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2014/01/31
虫の音 途絶え
葉は枯れ落ち
もう陽は
高く昇らない
木枯らしに うち震え
猫背の犬となり
雨降れば ひたすら
逃げる算段ばかりなり
このまま
朽ち果つる前に
われら なにを語りし
なにを残せし
ああ しかし
うやむやに時は過ぎ
井戸はすたれど
秋の日はつるべ落とし
2014/01/29
疲れ果ててしまったら
古墳の底で眠ります
勾玉 管玉
じゃらじゃら首に飾って
奴婢の身代わり
埴輪をたくさん埋めて
深く静かに
古代の夢を見たいだけ
青銅の鏡とか甲冑とか鏃とか
そんなのいらない
幾千年幾万年も
眠り続けていたいだけ
世界の果ての向こう側に何があるのか
世界の始まりの前に何が終わったのか
世界の終わりのあとに何が始まるのか
あれこれ空想してみたいだけ
夜になれば 古墳の上
くるりと蛍が舞うだろう
静かにゆっくり
銅鐸を鳴らしておくれ
2014/01/26
また会おう
いつかきっと
帽子かぶって
サングラスかけて
マスクまでして
他人のふりして
ともかく君に
気づかれないように
こっそり そっと
また会おう
2014/01/22
どなたか拾ってください
この愚かな生き物を
どなたか拾ってください
この壊れてしまった玩具を
どなたか拾ってください
この切り裂かれた書物を
どなたか拾ってください
この朽ち果てた流木を
どなたか拾ってください
この腐臭漂う屍を
どなたか拾ってください
これら捨てられし言の葉を
2014/01/19
昔々、あるところに
お爺さんとお婆さんがいました。
お爺さんはパソコンでブログを更新し、
お婆さんはケータイでゲームに余念がありません。
裏山の林には竹が光っていたり、
近所の川には大きな桃が流れていたりするのですが
当然ながら
ふたりはまったく気づきません。
そういうわけで
まったくなにもおもしろいことが起きないため
物語はこれでおしまいです。
やれやれ
ひどい話があったものです。
2014/01/16
約束してはいけない。
それは
あなたを縛るから。
「ああしろ」
「こうしろ」
過去のあなたが
未来のあなたに言いつける。
いつかのどこかに
あなたを固定する。
こいつやあいつに
あなたを従属させる。
見えない手枷足枷、
重い鎖、または牢獄。
信頼やら誠意やら愛情やら
曖昧模糊を証文に。
2014/01/13
故郷なるもの
失われて久しき
故郷あり
と言えば あり
また なし
と言わば なし
いかに時空
占めようと
故郷と思えねば
もはや故郷にあらじ
なべて思い出
時の大河に流れ去り
故郷 はるか遠く
わずかに近く
風化しつつも
心の内のみ
存続す
2014/01/11
ヘイ ブルー
ヘイ ブルー
ヘイヘイ
こまんたれブルース
片眼ドロリと垂れ落ちる
イエーイ
お元気ですかって?
はっ 何それ?
こまんたれぶ?
ウイウイ
脳みそズルズル垂れ落ちる
イエーイ
腐ってるかい?
イエーイ
におうかい?
イエーイ
たまらんぜ
ウー
やってられねーぜ
ベイベ
ああ そんなんじゃ ダメダメ
こまんたれぶ
こまんたれぶ
こまんたれブルース
おお イエー
2014/01/08
呪文があるの
呪いの言葉
秘密なの
誰も知らない
教えてくれない
この呪文だけは いけないの
絶対に唱えちゃ いけないの
声に出しては ダメ
紙に書いても ダメ
考えるだけでも 危険なの
ふと思い出せば
あちらこちらで災い起こる
だから あなた・・・・
この呪文
もしも知ってしまったら
すぐにあなたは死にましょう
他の誰かに知られる前に
すぐにあなたは死にましょう
2014/01/05
言葉つくろえば
心やぶるる
笑顔ととのわば
涙ながるる
真綿のごとく
首しめる
浮世の帯に
からまれし
嗚呼 われ
馬鹿ゆえに
鋏つかえど
やりきれぬ