Tome Bank

main visual

Tome館長

m
r

Tome館長

CREATOR

  • 3

    Fav 1,204
  • 9

    View 5,858,027
  • p

    Works 3,356
  • つまらん呪い

    2016/01/31

    怖い話

    どうやら私は呪われているようなのだ。

    しかも、つまらん呪いなのだ。

     

    どんなに興味深い内容でも 

    私がかかわると、とたんに興味が失せてしまう。

     

    すぐに私は退屈してしまう。

    もうつまらん、と思ってしまう。

     

    他の人たちは好奇心やら集中力が持続して 

    いつまでも飽きずに繰り返せるというのに。

     

    まさしく、つまらん呪いである。

     

    もっとも、どちらが呪われているのか 

    正直なところ疑問に思う。

     

    他にもっと面白いことあるのに、なぜ? 

    と、つまらんから問わんが、問いたくもなる。

     

    しかしながら、多数決にはかなわない。

    なんだかんだ言っても、数は力である。

     

    そもそも、その多数決こそ

    じつにつまらん意思決定方式ではなかろうか。

     

    なにしろ、その多数決によって 

    多数決そのものを否定することさえできるのだから。

     

    というか、たとえば投票率が50%を下回った場合 

    すでに多数決制度は否決されているではなかろうか。

     

    ・・・・と、まあ、そうは思うものの 

    やはり便宜上、反対してもつまらん気はする。

     

    まったくもって、じつにつまらん呪いであるが 

    さて、そろそろこのへんで、この話もつまらんかな。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 君はいない

    2016/01/19

    怖い話

    ふと 

    目覚めて 

     

    ぼんやりして 

     

    君を抱こうとして 

    君がいないことに気づく。

     

     

    そうか。

    もう君はいないのか。

     

    そうだ。

    もう君はいないのだ。

     

     

    君はいない。

    君を抱けない。

     

    僕は君を抱けない。

    もう僕は君を抱けない。

     

     

    そうさ。

    僕が君を殺してしまったから。

     

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 毒抜き

    2015/12/21

    怖い話

    追われている。そんな気がする。

    なんとしても逃げなければならない。

     

    そいつの裂けた口には鋭い牙が並んでいる。

    きれいな穴の列を頭蓋骨にこしらえるはず。

     

    そいつの歪んだ手にはおぞましい爪が生えている。

    傷口を開いて血まみれの心臓をえぐり出すはず。

     

    なのに動けない。足が重い。

    両足に黒く長いものが巻き付いている。

     

    背後から臭い息が忍び寄る。

    よだれのようなものがうなじに垂れた。

     

    「さて、どこから喰ってやろうか」

     

    思わず返事をしてしまう。

    「私は毒です。おなかを壊します」

     

    「ほほう、そうかい。では、まず毒抜きをせねばな」

    「・・・・そうですね」

     

    そうして、それから毒抜きなるものをされた。

     

    すっかり毒を抜かれてしまい、もう何も言えないが 

    そのまま喰われた方がマシだった気がする。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 落ちてしまいそう

    2015/12/12

    怖い話

    ビルの屋上にいる。
    5階建てくらいだろうか、そこそこ高い。

    なのに、フェンスは低い。
    クルマ止めブロックほどの高さしかない。

    なぜか中学生の頃からの友人と一緒だ。
    冗談みたいに彼が私の肩の上に乗っている。

    そして、彼は執ように重心を移動させる。
    そのため私は、フェンスぎりぎりのところまで歩かされる。

    眼下にコンクリートの地面が見える。
    小さく見える自転車や自動車。

    恐怖のあまり、臓器が縮みそうになる。
    「あぶない。やめろ。やめろったら」

    しかし、ますます友人はフェンスの外側へ重心を移動させる。
    彼が何を考えているのか、さっぱり理解できない。

    「あ、あぶない」
    本当に落ちてしまいそうだ。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • とりあえず怖い話

    2015/12/02

    怖い話

    寝ながら 
    とても怖い話を思いついた。

    ただし 
    その話を語ったり書いたりすると 

    まるで怖くなくなってしまう 
    らしいのだ。

    「なんだそれは?」

    不審に思いながらも 
    起きようとすると 

    頭がぼんやりしてきて
    話の中身が消えそうになる。

    「これはいけない」
    と 

    あわてて寝直して 
    なんとか思い出すのだが 

    なんとなく
    どこか違うような気もしてくる。

    「どうやら、このままでもいけないようだ」

    ここはとりあえず 
    思い出せるところまで思い出して 

    とりあえず 
    書き留めておくしかあるまい。

    そう考えて 
    とりあえず起きて 

    とりあえず書いたのが 
    この話。

    やはり 
    怖くもなんともない。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 霊気点検の日

    2015/11/28

    怖い話

    「電気設備の安全性については問題ないのですが」
    帽子をかぶった担当調査員の男が言う。

    「わずかですが、霊気が漏れているようです」


     電気設備安全点検の調査は 
     電気事業法の定めにより実施される。 

     法令に基づき国に登録された電気設備調査機関が 
     電力会社からの委託を受け、一般住宅や商店を調査する。


    (こいつ、なんだ?
     副業で仏壇でも売るつもりか?)

