岡田千夏

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京都府京都市

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  • 植物園の三毛

     何年か前には、京都府立植物園のバラ園に結構多くの猫がいたのだけれど、痩せて毛のつやがなくなって、よだれをたらしている猫が何匹かいたから、病気が広がってみんな死んでしまったのかもしれない。しばらく、植物園で猫は見なかった。
     それが先週の火曜日、天気もいいのでお弁当を持って植物園に行ったら、滑り台やジャングルジムなど子供の遊具がある広場の隅っこに、小さな三毛猫がいた。
     あまり人には馴れていないのだけれど、ずっとにゃあにゃあ、にゃあにゃあと鳴き通しで、鼻先に手を持っていくと、伸ばした人差し指をぱくっと噛んだ。痩せていて、背中をなでると背骨がこつこつと手のひらに当たる。食べ物が欲しくて鳴いているようだった。
     お弁当を食べてしまったあとだったので、食べ物は何も持っていない。なにか食べるものを買ってあげようと思って、たいしたものは置いていないと知りつつ、園内の売店に行ってみた。案の定、タンパク源となるようなものはなくて、スナックの類しかなかったから、パンと牛乳を買って広場に戻った。
     ベンチの下で待っていた子猫にパンをあげたら、やはりよほどお腹がすいていたのだろう、パンをがつがつと食べた。牛乳も飲んで、少しお腹が落ち着いたようだった。
     だいぶ日も傾いて風も冷たくなってきたからその日はそれで帰ったけれど、子猫のことが気になった。6ヶ月くらいだろうか。きれいな緑色の目をしていた。夜の寒さが、空腹に堪えるにちがいない。連れて帰ろうかと迷った。まだ子猫なら、みゆちゃんともうまくやっていけるかもしれない。
     その次の日曜日に、とりあえずキャットフードを持って植物園に行ってみたら、三毛猫の姿は見えなかった。休みの日で人が多いから、どこかに隠れているのかもしれなかった。あるいは、器量のいい子猫だから、誰かがもらってくれたのだろうか。
     また近いうちに、見に行ってみるつもりでいる。

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