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2011/03/15
携帯音楽プレーヤーで音楽を聴く。耳からは音が入ってくる。
しかし例えばそこが電車の中なら、目に入ってくるものは音楽じゃない。目に入ってくるのは、人であり、電灯であり、窓であり、車内灯の明かりだ。肌で感じるのは、車内の熱気や空調設備の風。耳から音楽は入ってくるが、実際に感じているリズムは、列車が枕木を通過するリズムだ。
香水をつける。花の香り。しかし、そこに花はない。風にそよぐ茎の音もない。上を見上げてみても、色彩が映える空がない。
画集を見る。それは小さな点の集まりだ。部屋に灯っているのは、蛍光灯の灯り。画廊の凛とした空気もない。遠く離れて見ることもできない。鑑賞の邪魔をする、様々な生活の音。
感覚が分断されている。ダンスミュージックをかけながら、身体が動かないとはどういうことだ。ジャズを聴いて、なぜスウィングできないのか。そのくせ、音楽を語る。知識と理論をひけらかす。頭と感覚が分離している。