父はちょっとおかしいんです」
その初々しい頬を恥ずかしそうに赤らめる。
「ええと、額のキノコに効くのは、こちらです」
「・・・これって、あの、まさか・・・」
「そうです。まさに避妊具です」
2012/10/11
ねえ、ちょっと耳貸してくれる?
ううん、ひとつでいいの。
ふたつはいらないの。
あのね、これは内緒の話なの。
絶対に誰にも聞かれたくないの。
あら。
もちろん、あなたは別よ。
あのね、あのね、あのねのね。
困ったわ。
ううん、違うの。
なんだか恥ずかしくなっちゃって。
こらっ、だめよ。
勇気を出さなくっちゃ。
ああ、ごめんなさい。
独り言なの。
絶対に笑わないでね。
約束よ。
もし笑ったら、殺しちゃうから。
やーね、冗談よ。
冗談だったら。
あんたのそんなとこ、好きよ。
でもね、告白なんかじゃないの。
残念ながら、そんな話じゃないの。
笑わないでね。
平気な顔してね。
みんなに怪しまれたくないから。
そう。
やっと気づいたのね。
そうなのよ。
私たち、体が入れ替わっているの。
2012/10/07
白い制服の男に呼び止められた。
「君、女の子の足首をつかんだそうだな」
失礼な気はしたが、私はうなずく。
若い女性の足首は、私の趣味なのだ。
「しかも、頬ずりまでしたそうじゃないか」
あの柔らかな肌触りがよみがえる。
そのため、つい頬の筋肉が緩んでしまう。
「困るね。それ、ルール違反だよ」
理解に苦しむ、という表情を私は装った。
「そんなルールまであるんですか?」
「ないと思うだろう。
ところが、あるんだな、これが」
男は背中からリュックサックを下ろすと
中から一冊、分厚い本を引き出した。
それからしばらくページをめくっていたが
やがて私に細かい文字を示すのだった。
なるほど、確かに明文化されていた。
「ルールなら仕方りませんね」
私は靴と靴下を脱いで裸足になった。
男は地面にひざまずく。
そして、私の足首をつかんだ。
私は天を見上げる。
その瞬間、ふくらはぎに異様な感触があった。
「うっううう・・・・・・」
その感触あまりに耐え難く、
思わず声がもれてしまった。
「これからは注意しろよ。
なにしろルールなんだからな」
白い制服の男は言い捨てると
両手で頬をこすりながら立ち去った。
私は靴下を履きながら
どこまでも深く深く反省するのだった。
2012/09/14
あんたなんか あんたなんか
見たくない 聞きたくない
考えたくない もう知らない
やめてよ あっちへ行って
まったく どういうつもり
それ以上 近寄らないで
いいかげんにしてよ もう
昔は そんなじゃなかった
どうして 変わっちゃったの
だから 抱きつかないでよ
触れるのも いやなんだから
そんな口 近づけないで
ああ 服が破れちゃう
いやよ 無理だってば
なんで わかってくれないの
なんで 普通になれないの
なんで そんなこと言うの
だから きらいなのよ
ほら すぐ泣く
泣けばいいと 思ってるのね
冗談じゃない からね
夢 見てるだけなのよ
まだわかんないの
そんなの うまくゆくはすない
誰だって 許してくれないよ
ああ もう いやだったら
あっちへ行ってよ しっ しっ
ちょっと 喋れるからって なによ
飼い犬の くせに
2012/09/10
美女が哀願するのである。
その美しい瞳を潤ませて。
その美しい唇を震わせて。
「わたし、もっと美しくなりたいの」
美しい声だ。
聞き惚れてしまう。
「わかりませんね。あなたはとても・・・・・・」
「ええ、そうなんです。美しいのです」
ますますわけがわからない。
「でも、もっと美しくなりたいのです」
美しい眉が曇る。
なかなか悩ましい。
耳の形も文句ない。
顎のラインも素晴らしい。
鼻なんか舐めたいくらいだ。
スタイルも抜群。
服のセンスも最高。
完璧である。
欠点が見つからない。
「このままで十分だと思いますよ」
女はうなだれ、ため息をつく。
思わず抱きしめてやりたくなる。
それを我慢して女の肩に手を置く。
ついに女は泣き出してしまった。
その美しい涙。
しかし、そこで気がついた。
「ひとつ、見つかりましたよ」
「えっ?」
「あなたはもっと美しくなれます」
「私のどこが?」
「泣き声が、いまひとつですね」
女の涙が止まった。
「もっと美しい声で泣けます?」
「ええ、大丈夫ですよ」
その笑顔の美しさといったら!
2012/08/24
僕は、砂浜の海岸線すれすれに穴を掘り、
まぬけな魚が落ちてくるのを待っていた。
そこへ幼なじみの歯医者がやってきた。
「どれどれ、口を大きく開けてごらん」
彼は根っからの歯医者である。
歯医者でない彼を僕は知らない。
僕は、素直に口を開けてやり、
彼に歯をよく見せてやる。
「よしよし。ここだ、ここ」
彼は、耳のすぐ下に手をかけると、
不気味な音を立て、僕のアゴをはずした。
それを砂浜に掘られた穴に投げ捨てるや、
手提げカバンから鋼鉄のアゴを素早く取り出す。
生身のアゴがはずれた部分に鋼鉄のそれを合わせ、
耳の下あたりにボルトを差し込む。
さらにスパナを使ってナットを締める。
「うんうん。ピッタリだ」
なにがピッタリなのか
僕にはよくわからない。
そんなことをされているうちに
いつの間にか足もとに潮が満ちてきていた。
まぬけな魚が一匹、砂浜の穴に落ちていて
捨てられた僕のアゴを枕に眠っている。
2012/08/22
浅いプールを這っている。
潜水は勿論、溺れることすらままならぬ。
水深が足らないために泳げないのだ。
ただし、プールの底は滑らかなので
肘や膝が擦れて痛い、ということはない。
たくさんの人々が這っている。
スクール水着の女の子が多いところを見ると
どうやら学校の付属プールらしい。
いくらか水深のあるプール中央では
泳ぐように這う人の姿も見える。
いわゆる肘泳ぎである。
肘泳ぎで這い進み、女の子にぶつかると
その体をトカゲのようにヌルリと乗り越えてゆく。
女の子に乗り越えられることもある。
これが、なかなか楽しい。
気持ち良い。
やめられなくなる。
「しかし、肘泳ぎは疲れるな」
プールサイドで日光浴してる友人に声をかける。
彼は肘泳ぎの名人なのだ。
「布団の中を這ってるみたいだろ」
その通りなので、僕は感心する。
「まったくだね」
本当に布団の中を這ってるみたいだ。
2012/08/20
拍手に迎えられ
指揮者が舞台に登場した。
咳払いが止むのを待ち
指揮棒は振られた。
静かな海交響楽団による
定期演奏会の開演である。
『霧の入り江』より序曲、
組曲『バッカスの散歩』など。
滞りなく演目は進み
安らかな時が流れ
いつの間にか
すべての演奏が終了していた。
「あなたは奇跡の指揮者です!」
見知らぬ観客が楽屋を訪れた。
「私に夢を見せてくれました!」
感激のあまり指揮者に抱きついた。
その頬は涙で濡れていた。
「長年の不眠症が治ったんです!」