    不信感あふれる私の表情を見て、男は笑う。
    「この仕事を長年やっておりますと、霊感が強くなるのですよ」

    胸に写真入り調査員証のあるユニホーム姿の男の説明によると 
    電気と霊気は性質が似ているのだそうだ。

    霊気が漏れる漏霊現象の痕跡は 
    室内にある分電盤の漏電遮断器にも表れる、と言う。 

    「具体的にはどのような・・・・」
    「いや。はっきりしてなくて、なんとなくの感じなんですけどね」

    ここは、なんとなく納得したフリをするしかあるまい。

    「それで、その漏霊があると、なにか問題でもあるのですか?」
    「いや。普通の状態の普通の人には問題ありません」

    「・・・・普通でない状態だったり、普通でない人には?」

    そこで男は青ざめた。
    「し、失礼しました!」

    男は脚立やら道具一式を抱え、あわてて立ち去った。


    (すると、どこか普通でないところがあったのかな)

    私は首をひねった。
    あるいは、ちょっとひねり過ぎたかもしれない。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 悪い子はいらん

    2015/11/20

    怖い話

    悪い子は邪魔だな。
    迷惑だし、役に立たんから、いらん。

     

    そんな悪い子は、学校の校舎になってもらおう。
    うん、それしかあるまいて。

     

    こっそり連絡しておくとな、ある指定された日に 
    政府の役人か、政府の委託会社の怖そうな社員がな
    黒くて丈夫な装甲車に乗ってやって来てくれて 
    悪い子を捕まえて連れ去ってくれるんだ。

     

    そのまま公にされてない秘密の工場に運ばれて 
    服を脱がされ裸にされて 
    妙な液体入り水槽の中に投げ込まれる。

     

    その妙な液体に丸一日も浸かっておれば 
    そのうち骨が柔らかくなる。

     

    適当な頃に水槽から網みたいなのですくい上げられて 
    容器に入れられ、ベルトコンベアで運ばれて 

    ゴーン、ゴーン、と物凄い音のする大型機械の中で 
    引き延ばされたり、平らにされたり、切られたり削られたり 

    とにかく、あれこれ無慈悲な自動制御の加工を受ける。

     

    そうすると、板になったり角材になったりしてな 
    十分に乾燥させれば、立派に建築資材として使えるようになる。

     

    それらを改築や新築をする学校の校舎に用いるわけだ。

     

    木目みたいに悪い子の顔の表情が残る場合もあって 
    そういう素材は校舎の目立つところに使うことになっておる。

     

    踏まれたり蹴られたり、汚されたり傷つけられたりする度に 
    小さく悲鳴をあげる板もまれにあるそうだから 
    生徒たちへの悪い子になる抑止効果はバッチリだ。

     

    さて、そろそろ連絡しようかな。

     

    しかし、まあ、わざわざ連絡せんでも  
    他の誰かが困って、先に連絡しとるかもしれんがの。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 交差点の女

    2015/11/08

    怖い話

    人混みを縫うように歩き続けていた。
    ここがどこらへんなのか判然としない。

    交差点で信号灯の色が変わるのを待つ。

    横断歩道の向こう側の女と視線が合った。
    見知らぬ美しき他人であった。

    大切な瞬間が訪れたような気がした。
    このまま別れたら必ず後悔する。

    しかし、話しかける勇気も自信もない。
    悩んだ末、女を尾行することにした。

    気づかれてもいい、と思った。
    話しかけるきっかけになるだろう。

    横断歩道を渡ってから何か思い出したような 
    そんな素振りで女の背後にまわる。

    夕暮れが迫っていた。

    女は人通りの少ない路地裏に入って行く。
    うるさいほどにハイヒールの靴音が響く。

    ふと、反射音で周囲の位置を探るという 
    コウモリの習性を思い出す。

    たとえそうだとしても、靴音をよける術すべはない。

    だんだん辺りが暗くなる。
    街灯ひとつなく、窓明かりすらない。

    ハイヒールの靴音だけが頼り。

    しかし、それが靴音などではなく 
    獣けものが噛み合わせる牙きばの音に聞こえ始める。
     
    ひどく生臭い、いやなにおいがした。

     

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 学校の七不思議

    2015/11/06

    怖い話

    学校の怪談にまつわる話なんだけど 
    僕が通う学校にも七不思議があるんだ。


    真夜中になると、グラウンドの真ん中に 
    戦前の旧校舎が建っているのが見える。

    とか 
     
    昔のブルマー姿の女子生徒の腰から下だけが 
    渡り廊下を歩いていた。

    とか 

    目を閉じて段数を数えながら一人で上がると 
    十二段の階段が十三段になっている。

    とか 

    トイレの中で、ノックされて「入ってます」と言うと 
    「おれの胃袋の中だ」と返事された。

    とか 

    音楽室のバッハの肖像画のカツラがはずれていた。

    とか 

    理科室の骨格標本が肩をもんでいた。

    とか 

    そういう変な話が六つもあるんだけど 
    七つ目がないのに、なぜか七不思議なんだ。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
  • 三つ星

    2015/10/10

    怖い話

    花火見物の帰りであろうか。

    浴衣姿の君と歩きながら
    僕は夜空を指さし、説明している。

    「あれは乳首座。
     なぜなら、ふたつある」

    君は無邪気に笑う。
    「それじゃ、あそこの三つ星は?」

    小さく三角形に並ぶ星を示す君。

    パンティー座と陰毛座が浮かんだものの
    残念ながら倒立していない。

    額に巻く死装束の白い三角の布を連想させる。

    しかし、それを言ったら
    せっかくのムードが台なしだ。

    適当な命名もできなくて
    僕は言い淀む。

    すると、君は振り向いて
    「あれは三つ目座よ」

    にっこり笑う。

    ああ、なるほど。
    君の額に光る、三つ目の目。

     

     

    Comment

    • ログインするとコメントを投稿できます。

      投稿
RSS
k
k