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Comment※友人の書く短編の挿絵として制作。
【Blue sea】
ある夏の日。
俺は沖縄にいた。
知り合いのダイビングショップに転がり込み、
客が使った機材のメンテナンスをしながらダイブポイントを稼いでいた。
夜になると太陽と海にもみくちゃにされた身体は、じんわりと疲れを湧き出させて火照りだす。
店の床に仲間と雑魚寝しだして二週間。
その夜はオーナーが家に泊めてくれることになった。
オーナーの家は島の端っこで、
家の裏は浜辺、空には嘘っぽいくらいの星がひしめいている。
近所の人たちも集まりだして、
ちょとした宴会が始まった。
デイゴの花が咲く庭で、
陽気な海人の老人が三線を爪弾き、
オーナーが唄いだす。
俺たちは日付けも変わった頃から呑み始め、
島の唄と風と人に心地よく酔った。
そこに一人の女がやって来た。
俺の座っている所からは少し離れている、
日に焼けた肌は美しく光って見えた。
さっと浜から潮風が駆け抜けた時に、
女の風呂上りの髪の香りが俺まで届いた。
工事現場で使う黄色いライトの下で、
宴の時は進んでいく。
星は俺たちに降り注ぎ遠慮することも無い。
老人の三線がだんだんと陽気になった時、
女と俺の視線が導かれるように重なった。
俺と女が一緒に微笑んで、
カチャ−シーを踊り始めると、
釣られて皆も立ち上がる。
男も女も、老いも若きも皆で踊る。
命が跳ねて、喜びさわぐ。
いつのまにか女と俺の距離は背中合わせに、女は柔らかな唇を優しげに微笑ませ、
空から星を摘み取るように美しく踊った。
二度とないこの時に、星降る浜辺で言葉も無く、俺たちは空に舞い上がった。
星は誰の道でもその輝きで照らしだす。
喜びも悲しみも人の心が生出す波間の揺らぎ。
ありのままの青がくれる優しい気持ち。
デイゴの花さえも浮かれ出すような夜の話。
銅版画
2005年
Blue sea
by 原田 奈央子
※友人の書く短編の挿絵として制作。
【Blue sea】
ある夏の日。
俺は沖縄にいた。
知り合いのダイビングショップに転がり込み、
客が使った機材のメンテナンスをしながらダイブポイントを稼いでいた。
夜になると太陽と海にもみくちゃにされた身体は、じんわりと疲れを湧き出させて火照りだす。
店の床に仲間と雑魚寝しだして二週間。
その夜はオーナーが家に泊めてくれることになった。
オーナーの家は島の端っこで、
家の裏は浜辺、空には嘘っぽいくらいの星がひしめいている。
近所の人たちも集まりだして、
ちょとした宴会が始まった。
デイゴの花が咲く庭で、
陽気な海人の老人が三線を爪弾き、
オーナーが唄いだす。
俺たちは日付けも変わった頃から呑み始め、
島の唄と風と人に心地よく酔った。
そこに一人の女がやって来た。
俺の座っている所からは少し離れている、
日に焼けた肌は美しく光って見えた。
さっと浜から潮風が駆け抜けた時に、
女の風呂上りの髪の香りが俺まで届いた。
工事現場で使う黄色いライトの下で、
宴の時は進んでいく。
星は俺たちに降り注ぎ遠慮することも無い。
老人の三線がだんだんと陽気になった時、
女と俺の視線が導かれるように重なった。
俺と女が一緒に微笑んで、
カチャ−シーを踊り始めると、
釣られて皆も立ち上がる。
男も女も、老いも若きも皆で踊る。
命が跳ねて、喜びさわぐ。
いつのまにか女と俺の距離は背中合わせに、女は柔らかな唇を優しげに微笑ませ、
空から星を摘み取るように美しく踊った。
二度とないこの時に、星降る浜辺で言葉も無く、俺たちは空に舞い上がった。
星は誰の道でもその輝きで照らしだす。
喜びも悲しみも人の心が生出す波間の揺らぎ。
ありのままの青がくれる優しい気持ち。
デイゴの花さえも浮かれ出すような夜の話。
銅版画
2005年
published : 2010/02/05