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    Works 3,356
  • 渚の恋

    2012/09/30

    空しい詩

    街は人の心を閉鎖する

    海はそれを解放する


    だから

    渚で芽生えた恋を
    そのまま持ち帰るのは

    至難の業
     

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  • 美女の食堂

    2012/09/29

    ひどい話

    誰かと一緒だったような気がする。
    あの夜、ひとりではなかったはずだ。

    空腹でもないのに食堂に入った。
    かなり酔っていたらしい。


    「美女の舌びらめのムニエルをくれ」

    ほんの冗談のつもりだった。
    美しいウェイトレスだったから。

    「はい。かしこまりました」

    なぜか笑ってもらえなかった。


    しばらくして運ばれてきたそれは
    なんとも奇妙な料理だった。

    ウェイトレスの顔は蒼ざめていた。

    片手で口もとを押さえているのは
    吐き気をこらえているのだろうか。


    さすがに心配になってきた。

    「あんた、大丈夫か?」

    その娘は必死で首を振るのだった。
    しっかりと口もとを押さえたまま。
     

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  • さよならの前に

    2012/09/28

    愛しい詩

    これで僕たちは

      どうしたって
       本当に

         お別れだけど

           ちょっとだけ
          ほんのちょっとだけ

        お願い


     さよならの前に
      微笑んで
     

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    • Tome館長

      2012/11/18 19:35

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2012/10/25 02:05

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 風の祭り

    2012/09/27

    楽しい詩

    風の横笛
     吹く夜は

       雷太鼓も
        鳴りまする


      ピーヒャラ
       ドンドコ

         ピーヒャララ


    風の祭りの
     笛太鼓

       時には鐘も
        鳴りまする


      ピーヒャラ
       ドンドコ

         ガラガラドン
     

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    • Tome館長

      2013/08/09 19:03

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2013/08/08 16:53

      「広報まいさか」舞坂うさもさんが朗読してくださいました!

    • Tome館長

      2013/08/08 09:26

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 待つわ

    印象のない街角で待っていた

    通り過ぎてゆく顔のない人々
    誰もかれもさびしそうに見える


    手首にすがるように立ち去る
    針をなくした腕時計たち

    嬉しくも哀しくもない思い出


    話しかけたりしないで欲しい

    待っているだけなのだから
    いつまでもいつまでも

    ずっとこうして
    こうやって
     

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  • なんでもないです

    難しいことを易しく言えない人は
    易しいことまで難しく言う。


    もし今、恋愛したい気分なら
    ただ退屈しているだけなのかもね。


    いかにも冒険らしい冒険ほど
    冒険していない冒険もない、と思う。


    幽霊が現れたら怖そうだけど
    むしろ現れないから怖いのでは。


    だからなんだ、と怒鳴られたら
    なんでもないです、と謝ろう。
     

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  • 腐った恋の物語

    2012/09/25

    暗い詩

    曲がりくねった地層の夕焼け
    断崖に建てる朽ちた十字架


    病気の蟹は泡を吹きながら
    難破船の帆を切り刻んでいる

    なにが蟹を駆り立てるのか
    帆にもマストにもわからない


    渚の貴婦人が貝の胸をはだけ
    海牛の素足でそっと歩み寄る

    そのまわりに波の舌がからむ
    瞳の奥で星砂が切なげに泣く

    「あなたを待っていたの
     こんなに潮が満ちてしまって」

    髪は海草 海百合の飾り
    唇は珊瑚 黒真珠の入れ歯


    漂着したばかりの潮騒の缶詰
    腐乱死体の浜辺の恋の物語
     

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  • 揺れる小舟

    2012/09/23

    愛しい詩

    霧に煙る湖面に小舟

      ゆらりろ ゆらりら
       ゆれ ゆれて

      おぼろ月ふたつ
     櫓はひとつ

       ゆれるや小舟
        寄る辺なく


    濡れたなら
     絹の衣は肌の色

       ぬらりろ ぬらりら
        ぬれ ぬれて

      波紋は乱れし
     蛾の鱗紛

       笛吹くな
        竜神様が顔を出す
     

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    • Tome館長

      2013/08/06 17:20

      「ゆっくり生きる」haruさんが動画にしてくださいました!

    • Tome館長

      2013/08/04 09:59

      「こえ部」で朗読していただきました!

  • 崩落の響き

    2012/09/23

    怖い話

    三年前の冬、雪山でなだれに襲われた。
    悪夢のような崩落の響き。

    僕は奇跡的に助かった。
    しかし、恋人は死んでしまった。

    なぜそうなったのかわからない。
    あれから僕は登山をやめた。

    今、新しい恋人が僕の横で眠っている。
    やすらかに幸せそうに眠っている。

    雪山のように白く大きなホテルの一室、
    雪のように真っ白なシーツの上で。

    生きていることに感謝せずにいられない。
    しかし、まさにその瞬間だった。

    ベッドが激しく揺れ、振り落とされた。
    地震だ。恐ろしい地鳴り。崩落の響き。

    いつか聞いた響きと同じ。
    忘れかけていた思い出が蘇る。

    懐かしい声まで聞こえてくる。
    「アナタモ、マキコンデ、アゲル」
     

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  • 乙女の落ちる

    2012/09/22

    暗い詩

    落葉よ 落葉

      踏まれて つぶれて
       土のよう


      誰が踏んだ
       みんなが踏んだ

         雪が降ったら
          冷たかろう


    乙女よ 乙女

      爪を噛んでは
       いけません


      舐めてごらん
       指がとける

         蜂蜜かけたら
          甘かろう


    乙女は 落葉

      枝から離れて
       風まかせ


      落ちてみたい
       落ちたくない

        虫に食われりゃ
         痛かろう
     

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