岡田千夏

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京都府京都市

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  • 猫のお客さん

     ときどきみゆちゃんは玄関に下りていって、ドアの下のすきまから外の空気を匂ったり、目隠しに吊るしている猫の絵のついた暖簾の向こうへ首を伸ばして通りの様子をうかがったりしているのだけれど、一ヶ月くらい前の、まだそんなに寒くない夜、ドアの前でにゃーおにゃーおと鳴きながら行ったり来たりを繰り返して、いつもと様子が違うので、外になにかいるのかしらと暖簾のすきまからこっそりのぞいてみたら、ドアのすぐ前に、真ん丸な黒目が可愛らしいキジトラ猫が、ちょこんと座っていた。
     家の中と外にいる猫同士が、どうやってお互いの存在を知ったのだろうと不思議に思って、せっかく来てくれたのだから、ちょっとあがっていってもらえたらいいのにと、無理なことを考えたりしながら、暖簾のすきまから見ていたら、ちょっと後ろを振り返ったキジトラの首にピンク色の首輪が見えた。
     しばらくしてもう一度のぞいたら、もうキジトラの姿はなかった。本当に、あんな可愛いお客さんだったら、いつでも来て欲しいくらいなのだけれど。

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  • 猫とシクラメン

     このあいだ、植物園にミケを探しに行ったときに、園内の販売コーナーでシクラメンを買った。シクラメンを選ぶときは、葉が元気なものがいいとか、葉っぱの数だけ花が咲くというようなことを聞いたことがあるから、もりもりと葉に勢いのある、フューシャ色のシクラメンを買った。
     何年か前にも一度、シクラメンを買ったことがあって、そのときは濃いピンクで、二、三ヶ月のあいだ花を楽しめた。花が終わったあとの、球根の状態になったシクラメンに夏を越させるのは難しいらしいけれど、なんとかなるかしらと思って捨てずにそのまま放っておいたら、やっぱりそんないい加減なことで難しいとされる越夏が出来るはずもなく、秋頃になっても、鉢の中で眠っているはずの球根はうんともすんとも云わないので、掘り返してみたら、土の中から米粒よりまだ小さい半透明のくねくねした虫がいっぱい出てきて、驚いて捨てたのだった。
     あたらしく買ったシクラメンを、台所の窓際に置いたら、殺風景だった台所が、シクラメンの赤で突然明るくなった。
     ところが、念のためネットで調べてみたところ、シクラメンには毒があるらしかった。猫がいる場合には、注意しなければならない植物らしい。もっとも、そのサイトの毒草の表を見たら、普通に庭木として使われているような植物もたくさん入っていて、みゆちゃんはというと、はじめちょっと匂いを嗅いだだけで、シクラメンには無関心なようであるし、それほど気にしなくてもいいものかもしれないけれど、一応、シクラメンをどこに置くべきかと考えている。

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  • 小鳥の落し物

     小鳥が種を運んでくる。庭の雑草の中に、ちょっと見慣れない草が生えていたり、なにかの小さな木の赤ちゃんが生えていたりするのは、小鳥の落し物である。
     前の年に生えていたヨウシュヤマゴボウもそうだし、その後釜に座ったイヌホウズキも鳥の仕業だろう。イヌホウズキは実にも毒があるのだけれど、小鳥は一度にたくさん食べないで少しずつ食べるので、中毒にはならないのだというような話を、どこかで読んだ。
     この春には南天によく似た木も生えてきて、実際、本当の南天ではないかと期待半分に思っている。今年は花も実もつかなかったけれど、来年は、実を結ぶかもしれない。
     鳥が運んでくる種は、何が生えてくるかお楽しみの福袋みたいである。ときどき、洗濯物の上にやられることもあるけれど、それもまあ、致し方ない。

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  • 小鳥たち

     庭先からぴーぴーという聞きなれない小鳥の声が聞こえてきた。そうっとのぞくと、白い胸元に黒いネクタイを結んだような、可愛いシジュウカラであった。二、三羽いて、地面の何かをついばんだりしていた。メジロも一羽来ていた。
     一月ほど前の暖かい日に、実家の庭で息子を遊ばせていたら、突然ちーちーという声が騒がしく聞こえたかと思うと、十羽ほどのメジロの群れが我先にと入り乱れるように飛んできて、庭の柿の木の柿をいっせいに食べ始めた。熟した実ばかりをちゃんと選んで、十羽が落ち着きなく、実から実へと飛び回り、突付き、振り返り、羽ばたき、柿の木は大騒ぎになったのだけれど、その騒ぎも数分のあいだだけで、メジロたちはもう満足したのか、やってきたときと同じように、いっせいにどこかへ飛び去っていって、後に残された私は何となく呆然とした。
     それから、何週間かあとの、また暖かい日には、今度はエナガの群れが柿木にやって来て、チュルルとさえずりながら、メジロと同じように騒々しく柿を食べ回ったあと、メジロよりかは長くいたけれど、やっぱり十分もしないうちに、飛んで行った。メジロもエナガも、そんな群れでいるところは見たことがなかったから、なんだか貴重なものでも見たような気になった。
     小鳥は可愛いから好きである。動きがせわしなくて、ちょんちょん右を向いたり左を向いたりするしぐさがいい。小さな鳥を飼いたいけれど、さすがに猫と小鳥は仲良くなれないだろうから、無理な話だと思う。

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  • 陽のあたるベンチで

     植物園の紅葉はいまが見頃で、黄色や濃い赤のグラデーションが、朝の光を透かしてきらきら輝いていた。
     また、ミケちゃんに会いにきた。いいお天気で、紅葉の向こうには雲のない青空が広がって、風もなく暖かい。
     植物園の中心にある芝生の広場に行って、お昼のパンを食べていたら、向こうの売店からエプロン姿のおばさんが飛び出してきて、なにかを追い回すのが見えた。猫らしかった。植木の下にぱっと逃げ込んだので、そのときはよく見えなかったけれど、おばさんが店の中に戻ってしばらくすると、にゃーん、にゃーんと鳴きながら歩くミケちゃんの姿が植木のあいだに見えた。
     売店の客から、食べ物をもらうことを覚えたようである。おばさんに追いかけられようとも、懲りずにまたにゃーにゃー鳴いて出てくるとは、ミケちゃんもだいぶたくましくなったらしい。
     近くに行ってミケちゃんと呼ぶと、すりすりと寄ってきた。二週間前に来たときには、まだあまり人に慣れていなかったのに、驚くような変わりようである。食べ物をもらうための処世術を身につけたのだろう。背中をなでたら、まだじゅうぶんではないけれど、手のひらに背骨がこつこつと当たった前回に比べると、肉付きがよくなっている。
     だけどやっぱりお腹はすかしていて、キャットフードを出したら、まったく余裕がなくなって、手でかき込むようにがつがつと大量に食べた。ようやくお腹がいっぱいになると、日の当たる暖かいベンチの上に寝そべってみたり、膝の上に登ってきて、ごろごろと喉を鳴らし、両方の前足を交互に爪を出してにぎにぎしたりした。
     帰りにもう一度、ミケちゃんのベンチに寄ってみたら、午後の陽の中で読書をするおじさんの膝の上に上半身を乗せて、喉を撫でてもらっていた。
     これから寒い季節だから、楽観は出来ないかもしれないけれど、処世術を身につけたミケちゃんは、器量もいいから、植物園の人気者になれるかもしれない。そうすると、今日姿を見なかったサビちゃんは、人懐っこいけれど見た目はあまりよくないから、サビちゃんの方をより心配すべきかもしれない。

    Comment (2)

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    • 岡田千夏

      2007/12/04 01:54

      これからの季節は、膝に猫で、猫も人も幸せですね。

    • 海浜鉱石

      2007/12/03 15:13

      どうもこんにちは。海浜鉱石です。

      うちの大学にも猫がけっこういます。
      かなり人馴れしていて、お昼にパンを食べているとよってきます。寒い日は猫に乗ってもらうとあったかくて気持ちいいです。

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